Androidスマートフォンというと、全面タッチパネルになった板状のものがほとんどです。しかし、Androidのメリットの1つは、多くのメーカーが参入し、さまざまなハードウェアが作られることです。テンキーのあるものやスライドでフルキー(QWERTYキー)が出てくるものなどさまざまです。
そんな中で筆者の好みは、縦型でキーボード一体型になったタイプです。BlackBerryなどがこのタイプですが、メリットは、いつでもキーボードが使えることで、これにより、メールやSNSが簡単になります。極論すると歩きながらメールを打つこともできます。
国内には、液晶部をスライドさせるフルキーを装備した機種があります。しかし、構造上、キーボードを出すと、画面が回転して横向きになります。この切り替えは、最近の機種ではわりと早くなったのですが、時間がゼロになるわけでもなく、どうしても煩わしさを感じます。また、Androidでは、一部の画面は回転しないため、最初から横向きだけで使うわけにもいきません。
また、縦型で、スライドさせるとテンキーの出る機種もあるのですが、筆者は、携帯電話のテンキー入力ができる世代ではないので、これもあまり「そそられ」ません。
「キーボード一体縦型」で、最近入手したのは、台湾で買ったMotorola XT316(以下XT316)という機種とSamsung Galaxy Y Pro DUOS(以下Y Proと略す)というもの。価格のレンジとしてはXT316が日本円換算で1万円弱、Galaxy Y Pro DUOSが2万円弱といったところです。Y Proのほうが少し高いのですが、この機種は、SIMカードを二枚装着でき、片方は2G(GSM)のみになるものの、両方で待ち受けが可能なタイプです。両者のスペックを表01に挙げておきます。
表01 | ||
XT316 | Galaxy Y Pro Duos | |
---|---|---|
CPU | Qualcomm MSM7227-1 (ARM11コア) | Broadcom BCM21553 (ARM11コア) |
クロック周波数 | 600MHz | 832MHz |
解像度 | 240×320 | 320×240 |
液晶サイズ | 2.8インチ | 2.6インチ |
RAM | 256MB | 384MB |
ストレージ | 512MB | 512MB |
ユーザー領域 | 140MB | 161MB |
カメラ解像度 | 3MP | 3MP |
フロントカメラ | × | VGA(640×480) |
シャッターボタン | ○ | × |
Androidバージョン | 2.2.2 | 2.3.6 |
高さ | 116.5mm | 110.8mm |
幅 | 58mm | 63.5mm |
厚み | 13.45mm | 11.9mm |
重量 | 110g | 112.3g |
Samsungは、製品としては、SIMが1枚のみでもう少し安価なGalaxy Y Proという機種も出荷しています。
MotorolaのXT316。液晶を縦に使ったキーボード一体縦型の筐体を持つ。側面にはボリュームキーに加え、カメラボタンがある。電源、ヘッドホン端子は本体上部にある |
SamsungのGalaxy Y Pro Duos。二枚のSIMが使えるキーボード一体縦型スマートフォン。液晶を横向きで使うため、上下方向に余裕があり、液晶下には、物理ボタンやオプティカルポインタが装備されている |
同じQVGA液晶だが……
XT316、Y Proどちらも、QVGA液晶とフルキーを装備していますが、構成が違っています。XT316は、QVGA液晶を縦向きに使い、横240ドット、縦320ドットにしています。このため、標準の状態で画面は縦位置となり、ホーム画面のアイコンバーは下に来ます。
これに対して、Y Proは、QVGA液晶を横向きとして、横320ドット、縦240ドットとして使い、通常の状態で、横位置としてあります。こまため、ホーム画面のアイコンバーは、右側に縦に並びます。
通常の使い方では、どちちでも大きな問題はないのですが、Y Proの場合、縦向きにしか表示しないアプリを起動すると、横向きに表示されてしまいます。もっとも、タッチ操作できるので、それほど問題になりません。
液晶の向きは、本体、正面のレイアウトに大きく影響しています。XT316は縦長であり、横幅が短くなっています。また、キーボードの左右の下側がゆるくカーブしており、少し窮屈な感じがあります。
また、液晶とキーボードの間には、タッチ式のキー(メニュー、ホーム、バック、サーチ)が配置されているのですが、物理キーボードの最上段を打つときに、少し注意しないと間違って触ってしまうことがあります。
これに対して、Y Proのほうは、縦長ではありますが、少し横幅がある印象を受けます。実際には、XT316よりもわずかに小さい液晶(2.8と2.6インチ)なのですが、見た目は、こちらのほうが大きいような感じがします。また、キーボード部分などにも余裕があり、いわゆるキーが独立したセパレートタイプのキートップであり、右下には、ユーザーが自由に割り当てることができるキーが1つあります。
また、メニューキーやホームキーも物理キーになっていて、オプティカル方式のポインタも装備しています。アプリケーションにも依存しますが、画面にタッチせずに、片手で画面をスクロールさせることができるので、結構便利です。
キーボードは、どちらも数字キーの列がない四段で、数字や記号はALTキーを併用して入力します。しかし、XT316は、数字は最上段に横一列に並ぶのに対して、Y Proは、携帯電話のテンキー並びを採用しています。
XT316のキーボード。デザイン上下の部分が少し窮屈。キートップが密接に並ぶ従来タイプのキーボード。なお、キートップは、斜め方向に面が付けられており、打ちわけることは可能 |
Y Proのキーボード。セパレートタイプで配置にはあまり無理がない。キートップは緩やかなカーブを描いている |
どちらも電話をかける場合には、ALTキーなしで直接番号を入力できますが、少し挙動が違います。Y Proの電話アプリは、Keypadを選んだときだけ、キーボードから数字の入力が可能で、コンタクトを選択した場合には、アルファベット入力と解釈されます。これに対して、XT316は、数字キーとして解釈しつつも、テンキーに割り当てられたアルファベットで、コンタクトのインクリメンタル検索を行います。たとえば、2のキーは「a」、「b」、「c」のどれかに相当し、2が入力されるとともに2を含む電話番号やa~cのどれかをタイトルに含む連絡先が候補として表示されます。
Y Proは電話をかけるときに通常の携帯電話と同じテンキーの並びが利用できる反面、連絡先に登録した項目を使うには、コンタクトに切り替える必要があります。これに対して、登録した連絡先を使って素早く電話をかけるという点では、XT316のほうが便利そうです。
アプリケーションの起動では、どちらもサーチキーとアルファベットキーの組み合わせが使えます。これを「Quick Launch」といいます。A~Zまでの26個の指定ができ、標準では、「Search」+「B」にブラウザ(Browser)が指定してあるなど、英語のアプリケーション名の頭文字を使う設定がされていますが、すべて置き換えることも可能です。ただ、特に何か表示がされるわけでもないので、ユーザー自身が組み合わせを覚えるしかなく、その点で、アプリケーションの頭文字の組み合わせがベストでしょう。なお、Y Proには、1つだけ、最初から自由に設定できるボタンが1つあり、利用頻度の高いアプリを1つだけ登録することも可能です。こちらはサーチキーを押すことなく1アクションでアプリを起動することができます。
simejiがベストマッチか
日本語の入力ですが、いろいろ試した感じでは、Simejiとの組み合わせがベストなようです。XT316の場合、ときどき、入力対象となるテキスト欄をタップしないと、IMEが有効にならないことがありますが、Y Proでは、設定しておけば、かなり確実にテキスト入力時にSimejiが起動し、入力状態になります。
日本語と英語(アルファベット)の入力モードの切り替えには、「Shift」+「Space」を使います。なお、Simejiには、起動時に入力モードを英語にするか、日本語にするかを選択する設定項目があるので、これを設定しておくと、入力がラクになります。スマートフォンを使い始めた当初は設定などで、アルファベット入力の頻度が高いのですが、しばらく使い込むと、今度はメールやSNSの利用頻度が上がり、日本語での利用が増えていきます。こうした状況を勘案して、最初は起動直後は英語モードとしておくと、わりと便利に使えます。また、最初が英語モードというのは、PCなどでは標準的な状態(通常はIMEがオフ、ユーザーがキー操作でオンにする)でもあり、シフトキー+スペースの操作にもあまり違和感がありません。
Galaxy Y Pro DUOSの画面
Glaxy Y Pro Duosのホームスクリーン。このように横長の表示になり、アイコンバーは画面右側に縦に並ぶ |
Simejiを使った日本語入力。横長なので、入力候補に余裕があり、一行表示としても十分利用できる |
標準のブラウザでGoogleのトップページを見たところ。入力欄は見えるものの、検索語の候補が表示されると少し苦しい |
同検索結果の表示。横長であるため、Webページのような縦に長い表示では表示される情報量が少なくなってしまう |
XT316の画面
キーボード一体縦型のマシンは、現時点で国内で発売されている機種としては、BlackBerryぐらいしかなく、Androidスマートフォンではいまのところ皆無です。かつては、Windows Mobileなどでみかけたのですが、最近はほとんど見かけなくなってしまいました。ですが、多くの操作が片手でできること、また、構造上、液晶が小さく、比較的安価な構成が可能です。全面液晶でタッチパネルという多くのAndroidスマートフォンのデザインでは、色や性能でしか差別化できません。一機種ぐらいは、こういうデザインを導入してもいいんじゃないかと思うのですが、冒険を恐れて、横並びになりがちな国内では、無理な希望なのでしょうか。