運用管理の分野で、ここ数年、特に注目を集めているテーマのひとつに「サーバの仮想化」がある。この仮想化の技術を利用することで、ひとつの物理サーバの中に複数の「仮想サーバ」を構築し、それぞれに違ったワークロードを割り当てることなどが可能になる。
近年、価格性能比の向上が著しいCPUやメモリ、ハードディスクといった物理サーバ上の余剰リソースを有効に活用できたり、機能や役割ごとに別々の物理サーバを導入したりする必然性が少なくなるといった点で、「サーバ仮想化」は主にシステムコスト削減のための技術として関心を集めた感もある。例えば、ある程度の規模の企業であれば、従来個別の物理サーバとして構築していた、社内のファイルサーバ、メールサーバ、開発環境用のテストサーバなどを、潤沢なリソースを持つ1台のサーバに、仮想環境を使って統合しているといったケースもあるだろう。
シマンテック プロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャの浅野百絵果氏 |
今回は、この仮想環境におけるバックアップについて考えてみたい。
サーバ仮想化においては、基本的に「仮想サーバ1台」に含まれるデータとシステムが、単一のイメージファイルとしてパッケージ化される。そのため、バックアップ作業としては、その仮想サーバのイメージを丸ごと保存しておき、万が一の場合には、そのイメージをそのまま書き戻してやればよい…ということになりそうだ。これであれば、従来の物理環境とまったく同じバックアップのシステムを使って、対応することができる。
しかし、ここで考えてみてほしい。例えば、ある仮想サーバの中にある特定のファイルだけを復旧させたい場合はどうだろう。こうした復旧は、物理サーバのバックアップであれば、ツールを使って比較的簡単にできる作業だった。だが仮想サーバの場合は、そうはいかない。物理環境のみを想定したバックアップでは、いったん仮想サーバのバックアップイメージ全体を復旧し、その中から必要なファイルを取り出し、現在動いている仮想サーバ上に戻すという作業が必要になる。これは、かなりの手間だ。システム管理者の立場としては、こうした作業をできる限り省力化したいと考えることだろう。
「仮想化されたサーバに対しては、従来の物理サーバに対するものとは違った、より効率的なバックアップのやり方があります。案外知られていないのですが、仮想環境を導入したのであれば、ぜひ検討してほしいですね」と語るのは、シマンテックのプロダクトマーケティング部でプロダクトマーケティングマネージャを務める浅野百絵果氏だ。
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仮想環境の導入で生まれるバックアップの新たな課題
浅野氏によれば、サーバ仮想化を導入した場合に、物理サーバのみのバックアップとは事情が異なるいくつかの課題が出てくるという。
1つ目は「サーバ負荷の問題」だ。多くの場合、サーバ仮想化の環境では、1台の物理サーバが持つリソースを、複数の仮想サーバでシェアする形になる。そのため、できることなら物理サーバのリソースは、仮想サーバを稼働させる以外の目的に割きたくないという状況が起こりやすい。つまり、バックアップという作業であっても、できる限り物理サーバへの負荷を与えない形で行いたいというニーズが出てくる。
続いては「管理の煩雑さ」。仮想サーバの数が少ないうちは問題ないかもしれないが、利用が進み、複数の仮想マシンを複数の物理サーバ上で動かすといった状況になった場合には、「どの仮想サーバが、どの物理サーバ上で動いているのか」を把握し、適切に管理をすることが難しくなってくる。こうした規模の拡大による運用管理の煩雑さをいかに吸収するかといった課題だ。
そして、最後は、先ほど例に挙げた「リカバリ(復旧)の細かさ」だ。仮想サーバ全体のリカバリに加えて、仮想サーバ内のファイル単位やフォルダ単位といった粒度でのリカバリを効率的に行いたいというニーズは、どうしても出てくるだろう。
シマンテックが提供する、中堅中小規模企業向けバックアップソリューション「Symantec Backup Exec 2012」(以下、Backup Exec)では、仮想環境(VMwareもしくはHyper-V)向けのエージェントを導入することで、こうした仮想環境特有のバックアップニーズに対応した機能を実現できるという。