日本でも近年、普及が急速に進む空気清浄機。加湿機能やイオン放出機能付きなど、各社が工夫を凝らした製品を次々と投入する中、空気清浄機能に特化した独自路線で日本市場に挑む、スウェーデンの空気清浄機メーカー・ブルーエア。同社でアジア地区のキーアカウントマネージャーを務めるJonas Holst(ヨーナス・ホルスト)氏に、同社の空気清浄機に対する考え方や製品の特長、日本市場に対する印象や評価を訊ねた。
Jonas Holst(ヨーナス・ホルスト) |
――日本市場と北欧やヨーロッパで空気清浄機に対して求められるポイントに違いはありますか?
Jonas Holst(以下、Jonas)「欧米ではアレルギー対策やぜんそく対策に焦点を当てられていますが、アジア諸国ではそれほどでもありません。中でも日本はとりわけ特徴的で、消費者が製品情報に詳しい上に、ウイルス対策や悪臭対策用として高性能なものを好む傾向にあると感じています」
――部屋の広さや気密性など条件に大きく左右されるため、「性能を評価するのが難しい」という声が多い空気清浄機ですが、商品を選ぶ際の基準は?
Jonas「日本市場では実際の効果の分かりづらい機能訴求が目立つため、自分に合った製品を選ぶことがより難しいと思います。しかし、弊社が考える最良の比較方法は『クリーンエア供給率(CADR)』です。CADRは、独立機関である米国家電製品協会によって定められた、空気清浄機の実際の清浄能力を示す指標で、弊社の『ブルーエア 650E』は業界最高数値を取得しているのです。また、CADR値以外に、質感や省エネ性、静音性も重要な検討ポイントだと思います」
――日本メーカーの現在の空気清浄機をどのように評価されていますか?
Jonas「日本のメーカーの製品には、加湿機能を搭載したものが多いですね。でも、我々は空気清浄と加湿は相反するもので、空気清浄機に加湿機能を搭載することは矛盾していると考えます。なぜなら、加湿トレイで増殖したカビ菌を部屋中に放出することと同じだと思うのです。また、バクテリアは水分が好物なので、フィルターと一緒にすることは考えられません。それ以外にも、空気清浄機に加湿機能を加え、構造を複雑化させることで、耐久性に影響を与えるリスクもあります。例えば、空気清浄機としては壊れていなくても、加湿部分が壊れたいうことも起こり得るわけです。除菌や脱臭効果のあるイオンを放出する機能に関しては、ウイルスやバクテリアを無力化させることは大事だと思いますが、イオンだけでそれらの働きを止めることはできないと思っています」
――日本で主流の複合機的な空気清浄機とは反対に、空気清浄に特化した単体機ならではの強みはどういった点にあるのでしょうか?
Jonas「ブルーエアの空気清浄機は、とにかく速くゴミを除去することにフォーカスしています。いかに速く室内の汚れた空気を吸い込み、キレイな空気を放出するかです。単機能だからこそ、空気清浄機の構造もシンプルになり、高い性能を実現することができますし、耐久性も高くなります。機能が追加されればされるだけ、構造が複雑化され、空気清浄機本来の性能が低下し、耐久性も落ちてくると考えています」
――空気清浄の本質はスピードにあると謳う理由は?
Jonas「たとえ締め切った部屋であっても、自然流入などにより、外気と一緒に汚れた空気は絶えず室内に入り込んできます。そこで、汚い空気を人々が吸ってしまう前に、できる限り速く室内の汚れた空気を吸い込み、キレイな空気を放出する必要があるのです」
――スピード化を実現しているブルーエアの本体の機構、しくみ、技術について教えてください。
Jonas「ブルーエアでは、創業以来フィルターの研究を続け開発した独自の『3ステップHEPASilentフィルター』を採用しています。これは、ゴミを確実に取り除くために、目の粗さが異なる3種類のフィルターを使用するものです。フィルターに段階を設けることで、フィルター表面が目詰まりするのを防ぎ、1つ1つのフィルターを大量の空気が通過できるようにする効果があります。さらに、空気の清浄スピードをより速くするために、『ブルーエア 650E』では、本体の左右、背面に1つずつ、合計3つのフィルターを搭載しています。本体底部から吸い込んだ空気を3つのフィルターで3方向に供給するため、8畳を2.5分という速さで清浄できるのです」
――ブルーエア空気清浄機に搭載されている特許技術「ヘパサイレントテクノロジー」とはどのようなものでしょうか?
Jonas「静電気の作用とフィルター構造の最適化により、室内に浮遊する各種のアレル物質、微生物、粉じんなどの微粒子をより効率よく、素早く、静かに除去します。この技術で使われているフィルターは、最もスムーズに空気が流れるよう綿密に設計されています」
――メンテナンス性についてはいかがでしょうか?
Jonas「フィルター交換に関しては、数週間から数カ月に1回程度のメンテナンスを推奨しているメーカーが多いようですが、その通りに手入れをしていないユーザーのほうが多いのではないでしょうか。我々は、空気清浄機の性能はフィルターで決まると考えています。たとえユーザーが自宅でフィルターの手入れをするにしても、初期性能が戻るほど完璧に手入れするのは難しいと思いますし、それでは空気清浄機の基本性能は失われてしまいます。そこで、ブルーエア空気清浄機では、フィルターの清掃ではなく、交換をオススメしています」
――消費電力1日15円の省エネ性能を実現するために採用されている技術や工夫とは?
Jonas「ブルーエア空気清浄機の高い省エネ性は、特許技術であるヘパサイレントテクノロジーのなせる技と言えます。微生物や煙などの0.1ミクロン以下の微粒子を捉えても、目詰まりすることなく空気をスムーズに流すことができる結果です。また、設計上、ブルーエア空気清浄機のファンは力強く稼働させる必要がないため、消費電力がより少なくて済み、運転音も小さくなります」
――日本の空気清浄機市場では、各種機能が一体化した複合機的な商品が人気ですが、多機能な空気清浄機を今後投入されることは考えていますか?
Jonas「先にも述べたとおり、空気清浄機に加湿機能が加わることを、私達はむしろ憂慮しています。それゆえ、私達は今後もあえて空気清浄機能のみに絞り、その機能をパーフェクトにこなす製品づくりに特化していきたいと考えています。実際、日本でブルーエアをお選びいただいたユーザーの方からは、空気清浄性能に対する私たちの妥協を許さない姿勢を高く評価していただいた声が多いと感じています」