WWDC 2012の基調講演で「MacBook Pro Retinaディスプレイ搭載モデル」と、MacBookファミリーの刷新が発表された。また密かにMac Proのアップグレードも行われており、7月のOS X Mountain Lionの登場に合わせて、新しいMacの購入を考えている方も多いと思う。そこで、みなさんが自分に合った1台を選ぶ一助になるように、Macのラインナップの変更点を整理してみた。
ポストPC時代を見据えたMacBookファミリーの進化
まず以下は、新しいMacBookファミリーの標準モデルの一覧だ。
CPU | メモリ | Retina ディスプレイ |
GeForce GT 650M |
SSD | HDD | Super Drive |
価格 | |
MacBook Air 11インチ |
2コアi5 | 4GB | × | × | ○ | × | × | 84,800円~ |
MacBook Air 13インチ |
2コアi5 | 4GB | × | × | ○ | × | × | 102,800円~ |
MacBook Pro 13インチ |
2コアi5/i7 | 4GB/8GB | × | × | × | ○ | ○ | 102,800円~ |
MacBook Pro 15インチ |
4コアi7 | 4GB/8GB | × | ○ | × | ○ | ○ | 154,800円~ |
MacBook Pro Retina |
4コアi7 | 8GB | ○ | ○ | ○ | × | × | 184,800円~ |
MacBook Proの17インチモデル(208,800円)がラインナップから消え、15.4インチがMacBookの最大のディスプレイになった。ただし17インチモデルのディスプレイ解像度は1,920×1,200ドットであり、新しいRetinaモデルは15.4インチでも2,880×1,800ドットと、17インチモデルを大きく上回る。
MacBookファミリー刷新の目玉は、Ivy Bridgeプラットフォームの採用だ。USB 3.0に対応し、CPU内蔵のグラフィックスがIntel HD Graphics 4000になった。また15インチMacBook Proが備える独立したグラフィックスチップがNVIDIA GeForce GT 650M (512MB/1GB GDDR5)になるなど、グラフィックスの向上が目覚ましい。
MacBook Airは、引き続きエントリー層をカバーする製品でありながら、従来のMacBook Proユーザーにアピールするような強化が加えられた。標準搭載メモリ2GBのモデルがなくなり、全てのモデルが4GBになった。アップルストアでカスタマイズすると全モデルで8GBメモリを選択でき、上位モデルではSSDを512GBまで拡張できる。
MacBookファミリーは良くも悪くもiPadの影響を受けている。悪い影響はiPadにPCの売上げが侵される、いわゆる"カニバリズム"だ。ただApple CEOのTim Cook氏はカニバリズムの存在を認めながらも、Windows PCに比べるとMacの被害は軽微であるとしている。それはMacが良い影響、いわゆる"ハロー効果"も受けているからだ。iPhoneやiPadで初めてApple製品に触れて気に入ったユーザーがMacにも興味を持つ。そうした人たちはiOSデバイスのテイストを持ったパソコンを受け入れやすい。そこで初めてMacを購入する人が多いエントリー向けから普及帯をターゲットに、iOSデバイスに近いMacBook Air(内蔵ストレージがSSDで、光学ドライブ非搭載)の新モデルを2010年末に投入し、Appleは新しいタイプのノートPCの開拓に成功した。
ポストPC時代のパソコンに関してAppleは強気一辺倒ではなく、慎重かつ戦略的に進めている。全ての製品を一気に変えたりはせず、1つずつ着実に、そして徹底的に浸透させる。今回MacBook Pro Retinaディスプレイ搭載モデルで新たに、こだわりを持つプロやハイエンドユーザーの攻略に乗り出したが、ターゲットによそ見をさせないためにMacBook Proの17インチモデルを無くしたのだろう。
従来のパソコンの利用スタイルを重んじるユーザーのために、MacBook Pro 13インチ/15インチモデルは、今もHDDが標準ストレージであり、SuperDriveも備える。だが、ハイエンド層も首尾よく攻略できれば、Appleは最後のユーザー層にも新しいパソコンを広げるはずである。
小さなアップデートにとどまったMac Proの今後は
デスクトップ製品で唯一アップグレードされたMac Proだが、その内容はプロセッサとメモリの強化にとどまり、噂された刷新は行われなかった。Mac Proは性能、そして拡張性に優れている。しかし、218,800円(クアッドコアモデル)からと価格は高い。手頃なワークステーション、拡張性の高い手頃なMacを求める声は根強いものの、残念ながら今回のWWDCでそのニーズは満たされなかった。
近年Appleはニッチ市場を避ける傾向を強めており、Mac Proの消滅すら噂されている。一方でAppe CEOのTim Cook氏が新デザインのMac Proの来年投入に言及したという噂が飛び交い始めている。iMacでハイエンドユーザーもカバーするのか、それともデスクトップでもMacBook Pro Retinaモデルのようなサプライズがあるのか、今後の注目点である。
2007年の初代iPhone登場以来、iOSは毎年メジャーリリースが行われてきた。Mac OS Xのメジャーリリースは、10.4 "Tiger"が2005年4月、10.5 "Leopard"が2007年10月、10.6 "Snow Leopard"が2009年8月と、iOSよりも間隔が長く不定期だった。しかし、Appleは昨年・今年と2年続けて、WWDCにおいてOS XとiOSの新メジャーリリースを同時に披露している。このサイクルが今後も継続するのであれば、iPhoneがハードウエアの刷新とアップグレードを1年ごとに繰り返すように、Macも主力製品の定期的なリフレッシュが行われる可能性が高まる。ユーザーは買い替えのタイミングを判断しやすくなりそうだ。