マカフィーは、2012年5月のサイバー脅威の状況を発表した。これは、マカフィーのデータセンターが捕捉したウイルスなどの集計をもとに、各項目ごとのトップ10を算出したものだ。今回のレポートの直前に発表された、第1四半期の総括も簡単ではあるが紹介する。

ウイルス

今月のランキングにも、先月同様、Blackhole関連のウイルスが入っている。Blackholeは、ツールキットを使った一連のドライブバイダウンロード攻撃であり、日本でもその脅威が現実のものになりつつあることがうかがえる。これについて、McAfee Labs東京 主任研究員の本城信輔氏は、「Blackholeにおいては、ユーザーが、アプリケーションの脆弱性を修正しないまま、不正に改ざんされたWebページにアクセスすると感染が始まります。不正に改ざんされたWebページには、難読化されたJavaScriptなどによって不正なサイトに誘導するような仕掛けが施されています。こういった不正なJavaScriptは、JS/Exploit-BlacoleやJS/Blacole-Redirectなどとして検知されており、それぞれの亜種もランクインしています」としている。

Blackholeは、最終的に偽セキュリティ対策ソフト、オンライン金融サイトのアカウント情報を盗むZbot(PWS-Zbot.gen.yl)、複雑なルートキット機能を持つZeroAccessなどに感染してしまう。防御対策について、本城氏は「一番効果のある対策は、脆弱性の修正です。Acrobat Reader、Adobe Flash、JRE、Internet ExplorerやWindowsなどのOSを確認し、セキュリティパッチを早急に適用してください」と注意喚起している。

表1 2012年5月のウイルストップ10(検知会社数)

順位 ウイルス 件数
1位 Generic!atr 998
2位 W32/Conficker.worm!inf 590
3位 JS/Exploit-Blacole.x 230
4位 Generic PWS.ak 197
5位 Generic Autorun!inf.g 187
6位 W32/Mariofev!mem 152
7位 PWS-Zbot.gen.yl 148
8位 JS/Blacole-Redirect.i 132
9位 JS/Exploit-Blacole.y 128
10位 Generic.dx 123

表2 2012年5月のウイルストップ10(検知データ数)

順位 ウイルス 件数
1位 W32/Conficker.worm!job 19,336
2位 W32/Conficker.worm.gen.a 15,023
3位 Generic.dx!xfu 13,969
4位 ZeroAccess 8,680
5位 X97M/Laroux.a.gen 6,365
6位 Generic!atr 6,269
7位 X97M/Laroux.go 4,513
8位 W32/Conficker.worm!in 3,626
9位 W32/Fujacks.remnants 2,619
10位 W32/Pate.b 2,404

表3 2012年5月のウイルストップ10(検知マシン数)

順位 ウイルス 件数
1位 W32/Conficker.worm.gen.a 2,604
2位 W32/Conficker.worm!job 2,386
3位 Generic!atr 2,041
4位 W32/Conficker.worm!inf 1,275
5位 Generic Autorun!inf.g 435
6位 Generic PWS.ak 306
7位 JS/Exploit-Blacole.x 274
8位 PWS-Zbot.gen.yl 250
9位 New Autorun!inf.b 241
10位 W32/Conficker!mem 208

PUP

PUP(不審なプログラム)は、ランキング下位で多少の変動が見られるが、それ以外では検知数も大きな変動は少ない。フリーソフトの利用などに十分注意をしてほしい。

表4 2012年5月の不審なプログラムトップ10(検知会社数)

順位 PUP 件数
1位 Generic PUP.x 406
2位 Adware-OptServe 242
3位 Adware-UCMore 177
4位 Generic PUP.d 170
5位 Tool-PassView 151
6位 Generic PUP.z 144
7位 Exploit-MIME.gen.c 111
8位 Adware-OpenCandy.dll 111
9位 Adware-Adon!lnk 101
10位 Adware-Softomate.dll 75

表5 2012年5月の不審なプログラムトップ10(検知データ数)

順位 PUP 件数
1位 Exploit-MIME.gen.c 11,908
2位 Adware-OptServe 10,174
3位 Generic PUP.x 9,852
4位 Generic PUP.d 7,175
5位 RemAdm-VNC 6,094
6位 Generic PUP.z 3,786
7位 MWS 2,668
8位 Cookie-2O7 2,667
9位 RemAdm-VNCView 2,605
10位 Adware-Softomate.dll 2,224

表6 2012年5月の不審なプログラムトップ10(検知マシン数)

順位 PUP 件数
1位 Generic PUP.x 633
2位 RemAdm-VNCView 420
3位 Adware-OptServe 337
4位 Adware-UCMore 306
5位 Generic PUP.d 238
6位 Tool-PassView 230
7位 Generic PUP.z 182
8位 Adware-OpenCandy.dll 156
9位 Tool-ProduKey 156
10位 Exploit-MIME.gen.c 153

2012年第1四半期の脅威レポート

マカフィーでは、2012年第1四半期の脅威レポートを発表している。詳細は、こちらを参照してほしい。

図1 2012年第1四半期の脅威レポート

脅威レポートでは、以下のトピックなどを取り上げている。

  1. モバイルマルウェアの急増
  2. PCおよびMacのマルウェアの増加
  3. スパム減少、ボットネット増加
  4. サイバー攻撃の主な発信源は米国

このうち、2番目のPCおよびMacのマルウェアの増加について簡単にその内容を紹介しよう。図2は、マカフィーのデータベースに追加されたマルウェアと四半期ごとに検出されたマルウェアの推移である。

図2 データベースに追加されたマルウェアと四半期ごとに検出されたマルウェアの推移(レポートより)

2011年末までに、7,500万を超えるマルウェアのサンプルを収集したが、年内に総数が1億を超える可能性があるとのことだ。2012年第1四半期は、過去4年間で最大数のPCに感染するマルウェアが検出された。主な要因は、ルートキットの大幅な増加である。パスワードスティーラーと同様、ステルス化されたマルウェアであるルートキットの新しいサンプルは、第1四半期に約100万に達している。Macを対象としたマルウェアも着実に増加しており、スマートフォンなどを含めれば、すべてのデバイスに対して、脅威が増大している。