初めての地上波放送から昨年で40周年を迎え、声優の変更や、ヒロイン・峰不二子を物語の中心に据えたスピンオフ的作品『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(毎週水曜日深夜1時29分より日本テレビほかで放送中 ※一部地域のぞき)が放送されるなど、今も幅広い層から人気の『ルパン三世』シリーズ。世界各国でも放送されている同シリーズだが、ルパンや次元、五ェ門が、海外ではいったいどんな名前で呼ばれているのか調べてみた!

クラリスの心を盗んだのは「ウルフ」!?

 まずは宮崎駿監督が手がけた劇場版アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』から。海外での公開はざっと30年前で、評判もなかなか良かったという『ルパン三世』。だが、残念なことに肝心の名前が「ルパン」ではなかった。ご存知のとおり、『ルパン三世』はフランスの小説家、モーリス・ルブランが生んだ怪盗紳士「アルセーヌ・ルパン」の孫という設定。名前をそのまま使用してしまうと著作権に引っかかるため、「ルパン」の呼び名をどうするか、と海外の翻訳者が頭を悩ませたのは想像に難くない。

 この時代はキャラ名を自国風にアレンジするのが珍しくなかったこともあり、北米版の『カリオストロの城』でルパンは「Wolf(ウルフ)」と呼ばれていた。ちなみに相棒の次元は"ルパンの弟子"という設定になったようで、ルパンを「ボス」と呼んでいる。ファンにはむしろこちらのほうがショックかもしれない。現在はアルセーヌ・ルパンの名前の著作権が切れたこともあって、オリジナルに忠実なバージョンの『カリオストロの城』も発売されている。

イタリアで大人気のキャラ「マルゴー」とは?

 最近放送されている北米版では、どのキャラクターも日本版と同じ名前。ただ、銭形警部の愛称「とっつぁん」は、おじさんという意味の「Pops(ポップス)」で、彼が登場するとルパンたちが「ポーップス!」と叫んで逃げ始めるのがちょっと面白い。

 一方、TV版の『ルパン三世』が大人気を博していたのがイタリア。幼い頃「Margot(またはMargo、読みはマルゴー)」に憧れたというアニメファンも少なくない。では「マルゴー」とは誰なのか? これは言うまでもなく「峰不二子」のことである。なぜマルゴーという名前になったのかはまったくの謎だが、イタリア人にセクシーな小悪魔・マルゴーは大人気。なんとなく納得である。

 ルパンや次元、銭形警部はというと、そのままの日本語呼び。なお銭形警部には愛称があり、その名も「Zazà(ザザ)」。これは特に意味のある単語ではなく、どうもゼニガタという発音を短縮したニックネームのようだ。五ェ門も日本語読みで呼ばれているが、どうにも「ゴエモン」ではなく「ゲーモン」と聞こえてしまうのが残念なところだ。ちなみにTV版より先に公開されていた劇場版アニメ『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』のトレーラーで五ェ門は、「SAMURAI(サムライ)」と紹介されていた。

キャラ名の変更が激しいフランス

 さて、アルセーヌ・ルパンの故郷であるフランスではどうだったのか? 日本のアニメが多数紹介されていることで有名なフランス。むろん『ルパン三世』シリーズも放送されていた。とはいえ、さすがにそのままの名前ではやっぱりNGで、タイトルは『Edgar detective cambrioleur(エドガー・ディテクティブ・カンブリオロー)』と変更されていた。直訳すると『探偵泥棒エドガー』。言うまでもなく「ルパン」=「エドガー」である"探偵泥棒"という部分についてはあえて問うまい。ここまで原型をとどめていないと、いっそ清々しい。

 そしてルパンとともに豪快に変更されたのが銭形のとっつぁん。その名も「Inspecteur Gaston Lacogne(インスペクタール・ガストン・ラコーニャ)」。ガストンっていったい……。銭形警部の身に何があったのだろうか。「だって"ガストン"って感じの顔をしてるから」と言われれば、そう見えないこともないが。

 なお、フランス版の不二子はというと「Magali(マガリー)」。変更はあっても派手な雰囲気の名前になることが多いあたり、さすがは不二子! でも名字は「ミネ」のままだったりする。実はフランス人という設定にしたいのか、オリエント風味のある日本人のままでいてほしいのか、真相は定かでない。

 ちなみに次元は「Isidor(イジドール)」、五ェ門は「Goemon Yokitori(ゴエモン・ヨキトリ)」。「ヨキトリ」が意味不明なので翻訳サイトで確認してみたら「もしかしてYakitori」と返答が。……まさか、日本をイメージする単語として「ヤキトリ」を名字にしようとして微妙になまったとか!?

 そんなフランスでも今年には"ルパン"の名前が著作権切れになったとのこと。エドガーたちも問題なくルパンと名乗れるはずではあるが、エドガーやマガリー、ガストンといった名前を捨てるのも惜しいような気もする。ヨキトリに限っては、イシカワにしてほしいけれど。

※「五ェ門」の表記は、劇場版、TVシリーズなどによって漢字表記が異なります。今回は統一をするために最新のシリーズにあわせて「五ェ門」と表記しています。