米Leap Wirelessは5月31日(現地時間)、同社が「Cricket Wireless」のブランドで展開するプリペイド携帯サービスにおいてAppleの「iPhone」の提供を開始すると発表した。提供される端末はiPhone 4SとiPhone 4の2種類で、月額55ドルの複数年契約なしのプリペイドプランでの利用が可能になっている。
Cricket Communications (Cricket Wireless)はLeap Wirelessの子会社にあたり、CDMAベースのネットワークでプリペイド携帯によるサービスを全米で提供している。主なターゲットは低価格を武器にした中流以下の層であり、その点はMetroPCSやU.S. Cellularといった中小規模キャリアの立ち位置に近い。そうしたプリペイド専門キャリアがiPhone販売に乗り出したというのが興味深い点だ。
最近ではプリペイドキャリアでもスマートフォンの取り扱いが増えているが、通常であればこうした製品も200ドル以下の価格レンジが一般的で、メーカーもHuaweiやZTEといった中国系メーカーの廉価製品が用いられることが多い。だが今回販売されるiPhoneは、iPhone 4S (16GB)が499.99ドル、iPhone 4 (8GB)が399.99ドルと、かなり高いレンジに属する。もっとも、Apple StoreでSIMアンロック版の製品を購入しようとすると、iPhone 4S (16GB)が649ドル、iPhone 4 (8GB)が549ドルという価格なので、それに比べれば安いといえるかもしれない(ただしSIMアンロック版はGSMキャリア向けのもので、Cricketの製品とは互換性がない)。前述のようにCricketのターゲットは低所得者が中心であり、こうした層にiPhoneのような購入端末がどこまで受け入れられるのかが注目ポイントだといえるだろう。
なおWall Street Journalの報道によれば、LeapはCricketでのiPhone取り扱い開始に際し、Appleと3年で9億ドルの販売契約を結んだとされている。販売台数で考えれば数百万台のコミッションに相当し、かなり本腰を入れてのビジネス展開が求められると予想される。Cricketのセールスポイントは年契約のないプリペイド形態でのサービスで、かつ料金が月額55ドルと大手競合に比べて3-4割ほど安い点にある。55ドルで通話、SMS、データ通信がすべて無制限であり(ただしデータは2.3GBが上限の目安)、その点であえてCricketのiPhoneを選択するユーザーもいるかもしれない。Appleとしては大手キャリアでiPhone需要が飽和する前に、広い層にビジネスを拡大したいという狙いも見え隠れする。
気になるのは、これが米国以外での通信キャリアのビジネスにどう影響するかだ。例えば国外でプリペイドサービスを専門に扱うキャリアが、今後本格的にiPhone事業に参入してくる可能性もある。もっとも、今回のCricketで購入したiPhoneはそのまま他のキャリアで利用できないため、ここで安価にiPhoneを購入して他キャリアへと持ち出すことがないという前提の料金プランという可能性も考えられる。