ヤマハの有志が開発している、開発歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」を、鍵盤楽器のように弾くことのできるデバイス「VOCALOIDキーボード」。前回までは歌声合成ソフト「VOCALOID」を“弾く”という発想が生まれた背景を追ってきた。最終回となる今回は、同デバイスの現状についてレポートする。

「VOCALOIDキーボード(仮)」の独自インターフェース

「VOCALOIDキーボード(仮)」は、日本語の歌詞とその音高を同時に入力し、リアルタイムに音声を合成、演奏することを可能とするデバイス。音の高低はピアノの鍵盤で、歌詞はローマ字入力方式とかな入力方式を組み合わせた独自開発のキーボードで操作できる。音声生成は内部で処理されるため、ユーザーがソフトを操作する必要はない。

ローマ字入力に濁音・鼻濁音を組み合わせた独自仕様キーボード

ピアノの経験があれば、約3時間の練習で童謡を弾くことができるとされている



「VOCALOIDキーボード(仮)」誕生のきっかけ

加々見さんは開発動機について「「VOCALOIDキーボード(仮)」を作ろうと最初から決めていたわけではなく、「VOCALOID-board(ボーカロイドボード)」という半導体が開発されたことが直接のきっかけ」と語る。

「VOCALOID-board」は同社が開発した、半導体単体でVOCALOIDのリアルタイム歌声生成が可能なチップ。その性能を生かした機器の開発が課題となっており、そこから生まれたのが「VOCALOIDキーボード(仮)」である。

VOCALOID-board概要図。この半導体を活用するアイデアを追求する中で「VOCALOIDキーボード」が生まれた

「VOCALOIDキーボード(仮)」はニコニコ超会議でも注目の的だった

VOCALOIDの話題に敏感な層からはかねてより注目を集めていた「VOCALOIDキーボード(仮)」だが、4月28日~29日に開催された大規模イベント「ニコニコ超会議」でブースを出展。

普段VOCALOIDを扱い作曲をする人以外の目にも触れることになり、ブースを通りかかった多くの人からはその機能に感嘆の声が上がっていた。

ニコニコ超会議で出展されたブース

開発に携わるヤマハ社員たちが、イベント参加者に弾き方をレクチャーする場面も

音声は同社のVOCALOID「VY1」のもの。ツマミを回すことで声色を変え、ベースの声だけでなく男性的な声を出すことも可能

「VOCALOIDキーボード(仮)」は発表以来大きな反響を得ていて、インターネット上では製品化を希望する声も多い。ただ残念なことに、あくまで「プロトタイプ」のため、今のところ製品化の予定は無いとのことだ。今後の展開に期待したい。