5月21日、早稲田大学 早稲田キャンパス大隈会館にて、「第12回 早稲田大学アカデミック・サロン」が開催された。「早稲田大学アカデミック・サロン」とは、同大学がもつ人的・知的資産を社会に還元することを目的として、2009年よりメディア向けに定期的に開催されている講演および懇談会。

同大学の学生服に身を包んだクマがお出迎え

第12回の今回は、自転車事故が頻繁に報道される昨今の世相を受け、「自転車増加の背景・問題点」を中心に講演が行われた。

講師を務めたのは、早稲田大学人間科学学術院助教授の島崎敢(しまざき かん)氏。静岡県立大学卒業後、3年間のトラックドライバー経験を経て、早稲田大学大学院人間科学科に入学したという異色の経歴の持ち主だ。ドライバー時代に、交通に興味を持ち、研究者の道に進んだという。

講演テーマに合わせて、ネクタイまで自動車柄の島崎氏

震災の影響で、通勤に自転車を利用する人が増加

講演では、島崎氏がプロジェクターやホワイトボードを駆使して、現在の交通事情、またその問題点を解説した。

それによると、ここ数年で自転車が増加した背景には、不景気、エコブーム、健康ブームなどの要素があるという。また、昨年の震災発生時に帰宅困難者が続出したということも、大きく影響していると考えられるのだとか。

さらに、「6,000円程度の安い自転車が増えていることも理由のひとつ」と説明した。「安いなら」と手を出す人も含め、生活に気軽に自転車を取り入れる人の多くは、「自転車は、自動車のように交通違反の罰則が厳しくないと思っている」と指摘。また、取り締まる側も、「撤去はできても、そもそも免許がないから駐禁をきることもできない」という問題を抱えているという。

自転車の問題点などをひとつずつ解説

カーブミラーが安全とは限らない?

交差点での交通事故多発に関しては、「日本では、車は左側通行なので、ドライバーは、右からくる自転車や車には気をつけているけれど、左側は見落としがち。自転車に乗る人は、そのことを意識して、交差点での運転には特に気を配るべき」と呼びかけた。

また、カーブミラーにうつったものは左右反転しているため、瞬間的に判断を間違える人も多いそうだ。それに惑わされないように、十分注意を払う必要があるとも力説した。

ドライバーの視点から、自転車運転の注意点が語られた

島崎氏は、カーブミラーと出合い頭の事故の関係に関しては、トラックドライバーとしての経験をもとに多くの研究発表も行っている。

それによると、カーブミラーの設置は見通しの悪い交差点での事故削減に有効であるとはいえ、ミラーそのものの存在が認知されていなかったり、ミラーにうつっている自動車の速度や距離感をつかめなかったりするということが、事故に発展するケースもあるとのこと。

ミラー上で衝突対象を認知できなかった要因としては、設置角度不良や結露などが挙げられる。そのため、ミラーを設置する側にも対策をとってほしいという。

さらに、凸面鏡は速度感や距離感をつかみにくい特性をもっているので、このことをドライバーに啓発していく必要もあるそうだ。

交通ルールを学ぶ機会を増やしていくことが大切

島崎氏の話をうけ、「道路交通法の改正で禁止されたことを、いまだにそれが交通違反だという認識さえない人も多いのでは?」という質問が挙げられた。

現在の道路交通法では、携帯電話で会話しながらの運転や、イヤホンで周囲の音が聞こえないような大音量の音を聞きながら運転すること、傘差し運転などが禁止されている。しかし、このルールを知らない人は、意外に多いという。

上記の質問について島崎氏は、「そうだと思う。だからこそ、メディア関係者には正しい交通ルールをひとりでも多くの人に伝えてほしい」と訴える。

さらに、「今後は、企業や学校内でも、交通ルールを学べる機会を作っていくべき。特に、配達など、社員が仕事で自転車に乗るという企業には、しっかりと勉強の機会を設けていただきたい」と話した。

自転車に乗って道路を横断する際のルート。正解を答えられる人は意外に少ないとか

島崎氏によると、こうした勉強会などの機会以外でも、個人や友人同士でも交通ルールについて気軽に学ぶことができるよう、現在、同大学の研究室でドライバー教育用ソフト「ハザード・タッチ」を開発中とのこと。

「特許申請中のソフトなので、いまはダウンロードできませんが、認可されたら世界中の人に使ってほしい。また、企業の勉強会用コンテンツなども導入予定です」

不幸な事故をなくすためには、自動車の免許の有無を問わず、それぞれが交通ルールを学ぶことが求められている。自分の身を守るためにも、正しい知識を身につけてほしい。

【関連リンク】

チャリ好きに衝撃のニュース 「自転車は体に悪い」!?

「むこじろう」と「むじこりん」が、イベントで交通安全をアピール!

【ランニングバイク】ペダルなし自転車「ストライダー」による事故が急増

ピーポくんに続き、クルマ型の新ゆるキャラが交通安全を呼び掛け

これだけは知っておいて! スポーツ自転車を始めるイロハ