「Mac App Store」で間もなく施行される「Sandboxing」のルールについて、あるBlogサイトの記事が注目を集めた。その内容はというと、Mac OS Xのアプリケーションでしばしば利用される「グローバルショートカット」と呼ばれるホットキー処理を搭載するアプリの登録が、新ルールの適用される6月1日以降は認められなくなるというもの。だが、すぐにそれを否定する報道も行われており、ルール適用を前にした混乱のひとつのようだ。
この件を4月17日(米国時間)に報じたのはTuawで、その記事では"Sandboxing"化を要求する6月1日以降、前述の「ホットキー」機能を用いたアプリケーションがMac App Storeへの登録を認められない可能性があるとの関係者の話を伝えている。ホットキーとは、OS Xが動作中のどの状態でも特定の機能を有効化するような複数キーの組み合わせによるショートカットで、OS X自身の実装でも「スクリーンショットの取得」(「Command」+「Shift」+「3」)といったもので知られている。OS Xではこうしたショートカットの登録が容易になっており、各アプリケーションは独自のショートカットを設定することで、例えば該当するアプリケーションそのものがバックグラウンドにまわっていても特定の機能を有効化できるなど、OS全般の動作で機能する。そのため「グローバルショートカット」などとも呼ばれる。Tuawの最初の報道では、このホットキーの独自実装が不可能になる可能性を指摘していた。
"Sandboxing"のルールとは、もともとAppleがセキュリティ強化のために導入を検討していたもので、サードパーティのアプリケーションがOS X内の特定の要素へのアクセスを禁止するなど、動作のアプリケーション内での完結、つまり「サンドボックス化」をサードパーティ開発者らに要求している。ただ、既存の流通やインターネット経由での通常のダウンロード配布ではこうした取り締まりは難しいため、「Mac App Store」への登録を希望するアプリケーションに対してのみ、審査の過程でこうしたルールの適用を行う方針を示している。この"Sandboxing"の施行は当初2011年11月とされていたものが、2012年3月へと延期され、さらに延期を繰り返して現在の6月1日開始となっている。
この"Sandoboxing"についてはもともと、従来まで認められていた機能がルール適用を機会に認められなくなる可能性が高いため、一部開発者らは「一部機能を削除しての再登録か、あるいはアプリケーションそのものの登録見合わせが必要になる」との懸念を表明していた。この弊害はユーザーが該当するアプリケーションをアップデートする際に発生し、例えば6月1日を境にアップデートを行うことで「機能が劣化した最新バージョンへと自動アップデートされてしまう」ということが起きてくる。また、このルール適用は「6月1日以降の登録アプリケーション」が対象となるため、これを機会に有用なアプリケーションのMac App Store上でのアップデートが止まってしまうという懸念もある。いずれにせよ、開発者・ユーザーともに悩ましい問題ではあるようだ。
Tuawの記事は、こうした新ルール適用直前で出てきたもので、開発者の間で混乱を呼び起こす原因になった。すでにリミットまで時間がない状態のため、この記事の内容が事実であれば機能削除やアプリケーション仕様の見直しなどを至急検討しなければいけない。もしホットキー機能を搭載したままMac App Storeに登録しても審査ではねられる可能性が出てくるからだ。だがMacworldが同日に行った追加報道では、グローバルショートカットのAPIは最新OSの中で"Sandboxing"のルール適用後も有効であり、引き続き問題なく利用できるとの関係者の話を伝えている。その後にTuawも問題となった記事の中で訂正を行っており、現時点では新ルール適用のタイミングでホットキーが利用できなくなるようなことはなさそうだ。