コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 7のメモ帳やMac OS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。今回の「世界のテキストエディターから」は、Linuxのデスクトップ環境として有名なKDEに含むアプリケーションの一つ「Kate」を紹介します。

KDEに含まれるテキストエディター「Kate」

テキストエディター「Kate」

Windows OSを使っているユーザーには縁遠い話ですが、Linuxではデスクトップ環境と呼ばれるGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を提供するソフトウェアが存在します。Windows OSの場合、ボタンの位置や形状などに代表されるウィンドウデザインをドラスティックに変更することはできません。これはユーザーが一環した操作性を得るために必要な設計ですが、この制限を不満に感じてカスタマイズツールを用いた独自のWindows OS環境を築いてきた方も少なくないでしょう。

一方でLinuxは、X Window Systemというシステムが実装されており、GUIの最下層部分を担っています。そのため、一般的なGUI環境でファイルやアプリケーションの操作を行うには、ウィンドウマネージャというソフトウェアを使用しなければなりません。そのためユーザーは好みのウィンドウマネージャを選択し、自身のセンスでカスタマイズを行うのが当たり前でした。この自由度がLinux系フリーOSの長所ですが、その一方で統一したGUIが求められるようになり、その結果誕生したのが、GUIツールを一つにまとめ上げたデスクトップ環境です。

デスクトップ環境としてはGNOME(グノーム)が有名ですが、そのGNOMEと双璧をなすのがKDE(ケーディーイー)。以前は「K Desktop Environment」の略称でしたが、2009年後半から現在のKDEが正式名称になりました。現在のKDEは複数のOS上で動作するクロスプラットフォーム化されており、Windows OS上でも動作させることが可能です。専用の公式サイトも用意されており、KDEアプリケーションとして提供されている多くのソフトウェアがWindows OS上で動作するようになりました(図01~02)。

図01 デスクトップ環境としてKDEを採用した「Kubuntu」。配色もKDEにあわせて青系が採用されています

図02 Windows OS向けKDEサイト「KDE Windows」。Windows OS向けとして「KDE Software Compilation for Windows」を配布しています

ここで取り上げるのが、KDEの標準テキストエディターに採用されている「Kate(ケイト)」。同環境ではシンプルなテキストエディターである「KEdit」や、簡易的な機能を備える「Kwrite(ケーライター)」も含まれていますが、今回はより高い機能を備えている前者を取り上げます。そもそもKateは「KDE advanced text editor」の頭文字を略したもので、初期の時代(KDEバージョン2.2)から基本コンポーネントに加わるようになりました。

ちなみにKateの作者であるChristoph Cullmann(クリストファー・コールマン)氏の名前や個人サイト、Kwriteの作者との電子メールによるやり取りを見ますと、Cullmann氏はドイツ出身とのこと。この点を踏まえますと、Kateはドイツ産のテキストエディターと言えるでしょう。なお、Kate開発チームはCullmann氏以外にも、スクリプトのサポートやコア機能の見直しを行うDominik Haumann氏や、Kateの基礎エンジンや各機能を開発しているJoseph Wenninger氏も参加しています。