富士通は9日、同社の個人向けPC夏モデルの発表会を開催した。プレゼンテーションでは同社が新コンセプトとして掲げた「マイクラウド」のビジョンが解説され、また同社が「日本発のUltrabook」と強調する「LIFEBOOK UH75/H」をはじめとする新製品が紹介された。会場には同社PCの新イメージキャラクターを務めることになったEXILEも登場し、新製品の魅力をアピールした。

2011年度のパソコン事業は「堅調」

執行役員副社長の佐相秀幸氏

最初に登壇した執行役員副社長の佐相秀幸氏は、まず全社の2011年度の営業状況について「震災やタイの洪水の影響の中ではまずまず」と振り返った。そしてパソコン事業については、年初の目標台数には届かなかったものの、「2年連続のプラスで、堅調」と表現した。そしてこの4月1日に行われた組織改革について、「組織を営業部門を中心とする"顧客軸"とSE部門を中心とする"事業軸"にわけ、それぞれの部門のシナジーにより事業を回す」と表現、そのあらわれとして全社に分散していたマーケティング部門を統合し、組織を最大限活用する形にしたと語った。

その中におけるパソコン事業について、富士通がヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティというビジョンを持ち、パソコンや携帯電話といったフロントエンドの部分とクラウドなどのバックエンドの部分を融合させて新たな価値サービスを提供しようとしていることを強調。その中でパソコン事業がコアの位置にあるとし、今後もパソコン事業が同社の中で重要なものであるとした。

富士通パソコンの新コンセプト「マイクラウド」とは何か

執行役員常務の大谷信雄氏

続いては執行役員常務の大谷信雄氏が登壇。富士通がこの夏モデルの発表にあたってコンセプトとして掲げた「マイクラウド」について解説した。

同氏はパソコンというものが登場してから現在にいたるまでの用途の変遷・進化の推移を振り返りながら、現在のパソコンが「性能が向上しているにもかかわらず、メーカーがその性能をいかせる活用法を提案できていない」と指摘。その一方で、家庭にさまざまなデータがあふれかえり、さまざまなWebサービスが提供される中、デジタルデータを管理し、サービスを利用するプラットフォームとなるパソコンの重要性は高まっているとした。

パソコンの用途の主流は現在もインターネット・電子メールであり、向上した性能を活用できる用途をメーカー側が提案できていないという

その一方で、家庭内にデータはあふれ、さまざまなサービスが提供されるようになっている

そんな状況に対して富士通が提案するのが、同社が持つサービス・ハードウェア・ソフトウェアの3つの技術からなる「マイクラウド」だ。。

サービス・ハードウェア・ソフトウェアの3つの軸からなる「マイクラウド」。3つの分野すべてでビジネスを展開する富士通の強みをいかしたコンセプトだ

マイクラウドは、家庭内に存在する「My Cloud-P」と、ネットワークごしにサーバー上へ展開される「My Cloud-S」という2つの要素から構成される。この2つを利用し、データがどこにあるのかに関わらず、利用者にとってベストのサービスを受けられるようにするのが主眼だという。そしてMy Cloud-Pは今回発表された2012年夏モデルのPCで提供され、MyCloud-Sは10月にもサービスを開始する予定であるという。

マイクラウドはMy Cloud-PとMy Cloud-Sの2つからなる

マイクラウドの特徴となるのは、My Cloud-PとMy Cloud Sの間に構築される、「マイクラウド・プラットフォーム」と呼ばれる認証・課金・顧客管理・広告配信などを提供する部分だ。この部分を富士通が提供することにより、事業者にとってのサービス提供のハードルが下がり、ユーザーは提供されるさまざまなサービスを利用することができるようになる。

My Cloud-PとMy Cloud-Sの間をつなぐプラットフォームを富士通が提供する。この点がこのコンセプトのポイントになる

マイクラウドの展開事例として、写真の管理・活用や家庭内のさまざまな機器の遠隔管理などを挙げた

今後同社は、このMy Cloud-P/My Cloud-Sという発想を持ち、ユーザーの生活をフォローするパソコンのありかたを実現したいという。

マイクラウドは今後、あらゆる場面に広がっていくという

マイクラウドの展開により、富士通のパソコン事業はサービスとの間をつなぐフロントエンドとしての役割を強めることになる