1980年代に大ブームを巻き起こした『聖闘士星矢』。ギリシャ神話をベースにした聖闘士(セイント)たちの設定や星座をモチーフにした聖衣(クロス)と呼ばれる鎧、ド派手な必殺技は少年たちの心をわしづかみにしたものである。最近では過去の戦いを描いたスピンオフ的な作品が発表されたり、完全新作のTVアニメ『聖闘士星矢Ω』の放送が開始されるなど、その人気はいまだ健在。海外でも人気の高いアニメのひとつでもある。では海外ではどのように親しまれているのか、名称などを探ってみた。
◆海外でのタイトルは“星座の騎士”
調べてみると『聖闘士星矢』は主に南米とヨーロッパでかなり有名らしい。その人気はハリウッドにも影響を与えているほど(2010年に公開された映画『タイタンの戦い』を撮ったフランス人のルイ・ルテリエ監督は、作中で神々が鎧をまとっているのは『聖闘士星矢』へのリスペクトからだと語っている)。
しかし海外で『聖闘士星矢』をそのまま“Saint Seiya”としても意味が通じない(これでは聖人セイヤだ)。なのでタイトルは英語版に翻訳され『KNIGHTS OF THE ZODIAC(ナイツ・オブ・ザ・ゾディアック)』という名前になっていた。日本語に直訳すと“星座の騎士”だ。だいたいどの国もこの名前の各国翻訳バージョンで呼ばれているようだが、ブラジルでは主題歌「ペガサス幻想(ファンタジー)」のポルトガル語バージョンで、出だしからいきなり「セイントセイヤー!」とぶちかましている。そこは「ナイツ・オブ・ザ・ゾディアックー!」にしていただきたいが、熱いものを感じるのでそのままでもいいのかも。
登場人物の名前は、先のブラジル版をはじめ、どの国でも基本的には原作の通り。ただ発音的に「一輝」が「イキー」にしか聞こえなかったり、Hを発音しない国だと「氷河」が「ヨガー」になったり、スペイン語版だと「星矢」が「セイジャ」と呼ばれてたりするのはご愛嬌(あいきょう)。
◆独自路線を突っ走るイタリア版
ただ、例外というのは常に存在するもの。豪快に名前が変化しているのがイタリア語版だ。主人公の「ペガサス星矢」は、「星矢」がなくなって「ペガサス」と呼ばれている(イタリアでは「セイヤ」だと音的に女性っぽく聞こえるらしい)。「アンドロメダ瞬」や「フェニックス一輝」も「アンドロメダ」、「フェニックス」呼び。ただ、全員が星座名になったわけではない。「ドラゴン紫龍」は日本語を意識したのか「Sirio(シリオ)」だし、「キグナス氷河」は「Cristal il Cigno(クリスタル・イル・チーニョ=クリスタル・スワン)」だ。どうやら一定のルールはないようである。自由ってすばらしい。
◆謎の黄金聖闘士「Fish」
イタリア語版では黄金聖闘士(ゴールドセイント)の面々も基本的には星座名が名前になっているケースが多い。だが、よく分からないのが「魚座(ピスケス)のアフロディーテ」。その名も「Fish(フィッシュ)」。教皇が渋い声で彼をフィッシュと呼んだときはなかなかの衝撃だった……。でも「Pisces」→「魚座」→「Fish」って、間違ってないけど美しくない!
なお、イタリア語だと「Pisces」は「Pesci(ペッシ)」。ただの魚ではあんまりだし、かといって男をアフロディーテのローマ名「ビーナス」と呼ぶわけにもいかない。困ったあげく付けられた名前なのかもしれないが……フィッシュって英語にするくらいなら、英語読みのピスケスでもよかったのでは? イタリアの黄金聖闘士の中でひとり異彩を放ちまくりな魚座なのであった。
最後にイタリア版の女性キャラの名称を見てみよう。女神アテナの生まれ変わりである「沙織」は「Lady Isabel(レディー・イザベル)」。星矢の師匠の「魔鈴(マリン)」は「Castalia(カスターリア)」。星矢を付け狙うツンデレの先駆者だった女聖闘士の「シャイナ」は「Tisifone(ティシフォネー ※復讐の女神の名前)」……「うそだろ!?」と思わず声をあげたくなるほど変化が激しい。どれもこれも歴史大河ロマンに出てきそうな名前ばかりではないか。日本語版とは全然違うが、女性に対し何か強烈なこだわりを感じるのはイタリアだからだろうか? 女性名に対する熱き思い……イタリアで小宇宙(コスモ)を感じた!
文●サンプラント
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