多くのAndroidスマートフォンは、充電をPC接続と兼用するマイクロUSB端子から行います。USBでは、ホスト側が5ボルトの電源をデバイス側に供給できるようになっています。この仕組みを使って、USB側から電力を供給してもらうようになっているのですが、実はスマートフォンは、接続先がPCなのか、ACアダプタなのかを区別しています(写真01)。

写真01: 「システム設定」にある「端末情報」→「端末の状態」で現在接続しているのがUSBなのかACアダプタなのかを判定できる

Androidスマートフォン用の充電ケーブル

最近では、スマートフォンの充電用に「充電専用」ケーブルが販売されています。100円ショップなどにもあり、かなり安価に入手が可能です。

筆者が100円ショップで入手した「充電専用ケーブル」は、片側がUSBコネクタ、他方がマイクロUSBコネクタになっているものでした。しかし、コネクタを開けてみると、USBの4本の信号線のうち電源のライン2本しか接続されていませんでした(写真02)。

写真02: 100円ショップで買った「充電専用ケーブル」電源のライン2本しかコネクタに接続されていない

これに対して、通常のUSBケーブルは、4本の信号線が接続されています(写真03)。

写真03: 通常のUSBケーブルは、このように4本の線が接続されている

充電専用ケーブルを使うと、電源だけが供給されるので、PC側は、デバイスが接続されていることを認識しません。しかし、Android側は、USBで接続されたと認識し、USBデバッグ接続などの状態に入ることがあります。

ところが、外部バッテリなどに付属してくるケーブルでは、ACアダプタとして認識されるケーブルがあります。これを使ってPCと接続しても、やはりPC側は、USBデバイスとして認識を行いません。

つまり、電源供給が可能なケーブルには、3つの種類があるのです(表01)。1つは、普通の「USBケーブル」です。もう1つは、電源のラインだけが接続された「充電専用USBケーブル」です。最後の1つは、充電専用だけど、ACアダプタと同じと認識されるケーブルです。これを仮に「ACアダプタUSBケーブル」と呼ぶことにしましょう。

■表1
種類 認識 充電 デバイス USB信号線
USBケーブル USB △※1 通常接続
充電専用USBケーブル USB △※1※2 × 無接続
ACアダプタUSBケーブル 充電器(AC) × ショート
※1:充電量が低いときに充電できないことがある
※2:AndroidはUSB接続と認識するがPC側は無反応

「ACアダプタUSBケーブル」を調べてみると、以下のようなことがわかりました。電源ラインはそのまま接続されていますが、USB用の信号線である「D+」と「D-」信号がスマートフォン側(マイクロUSB側)で接続してあり、PC側(USBコネクタ側)には何もつながっていないのです(図01)。

図01: 3種類のUSBケーブルのうち、「ACアダプタUSBケーブル」は、D+とD-の信号線がスマートフォン側で接続されている

また、スマートフォンに付属しているACアダプタも同じような結線で、やはり「D+」と「D-」がショートしていました。一部の充電用のACアダプタは、ケーブルがなく、USBコネクタ(タイプAレセプタクル)となっているものがあります。たとえば、ソニーのXPERIAシリーズ付属のACアダプタがこのタイプです。このタイプでは、ACアダプタのUSBレセプタクルのところでUSB信号がショートされた状態になっています。この場合、普通のUSBケーブルを接続すると、スマートフォン側からはACアダプタとして認識されるようになっています。逆に、同じ構造でも、iPhone用などのものは、USB信号はどこにもつながっていない構造になっているようです。

スマートフォン側はどうなっている?

実際にどうなのか試してみました。テストは、ACアダプタとスマートフォンを「ACアダプタUSBケーブル」と「USBケーブル」、「充電専用ケーブル」で接続したものと、PCとスマートフォンを「USBケーブル」で接続した場合の4通りで行いました(表02)。なお、各機種とも、通信による消費電力の変動を押さえるためフライトモードにし、画面がオフになるスタンバイ状態で計測を行っています。

■表2
機種 ACアダプタ接続 PC接続
ACアダプタUSBケーブル 充電専用USBケーブル 通常USBケーブル
HT-03A 133 142 154
SH-03C 270 1mA以下 228
SO-03C 160 160 134
Nexus S 230 230 231
Nexus one 260 260 260
※システムが起動し、フライトモードにあるときにスタンバイ状態(画面オフ)にして計測

Androidのスマートフォンは、どの機種もACアダプタの接続とそれ以外のUSB接続を区別するようです。区別しているかどうかは、設定にある「端末情報」の「端末の状態」で判別しました。充電中の場合、ここに「USB」もしくは「AC」と表示され、スマートフォンが接続されているのがどちらであるかを判断した結果が表示されます。

また、すべての機種は、ACアダプタと「ACアダプタUSBケーブル」で接続した以外の場合には、接続がUSBであると判断し、「USB接続」状態となりました。これは「充電専用ケーブル」でも同じで、USBの信号ライン(D+、D-)がショートされていない限り、USBでホストと接続できなくてもUSB接続状態と判断するようです。

SH-03C以外は、ACアダプタとの接続に「ACアダプタUSBケーブル、「USBケーブル」「充電ケーブル」のどれを使っても充電電流に大きな違いは出ませんでした。

SH-03Cでは、ACアダプタを「ACアダプタUSBケーブル」以外で接続すると、充電を行いません。この機種は、PCと接続し、PC側からUSBデバイスとして認識されないと、USB充電を開始しない仕様になっているようです。このため、ケーブルとACアダプタの組み合わせによっては、USB接続と判断され、充電が行われない可能性があります。他の機種は、USBケーブルでPCと接続した場合にも、充電電流に大きな変化はありませんでした。

このことから考えると、確実に充電するには、ACアダプタと「ACアダプタUSBケーブル」を使うのがいいようです。また、USB接続を確認するには、PC側で行うべきで、Android側では、電源ラインさえつながっていれば、UBS接続状態と判断するため、ケーブルの断線や「充電専用USBケーブル」であることを判定することはできません。

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