「首都直下型地震が○%の確率で!」なんていう見出しが夕刊紙に踊っている昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか。直下型地震が来るかもしれないなんて言われたら「家を買おう!」とはならないと思いますが、東京の不動産トレンドはどんなことになっているのでしょうか。不動産屋さんに聞いてきました。「本当のことを言うから名前は勘弁してくれ」ということですのでそのおつもりでお読みください(笑)。

3.11直後は西高東低

――まず3.11以降の不動産トレンドについて教えてください。

昨年の地震直後、まず関東の不動産価格がぐっと下がりました。理由は言わずもがなだと思いますが。と同時に関西以降の不動産価格がぐぐっと上がりました。上がり幅は結構なものでした。うちが関西のディベロッパーから聞いた話では、最低でも10%、上は35%なんていうモノもあったぐらいです。

――関東圏はもうダメかも、みたいな話が一時ありましたもんね。そんなにすぐ影響あったんですか?

そりゃそうですよ。うちも進めていた話がいくつ凍結したことか。

――他に震災直後のトピックというと?

外人の方がぱっといなくなりました。ウチは賃貸物件も多く手掛けていますが、外人の方が蜘蛛の子を散らすように退去していきましたよ。特に中国の人は早かったです。比較的近くて帰りやすいからですかね。

東京都圏は若干下げ

――あれから1年経ったわけですが、現在都内の不動産はどうなっていますか?

一部を除いて落ち着いていますね。若干下げ基調ではありますが。

――なるほど。一部を除いてというのは?

液状化があった地域は本当に深刻なんですよ。もうあんまり報道されなくなってますけど、新浦安は今でもひどい状態です。

――今でもですか? 1年経ったのですっかり落ち着いているのかと思ってました。

いやいや。新浦安の方で、液状化しなくて大丈夫だったのって3分の1ぐらいでした。3分の2は何らかの被害を受けたんですよ。

――えっ。3分の2もですか?

そうです。その3分の2の地域の建物は買い手がなかなかつきませんし、補修するといっても、地盤に関することだったりするので……。

――そういった物件の売買をしたりしますか?

仕事ですからね。やりますが、大変です。たとえばうちの扱った物件で、分譲マンションの部屋がいくつかあります。マンション自体はなんとか大丈夫だったんですけど、部屋の壁に横にびしっとヒビが入ってしまって。結構大きなひびです。で、持ち主さんがそれを売りたいと。

――左官屋さんを頼んで壁塗り直して売っちゃうとかできないんですか?

いやいや、そんなこと絶対できませんよ! 後で発覚したら大変なことになります。最近では売買に不利なことも包み隠さず全部言うってことになってるんですよ。ちゃんとやってる不動産業者は絶対そんなことしませんよ。

――で、その物件はどうなったんですか?

いや売れないですね。まだありますよ。

やっぱり建て方はしっかりしよう!

――液状化した地域は、新浦安が知られていますが他にもあるんですか?

あります。東雲なども被害を受けましたね。ただ、新浦安ほどは被害は出なかったんですよね。

――なぜですか。

建物を建てる方法がしっかりしてたのが多かったんですね。地盤工事をきちんとやって、基礎工事も。ちゃんとした工事をやった家、マンションはちゃんとしてます。開発業者の腰の入れ具合と言いますかね。浦安のディズニーランドも、ランド本体は大丈夫でしたでしょ? 駐車場は残念なことになりましたけど。

高層タワーは大人気で下げ知らず!?

――地震で大変だったのに高層タワーマンションの開発と分譲はどんどんやってますが、あれは大丈夫なんですか?

高層タワーになるほど基礎はがちっとやるもんなんです。うちみたいな所帯の小さな会社にはなかなかできない開発ですけど。あと、高層タワーは今でも大人気なんですよ。たとえば、湾岸にある10年前に建てたタワーマンションの分譲部屋を先日売買仲介しましたが、10年前の分譲価格よりも高い値段で売れましたよ(笑)。

――それはうらやましい。なぜそんなことが?

ブランドですね。そのブランド信仰で価格が下がりにくいんです。なので、それを狙ってタワーマンションを購入する人もします。その好循環で価格は一定水準維持されるんです。

――タワーマンションってそういうメリットもあるんですね。

他にも管理費が安く済むっていうのがあります。たとえば200戸とか300戸とか、入ってる大規模マンションの場合、月々の管理費はすごく安く済みます。1戸が1万円ずつ出しても200万円とか大きな金額になるので、それで修繕費を積み立てたり、行き届いたサービスを受けられたり……。少ない戸数の分譲マンションだと、最初は良くてもどんどん管理費が上がっていくなんてことになるので。そこはグロスメリットが出ますね。

不動産の価格差がハッキリと!

――他にはどんなトレンドがありますか?

不動産の価格の差が明確になってます。上下の差が広がってると言ってもいいと思いますが。

――どういう意味ですか?

高価なものはより高く、安価なものはより安くという流れですね。たとえば、物件査定をする際に、今までは「すぐ横に道路が走っている」なんて言い方だったんですが、今は「その道路は3mなのか、4mなのか、6mなのか」といった細かいことまでちゃんと数値化して、その物件のポイントを査定します。それで、どうなるかと言うと、高価なものはより高いポイントを集めるものになっていくんです。反対に、安価なものは査定でポイントがとれずより安くなります。物件の格差が広がっていると言いますか。

――なぜそんな流れになっているんですか?

ハッキリ言いますと、物件、不動産を購入できる人に格差が広がっているからだと思います。不動産って、普通一生に一回しか買わないものですよね。で、その一回の買い物にどのくらいのお金を出せるかに差がついているんですよ。だから、その出せる金額に合わせて、高価な物件はより高く、安価な物件はより安く、という流れですね。

――日本では格差が広がってるなんて言ってますけど、不動産にもそんなことが! その差はどんどん広がるんでしょうか?

それはわかりません。不動産はやっぱり社会の動きとかで大きく左右されるマーケットですから、今はそうなんですけれども、この先もずっとそうかはわからないですよね。

――東京都、周辺はどうでしょうか。たとえば埼玉県のディベロップなんかはどうですか? 都内から一歩ひいた所に居を構えようという人は多いと思いますが。

そうですね。大まかな流れは変わらないと思います。最近で大失敗した開発も聞きませんし。ただ、浦和とか大宮の開発と販売は好調だと聞いていますが、それ以外の場所、やや外れた地域のディベロップはそれほど良くないかも、ですね。

――なぜですか?

やっぱりさっきの格差の話になると思うんですが、ミドルレンジの物件というのがよくないんですね。ちょっと外れてるので価格はちょっとお安いです、というのは良くないです。ド真ん中で高い、思いっきりお得、このどっちかなんですね。トレンドが。

――うーん。当たり前ですけど、日本の縮図というか、イヤな話というか。

すみません。私たちも日本のトレンドに流されて商売してますから(笑)。


というわけで某不動産屋さんに最新の話を聞いてきましたが、トレンドは「格差社会である」と。さて、あなたの周りの不動産事情はいかがですか?

(高橋モータース@dcp)

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