NTTドコモのスマートフォンラインアップで、独自のポジションを確立している、カナダResearch In Motion(RIM)のスマートフォン「BlackBerry」。今年の3月末には、ついに最新モデルとなる「BlackBerry Bold 9900」が発売された。今回、RIMの日韓担当Managing DirectorのNorm Lo氏に、日本市場での事業計画など最近のBlackBerryを取り巻く状況について話を聞いたので紹介しよう。
BlackBerryの現状とこれから
RIMが国内でBlackBerryシリーズを投入したのは2006年で、当時からドコモ経由で製品を販売。端末だけでなく、個人向けのBlackBerry Internet Service(BIS)、法人向けのBlackBerry Enterprise Service(BES)という2種類のネットワークサービスも同時に提供し、セキュアなインターネット接続を実現している。
BlackBerryは、グローバルでは175カ国で販売を行い、650の携帯事業者が製品を投入している。その中でもドコモとの関係は良好で、Lo氏は、日本でのビジネスは順調だとアピールする。RIM自身も日本市場を重要視しており、4,500の法人ユーザーを獲得し、中小企業、個人の利用者もターゲットにサービスを展開しているという。「BlackBerryを通して、モバイルのベストソリューションを日本市場に提供することが目標」だとLo氏は語る。
BlackBerryはその製品とサービスによって、世界のスマートフォン市場で優位なポジションに位置していたが、iOS、Androidが市場を席巻し、BlackBerryはそれに押されてシェアを落としている。実際、今年3月の第4四半期決算発表では、特に最大市場の米国で「シェアが大きく失われた」(Lo氏)ことなど、ビジネスとして厳しい局面を迎えている。
Lo氏は、「難しい移行期にある」と説明する。BlackBerryのプラットフォームが新OSの「BlackBerry 10」に移行するのは今年後半であり、それまでいかにビジネスを維持するかがポイントになっているようだ。組織変更による体制作りも進めており、Lo氏は「下降気味ではあるが、将来的に見えるとポジティブな面もある」と強調する。
米国市場で人気があったBlackBerryだが、同市場でのニーズがQWERTYキーボードからフルタッチに移行してきており、こうしたデバイスに「BlackBerry 10が出るまでに追いつかなければならない」とLo氏は述べる。だが、米国以外の地域では健闘しており、特にアジア太平洋地域、欧州、中東、アフリカ、南米は順調で、特に南米は現時点でもトップシェアを確保。インドネシアなどの東南アジア、南アフリカ、中東も好調だという。苦戦している米国市場については、今後も注力する考えで、「時間はかかるが、米国での反転攻勢も目指していく」とのことだ。
直近では、法人分野に再びフォーカスする方針で、同分野でのシェアを拡大し、現在の支配力を高めていく考えだ。BlackBerryのサービスは、セキュリティと信頼性の高さを武器に、日本を始め世界でスタンダードとなっているという。米国のフォーチュン500(全米上位500社)の90%がBlackBerryを採用し、25万台のサーバーが企業内で稼働しているそうだ。
法人市場では、BlackBerryのセキュリティ、信頼性、堅牢性が求められているという。加えて、BlackBerryを利用するためのミドルウェアを自社内のサーバーに設置するため、IT管理者が複雑な条件でも自由に設定でき、端末を管理できる点も大きなポイントだ。端末だけではないサービスと端末が一体化した点がBlackBerryの強みとなっている。
このほか、法人向けでは「BlackBerry Mobile Fusion」も重要だという。同サービスは、「次世代の法人向けミドルウェア」とされるもの。モビリティ、セキュリティ、信頼性、管理性をさらに向上させるとともに、ビジネスユーザーがプライベートで使うiOS/Androidを企業内で使いたいといった場合にも、柔軟に、セキュアに管理できるようになる。
iPhoneやAndroid端末の法人利用も「確かにポピュラーになってきている」とLo氏は語る。それでもBESやBISのネットワークサービス、今後のMobile Fusion、BlackBerry 10を含めた総合ソリューションで、ほかのプラットフォームとの差別化を図り、ビジネスを強化していきたい考えだ。
一方、コンシューマ分野では、ターゲットを定めて注力していく考えで、ユーザーの満足度をさらに向上させたいという。例えば、全世界のユーザー数7,700万のうち5,500万のユーザーがPeer to PeerのインスタントメッセージングプラットフォームBlackBerry Messenger(BBM)を使用しており、モバイル環境でのコミュニケーションに使っている。このプラットフォームに接続できるアプリを「800ぐらい」投入したいとLo氏は語る。接続アプリが提供されることで、TwitterやFacebookなど、さまざまなアプリがBBMにアクセスできるようになり、ユーザーの利便性が向上する―― との考えだ。「課題はたくさんあるが、米国外ではビジネスは順調で、日本でも拡大していくプランを持っている。日本のコンシューマ、法人、政府には、最良の満足体験を提供していくことでコミットしていく」とLo氏はアピールする。
市場によって異なる対応が必要、BlackBerry 10で競争力向上を図る
前述の通り、東南アジアのでは、BlackBerryが急速に拡大しており、今年にはBlackBerryストアの数が計4,000店になる予定だという。
こうした東南アジアでのBlackBerry人気は、「(同地域では)テキストメッセージングの利用が中心」といった背景がある。そのため、QWERTYキーボードを搭載したBlackBerry人気が高いのだ。アジアの一大市場である中国に関しては、「堅調な形だが、今後ももっと伸ばせる」という。チャイナテレコムなど、中国の主要事業者はBlackBerryを取り扱っており、まだ拡大できるとLo氏は見ている。
東南アジアなどでQWERTYキーボードを搭載したBlackBerryが好調のRIMだが、「タッチパネルの重要性は理解している」(Lo氏)という。そのため、タッチパネル搭載端末を複数用意して、そうしたニーズにも応えられるようにしている。
また、新OSのBlackBerry 10の提供により、「タッチパネルへの対応」というウィークポイントを克服する考えだ。BlackBerry 10は、フルタッチだけでなく、キーボード搭載、キーボードとタッチパネルのハイブリッドといった複数のフォームファクタに対応でき、この新OSの登場によって、競争力が保てるとLo氏は説明する。