あくまでも噂レベルだが、今年5月後半から6月にかけての公開が予定されているWindows 8 Release Preview。事実上のRC(Release Candidate:製品候補)版となる同プレビューの登場は否応がなしに期待が膨らむが、その一方で興味深いのが既存OSのサポート期間である。つい昨日Windows Vistaのメインストリームサポートが終了し、同OSユーザーとしては今後使い続けるか否か、判断を強いられることだろう。今週はWindows OSのサポート期間に関して一度整理し、OSのアップグレードが必要な時期を再確認する。
Windows 8レポート
Windows Vistaのメインストリームサポート終了
2012年4月10日をもって、Windows Vistaのメインストリームサポート期間が終了した。そもそもMicrosoftは製品発売日から一定期間をメインストリームサポートと称し、製品のフルサポートを行っている。コンシューマー(消費者)用製品は最低5年のメインストリームサポートを提供。その一方で、ビジネス用製品は仕様変更や新機能のリクエスト、無償サポートライセンスなどを廃した最低5年の延長サポートを提供している(詳しくは後述)。つまりビジネス製品は合計10年のサポートを受けることが可能だ。例外として毎年新しいバージョンをリリースしている製品は最低3年のメインストリームサポートが提供されるが、OSはこれに含まれないので除外していいだろう。
使用者としては少々複雑に感じさせるマイクロソフトサポートライフサイクルだが、これをより複雑にしているのが、サービスパックライフサイクルポリシーの存在だ。文字どおりService Pack(製品の不具合を改善するための修正プログラムを一つのパッケージ)に適用されるサポート方針だが、例えばService Pack 1がリリースされると、前バージョン当たるRTM(Release To Manufacturing:製造工程)版リリース日から1年もしくは2年のサポートが提供される。ただし、このサポート期間もしくは製品自体のサポートライフサイクル終了日のいずれかが先に訪れると、サービスパックライフサイクルポリシーも終了。修正プログラム類の提供などが停止する。
Windows Vistaを例にすれば、Service Pack 1は2008年2月24日にリリースされているが、次のService Pack 2が2009年4月29日にリリースされたため、Service Pack 1は約2年後の2011年7月12日に終了。今後、Windows Vista Service Pack 3がリリースされる可能性は乏しく、2年後の2013年7月にはサポート終了となるが、前述のとおりメインストリームサポート期間は終了しているため、Windows Vistaの終了日は2012年4月10日となる。ここから5年間の延長サポートが発生し、2017年04月11日まで修正プログラムは提供されるが、セキュリティ更新プログラム以外の提供は期待しない方が良い(図01)。
ちなみにWindows XP Service Pack 3は2008年4月21日にリリースされているが、メインストリームサポートは2009年4月14日に終了し、延長サポートも5年後の2014年4月8日に終了。Windows 7はメインストリームサポートが2015年1月13日に終了し、2020年1月14日には延長サポートも終了する。
市場の需要供給で変化するサポート期間
さて、前述のとおり同社はコンシューマー用製品のメインストリームサポート期間を5年、ビジネス用製品は5年の延長サポートを追加して合計10年と説明した。つまり、Windows Vista Home Premiumなどのコンシューマー向けエディションに延長サポート期間は適用されないのである。しかし同社は今年2月頃にクライアント向けWindows OSに対する製品サポートライフサイクルポリシーを一部変更し、コンシューマー向けエディションも延長サポートが適用されるようになった。あくまでもこの変更はWindows Vista、Windows 7に対する特例であり、Windows XPは2007年1月に延長を適用している(図02)。
このように市場の需要供給に応じて、マイクロソフトサポートライフサイクルは柔軟に変化しているのが現状だ。対象となるOSを使用している側としては、単純にサポート期間が延長されるのはありがたいものの、無用な混乱をまねている側面があることも否定できない。タブレット型コンピューター向け機能を主軸に置くWindows 8が大きく普及するか否か、この時点で判断するのは難しいものの、あと2年ですべてのサポートが終了するWindows XPユーザーはOSのアップグレードを考慮する時期に差し迫っている。
年末にはリリースされると言われているWindows 8も選択肢に含まれるが、操作体系が変わる可能性が高いため、Windows XPと同じUI(ユーザーインターフェース)を求めるのであれば、Service Pack 1もリリースされて安定性が増したWindows 7を選択するとよい。ユーザーの混乱も一番少ないだろう。ちなみにリボンUIを採用していないMicrosoft Office 2003のメインストリームサポートも2009年に終了し、延長サポートはWindows XPと同じ2014年1月14日なので、Microsoft WordやMicrosoft Excelを使用しているユーザーは、オフィススイートの選択も必要となるだろう。
阿久津良和(Cactus)