キヤノンは、コンパクトデジタルカメラ「IXY」シリーズに、Wi-Fi(無線LAN)によるスマートフォンとの連携機能を備え、光学12倍ズームのコンパクトモデル「IXY 1」の発売を開始した。実機をお借りすることができたので、早速レビューをお届けしよう。
なお、本レビューは発売前の試作機を試用したため、製品版とは仕様が異なる場合があることをご了承いただきたい。
初代「IXY DIGITAL」の発売は、今からさかのぼること12年前の2000年の5月のこと。12年を経て原点に回帰し、本体の縦横比や、本体におけるレンズ部の位置を、もっとも安定して美しく見えるという「黄金比」に基づいた"1:1.618"にした。初代IXY DIGITALも、その小ささやデザインは他製品にはないものを持っており、初めて見たときは感動した記憶がある。12年を経て登場した「IXY 1」は、初代IXY DIGITALに負けないインパクトと、歴代で最高のスタイリッシュさを持っている。
IXY 1の外観はほぼ真四角の直方体で、ズームレバーやシャッターボタン類などのほかに目立つ突起物はない。ボディカラーは、ソリッドなマットホワイトと、光沢の美しいピアノ調ブラックの2色が用意されている。
ボディ背面はボタン類が省かれ、3.2型ワイドの液晶モニターだけとなっており、メニューなどの操作はタッチパネルを使って行う。なお、兄弟モデルとして、同じく光学12倍ズームレンズを搭載しつつもWi-Fi機能を省いて液晶モニターを3型と小さくした「IXY 3」や、Wi-Fi機能はそのままに光学ズームを5倍とした「IXY 420F」もラインアップされている。
光学系は、ボディに添って横に配置する屈曲光学系とオーソドックスな沈胴ズーム機構を組み合わせ、沈胴時に光学系を折り曲げるためのプリズムを待避させる「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」を採用。これにより、わずか19.8mmと薄型のボディながら、35mm判換算28~336mm相当の光学12倍ズームを搭載している。ちなみに、昨今の広角ズーム系では、25mm以下がトレンドだが、兄弟機のIXY 420Fではレンズの光学ズームを24mm相当からの5倍ズームとなっている。
単純に大きさだけで比較すれば、他社の薄型モデルにはもっと薄いモデルもある。しかし、光学10倍以上の高倍率ズームモデルとなれば話は別だ。他社の高倍率ズームモデルといえば、パナソニックの「LUMIX(ルミックス) DMC-FZ」シリーズや、ソニーの「サイバーショット(Cyber-shot) DSC-HX」シリーズなどが思い当たるが、これらのシリーズではより高倍率化が進んでいる。そのため、IXY 1に比べるとひとまわり以上大きなボディとなっており、そういった中で、やはりコンパクトさというのは持ち歩きには非常に重要な要素だ。ボディサイズを小さくしつつ12倍ものズームが可能なIXY 1はユーザーにとってうれしい選択肢のひとつといえるだろう。
スマートフォンが普及した現在、カメラで写真を撮った後、TwitterやFacebookへの投稿をどうやって行うかは課題のひとつ。「だったら、もう写真はスマートフォンでいいや」と思っているユーザーも少なくないだろうが、ある程度写真が好きなユーザーからしてみれば、さまざまなアプリがあるとはいえ、デジタルズームしか使えないスマートフォンではやや物足りない。SDカードを採用するモデルでは、デジタルカメラにEye-Fiカードを使用するという選択肢もあるが、IXY 1ではカメラにWi-Fi機能を内蔵することで、スマートフォンとの連携を可能にしている。
記録メディアには、microSDメモリーカードが採用されている。Wi-Fi機能を搭載していることもあり、大容量メディアを入れておけば、あとはWi-Fi上でPCやスマートフォンにダウンロードして、メディアの抜き挿しはしないという利用スタイルが前提となっているのだろう。そのためか、従来モデルではメディアスロットはバッテリーと同じカバーの中に収納されていたが、IXY 1ではバッテリーとメディアは別のカバーに収納されるようになっている。