カナダのリサーチ・イン・モーション・リミテッド(RIM)が提供するスマートフォン「BlackBerry」向けアプリケーションの中で、日本国内でもっともインストールされている有料アプリが「Roco Cal」だ。

今回、国内はもちろん海外からも支持を集めているスケジュール管理アプリ「Roco Cal」の開発者である「UG」氏に、Roco Calの特長や開発の経緯、BlackBerryの魅力などについて聞いたので紹介しよう。

Roco Cal開発者のUG氏

Roco Cal無料提供キャンペーンを実施

まずはじめに、Roco Calについて簡単に紹介していおこう。Roco Calは、BlackBerryの標準カレンダーのデータを利用でき、使いやすさと見やすさに優れた国産のスケジュール管理アプリ。祝日のデータを取り込めるなど、日本人にも使いやすく、BlackBerryならではのキーボードショートカットにも対応している。

BlackBerry向けスケジュール管理アプリ「Roco Cal」

月間表示や週間表示でも予定を確認することができる

「Roco Cal」の設定画面。言語は日本語と英語を選択可能

色設定画面では、各曜日のマス目の背景色や文字色を設定できる

なお、リサーチ・イン・モーション・リミテッド・ジャパンでは、4月9日より、Roco Calのキャンペーンを実施しており、通常5.99米ドル(2012年4月9日時点)の同アプリを無料で提供している。手順としては、BlackBerry App WorldからRoco Calの無料トライアル版をインストールしたうえで、別途ライセンスキーを取得できるキャンペーン用アプリをインストールする、といったかたちだ。

なお、キャンペーンバナーよりキャンペーンアプリが表示されない場合は、以下のURLよりキャンペーン・アプリケーションをダウンロードできる。

URL : http://appworld.blackberry.com/webstore/content/97811/

BlackBerryアプリ開発までの経緯

それではこれより、UG氏に話を聞いていきたい。

UG氏は、Roco Calのほかにも、地震情報を配信する「Roco Earthquake++」や絵文字の表示・挿入ができる「Roco Email View」などのBlackBerry向けアプリを数多く開発しており、自らが運営するWebサイト「Rocomotion」で情報の発信とアプリの配布を行なっている。

小さい頃からPCに触り始め、幼稚園児の頃にすでにBASICでゲーム作りをしていたというUG氏は、大学入学後に本格的にプログラミングを開始。その後、2001年にRocomotionを開設し、ホームページに設置できるCGIスクリプトの配布を始めた。個人でBlackBerryアプリやスクリプトの開発を行う傍ら、本業ではシステムエンジニアとして勤務している。

―― BlackBerryアプリを始めたきっかけを教えていただけますか。

2009年頃にBlackBerryと出会いました。もともと、PDA(携帯情報端末)の「Palm」が好きだったので、スマートフォンには興味があったのですが、私がBlackBerryを入手した頃は、画像縮小すら手軽にはできないという状態でした。海外の開発者が画像縮小できる有料アプリを公開していたので、それを購入したのですが、PayPalで海外送金する必要があったりと、入手するまでの敷居がかなり高かったです。

それで、実際にアプリを使ってみると、本当に画像を縮小できるだけで、「これは本当にお金を出して買うものなのかな? 」と感じ、(ちょうど暇だし)自分で作ってみようかなと思ったのが、BlackBerryアプリ開発を始めたきっかけです。ただ、当時は(BlackBerryの開発言語である)Javaは全然使ったことがなかったですし、RIMの開発者サイトから開発環境をダウンロードしてみましたが、実際に開発環境を動かせるようになるまでには1カ月くらいかかりました。

最初に画像縮小するアプリを作って、その後、メールの絵文字を表示できるアプリなども作りました。絵文字表示アプリを開発していた頃は、寝る時間もないくらいに打ち込んで、シミュレータと実機で試行錯誤を繰り返していました。そもそも、BlackBerryのシミュレータでは日本語を表示することができなかったので、そこから取り組む必要があったのですが、おそらく世界で最初にシミュレータでの日本語表示に成功したのではないかと思います。この絵文字アプリで、Rocomotionのことをだいぶ知ってもらえるようになりました。

現在は、BlackBerryのほか、iPhoneも使っていますが、BlackBerryで常に電話やメール、BBM(BlackBerry Messenger)ができる状態でありたいと思っているので、BlackBerryのバッテリーがなくなることが一番困ります。自分にとってBlackBerryは「他のものがなくても、これだけは必要」という存在です。

スケジュール管理アプリ「Roco Cal」開発の経緯

―― 「Roco Cal」はどのような経緯で開発されたのでしょうか?

一言でいうと、BlackBerry標準のカレンダーが「イケてない」と感じたからです。標準カレンダーは、月間表示などの一覧で予定の文字が見られないという、いわゆる一覧性の悪さがあります。たとえ文字が小さくても、一覧表示で文字が見えたほうが使いやすいはずです。そこで、Roco Calでは一覧表示でも文字が見えるようにしました。

きっかけになったのは、「BlackBerry Fan Site」を運営しているKuroさんの「こういうカレンダーを作って」というつぶやきでした。海外のアプリでは、一覧表示で文字が見えるカレンダーもあったのですが、タイムゾーンを変えられなくて使えないものだったのです。

Roco Calは約2年前にリリースしたのですが、その後、ユーザーからさまざまな要望が寄せられたので、バージョンアップを重ねて、それらの要望をほぼ実装していきました。どう使いやすくするかにこだわり、多くの要望を取り込んでいるので、設定項目は多めになっています。海外のユーザーから要望が寄せられることもあって、例えば中国のユーザーから「六曜」を表示してほしいという要望があったので、祝日のデータを取り込む仕組みを使って、六曜も表示できるようになっています。

―― 一覧性の良さ以外で、Roco Calの特長というと何があるでしょうか?

多くの機能を実装しているので、ひとつだけ挙げるのも難しいのですが、例えば、背景や文字の色設定ができるようになっています。これは、女性ユーザーなどにも嬉しい機能ではないでしょうか。あと、ユーザーにRoco Calの特長を聞いてみたのですが、「手書きの手帳のように使える」という意見があったり、「BlackBerryからiPhoneに乗り換えたけど、すばやく入力できるRoco Calが使いたくてBlackBerryに戻ってきた」という声もありました。人によってそれぞれ使い方が違うので、特長と感じていることも、それぞれ違うのではないかと思います。

あと、BlackBerryの特長でもあるQWERTYキーボードによるショートカットも、もちろん使えるようになっています。BlackBerryの標準カレンダーは、一覧性の悪さこそありますが、ショートカットなどはすごく良くできていると思います。実際にRoco Calでも、個別の日付の部分は標準カレンダーが表示されるようになっているので、標準カレンダーとの、“行ったり来たり“を違和感なく使えるようにと心がけています。標準カレンダーの足りない部分をカバーする、空気のようなアプリでありたいと思っています。

―― Roco Calは、当初はRocomotionでOTA(Over the Air)配信されていましたが、BlackBerry App Worldに移行して、有料アプリになりましたね。

はい。いろんなユーザーの方からの要望を拾っていき、それを反映させることで、好評をいただけるアプリになりました。これは、ユーザーの方々から、さまざまな反応を貰えたからで、一人では決してできていなかったと思います。

App Worldに移行した理由は、好評を得たことで自信がついたというのもありますし、Roco Calが海外でも通用するのかを試してみたかった―― といったところです。実際に、App Worldに移行して、海外ユーザーも増えてきました。「使いやすい」という感想も多くて、要望もいくつかありましたが、悪い評価はほとんどありませんでした。

あとは、サイトで配布していると、更新通知が受け取れないという意見があったので、最初は通知用のツールを作ろうとしましたが、App Worldで配信することで、更新通知についても解決できると思いました。

有料にしたのは、ユーザーから「アプリにお金を払いたいので、有料にしてほしい」という声を頂き、有料にしても売れるだろうとも考えたからです。もともとは、BlackBerryを広めたい、使いやすくしたい、ということで無料配布してきましたが、Roco Calが好きだから有料でも使いたい、という人に使っていただければと思っています。

BlackBerry、RIMへの要望

―― 開発者やユーザーとして、BlackBerryやRIMへの要望などはありますか?

まず、開発者としてですが、次期OSの「BlackBerry 10」の開発言語としてJavaをサポートしてほしいという要望があります。Javaを残してくれないと、現状のアプリがほとんど使えなくなる可能性があります。とりわけ、Roco Calなどは端末のデータを扱うので、ネイティブでのJavaのサポートをお願いしたいです。

BlackBerryスマートフォンの次期OSとされる「BlackBerry 10」は、現在、BlackBerryタブレットのPlayBookで採用されているOSと同じく、「QNX」をベースとしたものとなる。BlackBerry 10では、ネイティブSDKの言語はC/C++のみとなる見込み。なお、Androidアプリの実行環境が搭載されるため、Javaでのアプリ開発が不可能というわけではない。そのほか、BlackBerry 10では、HTML5やAdobe AIRがサポートされる

あと、RIMは海外の開発者を支援しているとは聞きますが、日本の開発者には少し厳しいのではないかと思います。開発環境も使いやすいとは言えないですし、たまに動かないのがツールのせいなのか、自分のせいなのかわからないこともあったりします。

とはいえ、BlackBerryはハードキーがある独特な形状をしていて、使っていると抜け出せなくなる魅力的な端末です。また、開発者とユーザーの距離も近いですし、ユーザーから要望やアイデアを聞いたり、アプリのテストをしてもらったり、と非常に良好な関係が築けていると思います。

Roco Calの今後の展望

―― Roco Calやご自身の今後の展望について教えてください。

Roco Calについては、ほとんどの機能を実装したので、ほぼやり尽くした感じかなと思っています。最新機種の「BlackBerry Bold 9900」などはハイスペックですが、「BlackBerry Bold 9700」で使っている人もいるので、あまりアプリを重くしたくないというのもあります。何か不便を感じることがあったら、作っていきたいと思います。

全体的なところでは、(BlackBerry 10でサポートされる)HTML5をやってみようかと考えています。実際にHTML5で、どこまでのことができるのかを確認してみたいです。10年以上、コードに触れてきて、それをやめたくはないと思いますし、今後も何かしらはやり続けるつもりです。

―― 最後に、Roco Calのユーザーに向けて一言お願いします。

今回のキャンペーンで、初めてRoco Calをダウンロードする人も多いと思いますが、できればすぐに使うのをやめたりせずに、使い込んでほしいです。これは、BlackBerryと同じですが、Roco Calも使い込むと、より魅力がわかると思いますので。

Roco Calには、先人の知恵というか、コアなBlackBerryユーザーの声がたくさん詰まっています。もし、わからないことがあれば、Twitterなどでつぶやいてみれば、皆が教えてくれるはずです。一生懸命作ったものなので、ちゃんと使ってほしいと思いますし、あまり知られていない機能もあったりするので、そういうものも発見してもらえると嬉しいです。