B級映画の帝王としてオタク系監督に愛され、また若き日のジャック・ニコルソンやフランシス・フォード・コッポラ監督を輩出した人物としても知られる映画監督でプロデューサーのロジャー・コーマンと、その妻でありゴキブリ・ホラー映画『ザ・ネスト』などをプロデュースしているジュリー・コーマンに話を聞いた。

ロジャー・コーマン(右)とジュリー・コーマン(左)

ついに日本公開される映画『コーマン帝国』は、世界中にショックを与えたコーマンによるB級映画の製作裏話や、彼の映画製作哲学とハリウッド映画界での隆盛に迫ったドキュメンタリー。ニコルソンやマーティン・スコセッシ、ジョナサン・デミ、ロン・ハワードなどゆかりの深い人物も登場し、当時まさに映画界に帝国を築いていたコーマンの偉業がつぶさに記録されている。

若かりし頃のコーマン

2009年にコーマンは、アカデミー名誉賞を受賞。本作には、その記念すべき瞬間が感動的に押さえられている。ロジャーは「私としてはまさか低予算映画の人間にそんな賞などくれるわけがないと思っていましたから、受賞の知らせを聞いたときは本当に驚きました」と振り返る。ジュリーは「デミ監督やカーティス・ハンソン監督がロジャーのことを根強く推薦してくれたの。それにクエンティン・タランティーノ監督は『ロジャーに映画をとらせるために、実際にストーカーしたことがある』との愛を表明してくれました」とコーマン・スクール門下生と熱烈な業界ファンによって与えられた賞だと説明。その日のパーティーでニコルソンはロジャーに「誰も俺のことを信じてくれなかったときに、信じてくれて本当にありがとう」との感謝の思いを伝えたそうだ。

コーマンについて語るマーティン・スコセッシ

ロン・ハワード

『ピラニア』(1978)の撮影風景

女囚シリーズ

コーマンが"B級映画の帝王"と呼ばれるゆえんは、100本以上もの低予算映画を作りながらも、10セントも損をしていないという伝説があるから。監督としては1990年の映画『フランケンシュタイン/禁断の時空』を最後に引退し、それからはプロデュース業に専念してきた。フランシス・フォード・コッポラ、ジェームズ・キャメロン、ロン・ハワードなど、ロジャーの下で働いた映画人でオスカーに輝いた人物は多く、またそのほとんどが現在のハリウッド映画業界を支えている者ばかりだ。映画監督になるにあたって必要な要素とは一体何だろうか? ロジャーはこれまでの経験から、それは三つあると話す。

「幸運であれば1、2本の作品を世に出すことは可能でしょうが、長いキャリアを築いていくには知的でなければなりません。そして二つ目は真面目であるということ。映画監督という仕事は確かにグラマラスですが、ハードワークでもあるからです」と説明。そして一番重要なのが3番目で「それはクリエイティブな才能があるかということです。これを自分で把握する事は難しいかと思いますが、コッポラ監督やキャメロン監督、それにデミ監督は、私のアシスタント時代からそれを感じることができましたからね」と教えてくれた。

映画『コーマン帝国』は4月7日より、新宿武蔵野館ほかにて全国公開

関連記事
親友はブルース・リー! 国際派俳優の倉田保昭、新作映画のアイデアは「車で人を跳ね飛ばす」 (2012/04/05)
【コラム】節子、それタイタニックやない!