マイナビニュースの姉妹サイト「iPad iPhone Wire」の協力のもとお届けする、海上忍さんによる新型iPadの詳細レビュー。第3回で取り上げるのは、やや目立たないながらも新型iPadにおけるもっとも大きな変更点かもしれない、背面カメラの「iSightカメラ」。どんな場面でこのカメラが活きてくるのかを探ります。

※本記事は、2012年3月22日にiPad iPhone Wireに掲載された記事の転載です。第1回、第2回と合わせてお読みください。
●第1回 Retina Displayを実現させた『A5X』の実力
●第2回 Retina対応or非対応? アプリの互換性を考える

カメラ名は「iSightカメラ」に変更

リアカメラは一新され、その名も「iSightカメラ」となった

もともと「iSightカメラ」は、Apple製ノートブック/デスクトップ機のディスプレイに装着するカメラを意味したが、iPhone 4S以降はApple製デバイスの背面に取り付けられたカメラの呼称となった。一方、デバイス前面に取り付けられるカメラは「FaceTimeカメラ」と呼ばれるようになり、話者の顔を撮影するテレビ電話用カメラという位置付けだ。

新しいiPadもこのルールに習い、背面のカメラユニットを「iSightカメラ」と呼ぶ。もっとも、変更されたのは呼称だけではなく、ユニット自体も一新されている。


静止画の撮影は他のiOSデバイス同様、画面上のシャッターボタンをタップして撮影する。iOS 5.1からiPadではシャッターボタンが画面の右に表示されるようになっている

そのスペックは、同じく「iSightカメラ」を備えるiPhone 4Sに準じるものだ(下表)。5枚の精密なレンズを組み合わせる構造を採用、開口部は拡大されレンズの明るさを示すF値も2.4と、iPhone 4SのiSightカメラと共通している。色再現性を向上させるハイブリッド型赤外線フィルターについても、iPhone 4Sと同じだ。ただし静止画の画素数は500万であり、iPhone 4Sの800万に比べれば控えめなスペックとなっている。

動画撮影機能も、スペック面ではiPhone 4Sとほぼ同じと考えていい。解像度は1080p/30fpsと、アップスケールすることなくフルHDのテレビに全体を表示できる。同様に自動手ブレ補正機能も装備されているので、気分が悪くなるような再生時の画面の揺れも抑えられる。

iPad 2との比較でいえば、カメラユニットの機能差は歴然だ。画素数は92万から500万へと大幅に増加、960×720ピクセルだった静止画が2592×1936ピクセルになった。カメラユニットに内蔵のハイブリッド型赤外線フィルターにより、色再現性も向上している。1080p/30fpsの動画撮影機能も、720p/30fpsのiPad 2より断然有利だ。

表:iPad 2/iPhone 4Sとのカメラユニットの比較
新iPad iPad 2 iPhone 4S
背面 名称 iSightカメラ 特になし iSightカメラ
方式 裏面照射型CMOS 裏面照射型CMOS 裏面照射型CMOS
画素数 500万 92万 800万
静止画 2,592×1,936 960×720 3,264×2,448
ハイブリッド赤外線フィルタ ×
動画 1080p/30fps 720p/30fps 1080p/30fps
手ブレ補正 ×
前面 名称 FaceTimeカメラ 特になし FaceTimeカメラ
画素数 640×480 640×480 640×480

iSightカメラに合うシチュエーションは?

652gの薄型ボディを左手の握力のみで支えるのは難しく、手のひらに重みを預けるような構えになりがち。垂直に持とうとすると、30秒以上同じ構えを続けるのは厳しい

iSightカメラの採用によりスペックが大幅に向上、Retinaディスプレイに表示しても粗が目立たないレベルの写真を撮影可能になった新iPadだが、「場所」を選ぶという点に変わりはない。それは、タブレットデバイスゆえの宿命(?)だ。

まず、9.7インチ/652g(Wi-Fiモデル)という大きさは手に余る。最厚部は9.4mmあるにしても、新iPadを手にするとき掴む周縁部はカーブしているため、気を緩めると落としてしまいかねない。特に、シャッターを切るときが危険だ。ピントをあわせたあとは、片手で新iPadを支えつつもう片方の手で画面をタップすることになるので、どうしても不安定になる。この点は、デバイスの形状と重量からして根本的な解決は難しいだろう。

気になる雑誌や新聞の記事を撮影すれば、Retinaディスプレイの鮮明な画面で読める「にわか自炊の電子ブック」になる

では、どのような場面でiSightカメラの出番になるかだが、静止画の場合は「着席しながら撮影できる」ときなのではないだろうか。静止画を撮影する場合、どうしても手のひらに重みを預けるような構えになりがちだが、座りながらであればそれほど問題にはならないはず。思い付くシチュエーションとしては、各種の発表会や講義の場でスライドを撮影するとき、気になる雑誌のページを撮影し「にわか自炊の電子ブック」をつくるとき、といったところだ。

一方、動画の撮影はそれなりにこなせる。一度撮影を開始してしまえば、シャッターを切る必要がないため、両手で新iPadを支えることができるからだ。手ブレ補正機能もあるため、三脚を用意しなくても視聴に耐えうる動画を撮影できる。ただ、デバイスの形状からすると、静止画のときと同様、旅行や運動会といった屋外イベントでの使用は考えにくい。講義の内容を録画するなど、適しているのはやはり屋内での利用だろう。

画質については、静止画に関するかぎり、解像感の高さやノイズの少なさはiPhone 4Sのそれに近く、じゅうぶん鑑賞に耐えるレベル。しかし、その形状ゆえにコンパクトタイプのデジタルカメラやスマートフォンに比べると持ち運びにくく、カメラとして存分に取り回しできるというのはさすがに大げさだ。ありきたりの結論だが、屋内向け高画質メモ/スナップショット撮影カメラ、という位置付けがやはり妥当なのではないだろうか。

(提供:iPad iPhone Wire)

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