「すべて自前で作っているのがNECの強み」

続いて、「SmartVision」を支えるさまざまな技術が紹介された。この中ではさまざまな技術について言及されたが、「ハードウェアの入口から、アプリケーションの出口までを、すべて自前で作って」いる点をNECの強みとして挙げた。「何かやりたいと思うと、みんなが一斉に取りかかってさっさと取りかかってしまう」――それが「SmartVision」の開発体制であるという。なお、記者からは「SmartVision」のさまざまな機能を外部に提供、ないしは他社と協業する予定はないのかという質問があったが、それに対しては「『SmartVision』は機能を継ぎ足し継ぎ足しで開発しており、SDKなどの形で公開できるような整理された形になっていないため、現在は考えていない。ただ、個々の機能・技術については外部提供も考えられる」との回答だった。

「SmartVision」の機能・システム全体のイメージ

最初に紹介されたのはGUI。PCのテレビ機能からスタートしたため、まずはキーボード/マウスでいかに操作するかが主眼になったという。しかしそれがリモコンなどで気楽に操作できることが求められ、"10フィートUI"というインタフェースが作られた。PCらしさを活かすということでクロスメディアバーを活用しており、リモコンでも拡張性を持ったインタフェースを目指している。製品全体としては、リモコンでもキーボード/マウスでも使いやすいインタフェースを提供することを意識しているとのことだった。

拡張可能なクロスメディアバーによる"10フィートUI"を採用

ハードについては、"3波WWWチューナ"――すなわち、ダブル3波チューナー、ダブル長時間録画、ダブル携帯録画――の3つの機能を搭載していることを紹介。そしてチューナーの機能を引き出すRFアンプの制御が、高性能なチューナーの性能を発揮できるカギとなっているとした。

ハードウェアに関し手は、RFアンプの制御により、弱電界から強電界まで高い受信性能を発揮でき、チューナの性能を最大限に発揮できるという

代々のテレビボード。いちばん左がBS/CSデジタルに初対応した2001年当時のもので、次が地デジ対応を果たした2004年のもの。ぐっと小型になっている次のものが現行機に搭載されているものの1世代前のもので、いちばん右が現行のものだ

また"ワイヤレスTVデジタル"についても、他社に先駆けて製品化したことを強調。他社製品と比較し、5GHz帯を使用することで安定して映像を表示できるといいながらも、一方で2.4GHz帯を使用するシチュエーションにおいてもトランスコード機能を利用することにより、安定した映像伝送が可能であるとのことだった。

ノートPCにおけるテレビ視聴で煩雑さを大幅に低減したワイヤレスTVデジタル

「倍速/4倍速といったテレビに比べればやることはまだ残っている」

次はメディア処理技術についてということで、まず"きこえる変速再生"の詳細について解説された。この機能は、音声のピッチを変えずに再生速度を速く/遅くする技術。2010年に初めて「SmartVision」に搭載された技術。その時点で他社のPC/レコーダーにも同様の機能が搭載されていたが、クオリティの面で満足いくものではなかったため、この技術を磨くことが差別化のポイントになりうるという考えで取り組んだもの。また、語学学習など向けに音声では提供されていたスロー再生についても、映像とともに実現することがこだわりのポイントのひとつであったという。

そのキーとして、音声の時間軸を変動させる圧縮伸張技術が必要となるが、NEC中央研究所独自開発の技術が搭載されている。その基本アルゴリズムは、基本周期(=ピッチ)を検出して、間引き/補正処理を行うとともに滑らかさを失わないよう重複加算処理を行うことだということで、さらに映像とのズレを生じさせないための同期技術も重要。これらにより、他社製品を上回る使い勝手・品位の変速再生が実現できたとする。

"きこえる変速再生"では、おまけレベルではなく、実際に使える機能・品質を目指した。そのキーとなっているのが独自開発の時間軸圧縮伸張技術だ

また、デコーダについてはもうひとつ、描画エンジンについても解説された。過去に同社ではH.264の再生・表示においてマイクロソフト製のDirect3D描画モジュールに内蔵される描画エンジンを使用していたとのことだが、この部分をNECの独自エンジンに置き換えたのだという。この取り組みにより、ディスプレイの高解像度化によるデータ量の増大、、CPU・グラフィックスが非同期制御であることから怒る同期タイミングの問題により映像のカクつきの問題を解決した。この独自エンジンは内部呼称を"NECプレゼンタ"といい、描画バッファから表示バッファへのコピーを省いてメモリポインタを利用することによりコピー処理を低減、さらにディスプレイの垂直同期信号に合わせて描画タイミングを生成することで非同期制御からくるカクつきも解消。結果、低性能のPCでもスムーズなH.264の再生を実現している。

描画エンジンにおけるポイントは、メモリポインタ制御を行うことでバッファ間のコピーを省いた「FlipEX」方式を採用した点にある。これにより、CPU・メモリに高い要求をしないですむようになった

画質についてはそれだけでなく、専用チップを使った色補正やフィルタによる補正などを利用して、高画質化を図っているとのこと。ただ画質については、「やっとテレビに追いついたところ。高画質な倍速/4倍速といった製品に比べればやることがまだ残っている」と、テレビを凌駕するとまではいっていないことを認めながらも、「サイズが小さいからということもあるが、画面についてはいい線にいっているのではないか」とした。

専用チップ"彩りプラス"で最適な色再現を行う

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