ものづくり系女子集団「CAD48+」はこうして生まれた
――そもそもどのようないきさつで、ものづくり系女子をスタートしたのですか。
神田「草食系男子とかが浸透した時期に周囲に『神田さんはものづくり系女子だよね』と言われたことがあったのですが、周囲に3Dプリントが好きでものづくりが好きな女子というのがいなかったんです。そこで『自分と似たような人を集めて女子会をしたい!』と思ってfacebookで自分と似たような人を集めたんです。AKB48のパロディでCADからとってCAD48と冗談で呼んでいました。何人か集まれば良いと思っていたのですが、1週間もしないうちに、50人以上のメンバーが集まったんです」
――神田さん以外のメンバーには、どのような方がいらっしゃるのでしょうか。
神田「広い意味でのものづくり系女子が参加しています。Webデザイナーやイラストレーターもいれば、建築エンジニアやジュエリーデザイナー、美大生などもいます」
――ものづくり系女子では、具体的にどのような活動をしていくのでしょうか。
神田「まだ動き出したばかりなのですが、まずは、ものづくりを身近に感じてもらうためのPR的な部分を勝手に女子でやってしまおうという感じですね。認知やPRの場として、セミナーやワークショックなどを展開できたらと思っています。また、メンバーの職種が多岐に渡っているので、制作にしても、企画~デザイン~金型制作~出力と、最終的なアウトプットまで出来てしまうんです。今年は『何かひとつはみんなで物を作りたい』と話しています」
――女子会からスタートして、将来的にはビジネスに発展するかもしれませんね。
神田「夢なのですが、将来的にはみんなで集まれるような工房を持って、そこでひとつの物を作れたら嬉しいです。そこまでやった人はいないと思うので、もし実現できたら素敵だと思います。ものづくり系女子の話が出てから、『うちの工作機械使っていいよ』といってくださる方もいたりして、本当にありがたいです」
ものづくり系女子としての女子力とは
――正直な話、皆さんが女性だからこそ、うまく話が進んでるという部分もありますよね。これが男性同士の集まりだったら、なかなか簡単に意気投合したり、協力者も現れないと思うのですが。
神田「そうですね。ものづくりに関して、わからない事を年長者や知識ある方に素直に訊ねたり、協力をお願いできるのも、ものづくり系女子としての女子力だと思います」
――男性だと、「わからない事を訊くのが恥ずかしい」みたいな雰囲気もありますからね。
神田「私は女子としてものづくり業界に飛び込んだ時点で、いろいろな人に育てられてきました。それで感じたことなのですが、知識や技術をシェアしたりプレゼントしたいという優しい気持ちは、男女問わずみなさん持っていると思っています。そこをただ教えてもらうだけではなく、全力で喜ぶというのも女子力だと思います」
――製品開発にしても、ものづくり系女子ならではの、製品に対する見方などもできそうですね。
神田「例えば女の子はかわいい製品が好きだと思うのですが、製品にいらないPL(パーティングライン)が入っているだけで、『かわいくない」と感じてしまったりすることもあります。私の場合そこで、『その不要なラインをなくすためには、金型の拘った抜きのテクニックが必要だよね』とか、『割り面をもう少し考えないと』とかまで思ってしまうんです(笑)。本当にかわいい製品は、ただデザインがかわいいというだけでなく、そういう部分も含めてかわいいといわれていると思うんです。そういったことも、ものづくり系女子の活動では発信していきたいです。かわいい製品も、ものづくり系女子というプラットフォームで、また違う視点が加わり、新しいわかりやすい物に変換されるかもしれないですから」
このインタビュー直後から、「CAD48+」の制服となるオリジナル作業着をデザイン/制作する企画が企業から持ち込まれるなど、早くも具体的な活動を開始しているものづくり系女子たち。これからも彼女たちの活動に注目していきたい。なおマイナビの無料電子雑誌「Creative Now」では、「ものづくり系女子が見るクリエイティブ・スイッチ」という取材コラムも連載中だ。
撮影:石井健