NVIDIAは、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2011」で、クアッドコアCPUを搭載した「Tegra 3」をアピールしていた。同社ブースで、Director of Product Marketing, TegraのMatt Wuebbling氏にTegra 3のメリットについて聞いたので紹介しよう。
Tegra 3は、「4+1」と呼ばれる4つのコアに1つのコアをさらにプラスした構造が最大の特徴だ。これは、通常の作業は4つのコアが分担して行い、プラスした1つのコアは、低消費電力、低速度の動作で、バッテリ駆動時間や発熱などの問題をクリアするために使われる。4つのコアを持つプロセッサは1.5GHz駆動だが、「+1」のコンパニオンコアは最大500MHz駆動となる。
今回のMWCでは、Tegra 3を採用した製品として5機種のスマートフォンが登場。HTCが初めてTegraを採用した「HTC One X」、LGの「Optimus 4X HD」、ZTEの「ZTE Era」、中国Tianyuの「K-Touch V8」の4機種。これに、富士通の開発中のスマートフォンが加わる。
「昨年はTegra 2採用デバイスが2機種しかなかった」とWuebbling氏は振り返る。それに対し、今回のTegra 3では5機種のスマートフォンがすでに発表されており、「広くOEMに認められている」とアピールする。
メーカーが認めたのは、パフォーマンスの高さと低消費電力だという。クアッドコアによって高い性能が必要なときは一瞬で処理を終え、それほど性能が不要な場合は、1つ、2つと利用するコアを絞るといった動作や、コンパニオンコアに任せて大電力のクアッドコアは休ませるといった動作によって、全体の消費電力を削減する仕組みだ。
Wuebbling氏は「1080pのハイプロファイルのHDビデオの再生でもTegra 2に対して61%の省電力を実現した」とコメント。「競合のプロセッサに比べても低消費電力だ」と強調する。
Tegra 3では、現時点でモデム部分はルネサスやGCTと共同で作り、プロセッサとは別に搭載する形になる。また、LTE対応ベースバンドチップ「Icera 410 LTE」の開発もしている。これは同社が買収したIceraによるモデムで、同社ブースで展示されており、LTEの低遅延を生かしたオンラインゲームの対戦ゲームデモが行われていた。
これは、Tegra 3を搭載してLTEをサポートすることが可能になっているということで、Wuebbling氏は、2012年後半にもTegra 3とIceraのLTEモデムを搭載した製品がスマートフォンで登場してくると説明する。なお、LTEモデム自体は自由に選択が可能で、実際、富士通ブースで展示されていたTegra 3搭載スマートフォンは、独自のLTEモデムを搭載していた。
Wuebbling氏は、Androidベースの端末だけでなく、Windows 8 on ARM(WOA)も視野に入れており、スマートフォン、タブレット、ノートタイプといった幅広い製品へTegra 3を展開していきたい考えだ。
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