アクロニスは、世界18カ国を対象としたバックアップとリカバリに関する調査「アクロニス世界障害復旧評価指標:2012」を発表している。レポートは同社Webサイトからダウンロードできる。
レポートの概要
「アクロニス世界障害復旧評価指標:2012」は、世界18カ国のIT管理者を対象としたバックアップとリカバリに関する調査の結果をまとめたもので、「Acronis True Image」などのバックアップソフトから仮想環境やクラウド環境を使ったバックアップ/復元ソリューションまでを提供する同社が2011年9月から10月に調査を実施したものである。
指標は世界の企業のバックアップと障害復旧(DR)に関する信頼度と能力を国別にランク付けするもので、今回で2回目となる。対象国は前回のオーストラリア、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、オランダ、ノルウェー、シンガポール、スウェーデン、スイス、英国、米国に加えて新たに、ブラジル、ロシア、インド、中国、サウジアラビアの計18カ国となり、対象のIT担当者は約6,000人にのぼる。
調査は同社の依頼により調査会社Ponemon Instituteによって行われており、バックアップと障害復旧に関する準備、能力、実践に関する質問を行いそれに対する回答(「強く同意する」「同意する」「どちらともいえない」「同意できない」)に付けられた点数をもとに指標化している。
改めて問われるバックアップとディザスタリカバリ
今回のレポートでは、バックアップとディザスタリカバリについて取り上げている。改めて、その意義について考えてみたい。バックアップについては、ご存じの方も多いであろう。マシンやHDD単位、ファイルやフォルダ単位でデータを複製し、いつでも復旧(リカバリ)可能な状態を保つことである。ディザスタリカバリ(disaster recovery)は、それをもう一歩推し進めたものである。各種災害などによる被害からのシステム復旧がメインであるが、さらに被害を最小限の抑えるための予防措置も含んでいる。想定する災害の範囲は、非常に幅広い。火災や風水害、地震などの自然災害や不正侵入、テロなどの人為的なものも対象となる。もちろん、2011年の東日本大震災のような自然災害に対しての備えなども含まれる。
さて、重要なデータ保護について、考えてみよう。一般的には、データ消失などに備え、外部メディアへのバックアップがある。さらに普段の利用においてはRAIDシステムなどを導入し、データの冗長化が図られることもあるだろう。しかし、地震などのように、建物そのものが被災した場合を考えてみてほしい。PC本体はもちろんであるが、バックアップした外部メディアも同時に消失する可能性も否定できない。このような事態に対応するのがディザスタリカバリである。破損したHDDやメディアから特殊な手段でデータ読み出す、さらに、地理的に離れた場所にデータのコピーを保存するといった具体策が採られる。
2011年は自然災害や政治経済的な不安が多く、「バックアップとディザスタリカバリを包括的に運用するリソースとテクノロジを有している」と回答した企業が2倍に増えているなど、対前年比で14%の上昇があったこと。特にノルウェー、スウェーデン、オーストリアの信頼度が約30%の上昇を見せたこと、今回新たに加えられた、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)とサウジアラビアの5カ国の中でトップ10にランクインしたのはIT化が進むインドであった点を同社ではハイライトとして挙げている。
日本における動向分析
2011年の東日本大震災は、企業の動向に大きな変化を与えたといえる。その結果が、本レポートにも現れている。
日本企業のバックアップ、リカバリへの信用度は、前年同様3位。東日本大震災を経験してなお、高い信頼度を維持している。実際に、大震災後バックアップ、ディザスタリカバリでどのような変化が起きたかという問いに対しては、以下のような回答が寄せられた。
- バックアップのテストをさらに定期的に実施(64%)
- 事業継続プランを導入(57%)
- ディザスタリカバリ、バックアップの作業を行えるスタッフのトレーニングをより多く実施(53%)
一方、中小・中堅企業におけるバックアップと障害復旧運用の予算は依然厳しく、IT予算全体に対し6%にとどまり、前年よりも1%低くなる結果となった。また、調査した企業のうち、40%が「バックアップ、ディザスタリカバリの関するIT予算がない」と回答している。実際、バックアップ、リカバリを実施する際の一番の懸念点は「ITリソースの不足」を指摘する声も多い(23%)。日本の中小・中堅企業では、年間67TBもの新たなデータが生成されている。これは、世界で最も多い数字となった。そうした大量データが、バックアップされているという事実が特徴として浮かび上がったことも、興味深いと指摘している。詳細は、ぜひレポートを参照していただきたい。