携帯キャリアの米Sprint Nextelは2月8日(現地時間)、2011年第4四半期(10-12月期)決算を発表した。売上は87億2200万ドルで前年同期比5%の増加、純利益(損失)は13億300万ドル。赤字の要因は今年半ばに本格スタートするLTEサービスの投資負担に加え、昨秋取り扱いを開始したiPhone販売の奨励金負担にある。アナリスト予測より赤字幅が縮小した理由として、iPhone販売が予想ほどに伸びなかったことが挙げられているほどだ。
Sprintによれば、プリペイドサービス(MVNOを含む)を含めた同四半期の新規契約者数は160万件で、2005年以来最高の水準だという。このうち53万9,000件がSprint自体のネットワークを利用するポストペイド契約者となる。またiPhone 4Sが発表された昨年2011年10月から、SprintでもiPhoneの取り扱いをスタートしており、この四半期における販売台数はトータルで180万台。そしてそのうちの40%が新規契約だという。つまり、iPhoneの取り扱い開始は同社にとって一定の新規顧客獲得効果をもたらしたことになる。
一方で前述のように、新規設備負担やiPhoneなどの端末販売における奨励金負担が業績の重石となっている傾向が出てきている。例えばReutersの報道によれば、同四半期の損失幅はThomson Reutersのアナリストサーベイで1株あたり利益(EPS)がマイナス37セントだとみられていたものが、マイナス35セントに留まっている。これは同四半期のiPhone販売台数が200万台を突破するとの予想があったためで、iPhone販売台数が予想を下回ったことが、皮肉にもiPhone販売増に伴うコスト負担の軽減につながったことが理由とみられている。なおBTIGのアナリストWalter Piecyk氏によれば、AT&TとVerizon Wirelessを含む米国3大キャリアのうち、iPhoneの販売台数で予測を下回ったのはSprintだけだったという。
なぜiPhone販売増で携帯キャリアの赤字幅が拡大するかについては以前のレポートで解説したが、「2年縛り」等を条件に行われる端末の割引販売幅が、他の端末に比べてiPhoneは高く、これが負担増の原因につながっているという。Sprintでは同四半期にARPU(1契約あたりの売上)が3.69ドル上昇したと説明しており、iPhoneを含むスマートフォンの増加が一定の収益効果をもたらしているのは事実だが、短期的なコスト負担が非常に大きいことも明確になりつつあるといえそうだ。