富士通は8日、シンクライアントの新グローバルブランド「FUTRO」シリーズの国内第1弾となる「FUTRO S900」の販売開始を発表。これに合わせて同社は発表会を開催し、新ブランド投入の背景などについて説明した。

富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループ長 大谷信雄氏

「富士通は15年ほど前からシンクライアントに取り組んできた。当時から『これからはシンクライアント化が進む』といわれ続けてきたが、非常に限定的な市場に限られてきたのは事実」と富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループ長 大谷信雄氏は、シンクライアントの普及が当初期待されたほど、進んでいない現状を認める。

その一方で、「モバイル環境でも高速で安定したネットワークの広がり」「サーバーの高性能化と高速化」「クラウド技術の進化」といった技術面の進化や「情報漏えいなどの問題」「災害時の事業継続」といった社会的な観点などシンクライアントを巡る環境は変化してきているという。

「これらの環境の変化を考え、『シンクライアントの重要性が増していくだろう』と改めて戦略を練り直し、より商品を強化して、新しいブランドを立ち上げた」(大谷氏)と新ブランド投入の背景を語る。

「FUTRO」シリーズはドイツに本社を置く富士通テクノロジー・ソリューションズと共同で開発。グローバルで販売とサポートを行う。

今回発表された「FUTRO S900」は、Windows Embedded Standarad 7採用のデスクトップ型端末。DVI-IとDisplayPortを搭載し、2台のディスプレイを使用できるマルチモニタに対応するほか、手のひら静脈認証や指紋認証といった生体認証やポートの使用制限などの情報漏えいへの対策が可能だ。

「FUTRO S900」。ディスプレインの背面のスペースを利用しての設置も可能。こうした省スペースに関するニーズも高まっているという

「富士通はクライアントからサーバ、プラットホームなどすべての階層において、自分たちで製品の開発に取り組む垂直統合型のモデルをとっている。その中でユビキタスフロントの部分は、実際にお客さまが触れる部分として非常に重要な役割を担っている」と富士通 執行役員 パーソナルビジネス本部長 齋藤邦彰氏は、ITシステムにおけるクライアント部分の重要性を語る。

富士通 執行役員 パーソナルビジネス本部長 齋藤邦彰氏

既存アプリケーションのクラウド環境への移行が進むことで、これまでPCで行ってきた業務をシンクライアントでも対応できるケースが増え、さらに情報を参照するといった部分ではタブレットやストレートPCが活用されることが予想される。サービスの受け手としてさまざまな製品が利用される可能性がある。

「『ARROWS Tab』や『STYLISTIC』のような情報参照中心のWeb型端末の展開、そしてシンクライアントの強化で、お客様のあらゆるニーズに対応していく」(齋藤氏)という。

サーバー製品からクライアント製品、付随するサービスまで手がける「フルスタック」の取り組みを同社の持つ強みとして、すでにシンクライアントの導入が進み、需要の高いEMEA(Europe, the Middle East and Africa)市場を中心にグローバルで展開していくという。同社では2012年度末でグローバルでのPC販売台数の3~4%の販売比率を目指すとしている。

垂直統合で製品やサービスを提供

企業内におけるクライアントの利用動向

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