Mozillaは、1月31日にFirefoxの新バージョン「10」をリリースした。本稿では、インストールからアドオンまでを紹介したい。
Firefox 10のインストール
すでにFirefox 9がインストール済みならば、Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開く。更新が自動的に開始されるので、[更新を適用]をクリックする(図1)。
初めてFirefox 10をインストールする場合は、Firefox 10のWebページからインストーラをダウンロードする(図2)。
[無料ダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図3)。
画面の指示に従い、インストールを進めよう。特に、難しいことはないであろう。アップデートから再起動したFirefox 10は図4となる。
Firefox 10の新機能
新機能であるが、ユーザー向けと開発者向けに大別できる。まずは、ユーザー向けの新機能から見ていこう。Firefox 9までは、アドオンのバージョン互換情報が更新されていないために、特定のアドオンが動作しないことがあった。この解決については、Compatibility Reporterアドオンで対応することができた(こちらを参照)。Firefox 10では、実際に問題が生じる場合においてのみ、互換性がないと判断する。これにより、かなりのアドオンが問題なく動作することになる。
次に「進む」ボタンが無効な場合には、表示されなくなった。たとえば起動時などが該当する(図4を参照)。「戻る」ボタンを使った場合などは、右側にスライド表示される(図5)。
MozillaのUI調査によれば、「進む」ボタンを使う頻度は「戻る」と比べるとかなり低い。これまでもサイズを小さくするなどしてきたが、さらに表示しないというスタイルに変更した。これにより、ロケーションバーなどをより広く使える。次の新機能は、HTML5ビデオに関するものだ。ビデオを右クリックすると、図6のようなメニューが表示される。
[スナップショットを保存]では、その時のフレームを静止画で保存する。[統計情報を表示]では、動画サイズ、音声チャンネル数、サンプルレート、フレーム数などが表示される。Firefox Syncも変更された。実際に、新規アカウントを作成しようとすると、図7のようになる。
これまでは、この後にもいくつかの画面が用意されていた。今回は、この一画面に必要事項を入力し、[次へ]をクリックすると完了する。次いで、開発者向けの新機能であるが、以下の通りである。
- 開発者ツールにインスペクタが追加
- CSS 3D Transformに対応
- WebGL でアンチエイリアスをサポート
- フルスクリーンAPIに対応
- mouseenter/mouseleaveイベントに対応
- dataURLでもWorkerを生成
- Page Visibility APIに対応
一般ユーザーには、あまり縁のない機能かもしれない。図8は新たに搭載されたインスペクタである。Firebugアドオンと似たような機能を持っている。
メニューの[Web開発]→[調査]、もしくは対象要素から、右クリックで[要素を調査]を選択する。
延長サポート版の提供を開始
今回のバージョン10から、延長サポート版(ESR:Extend Support Release)が提供されるようになった。その概略を説明しよう。バージョン5以降、高速リリースが採用され、6週間ごとに新バージョンがリリースされるようになった。しかし、法人や団体などでは、集中管理を行うところも少なくない。そのような環境では、高速リリースに対応しきれないという声もあり、旧バージョンとなる3.6.xが提供されてきた。実際には、図11のように提供される。
見てわかるように、バージョン10のリリースと同時にESR 10がリリースされる。通常版の6週間ごとにバージョンアップと同時に、ESR 10のセキュリティ問題と安定性に関する修正が行われる予定である。新機能の追加やアドオン互換性の変更は行われない。通常版のバージョンアップの8回分が、マイナーバージョンアップとして行われる。つまり54週間、約1年に1回のバージョンアップとなるわけだ。ESR 10の次バージョン(ESR 17)は、2012年11月20日にリリースの予定である。そこから、約12週間の平行期間があるので、移行を進めていくという流れになる。ちなみに、その次は、通常版のバージョン24に対応する。
Mozillaでは、法人向けとしているが、一般ユーザーでも利用する可能性がある。これまでも、アドオンの互換性などは、100%近いとしてきたが、やはり動作しないものは動作しない。特に筆者が問題と感じているのが、セキュリティ対策ソフトである。多くのセキュリティ対策ソフトは、あらかじめWebサイトの安全性を評価し、検索結果に安全かどうかを表示する機能を提供する。
未然に危険なWebサイトを閲覧しないという、非常に重要な防御策だ。この機能の多くが、アドオンなどで提供されており、Firefoxのバージョンによって動作しないのである。バージョンアップによってセキュリティは保たれるかもしれないが、一方で、重要な防御策を失うことになりかねない。セキュリティベンダーの速やか対応も望まれるが、「バージョンアップをしない」という好ましくない対応をしてしまうケースも生じるだろう。そのようなユーザーがESRで対応するといったことも十分考えられる。一般ユーザー以上に、企業内などではESRが必須となるであろう。