現在、中国では同国内の3大キャリアのうち「China Unicom」のみが公式にiPhoneを販売し、同国での独占販売キャリアとなっている。一方で、ライバルのChina Telecom、そして世界最大の携帯キャリアであるChina MobileでのiPhone販売開始の噂がここ最近になり広まっており、もしこれが実現すれば年間販売台数は一気に倍以上に拡大するとみられる。この中国でのiPhone拡販戦略について、アナリストの発表したレポートが話題になっている。
大きな潜在ユーザー数が注目の的
この件に関するレポートを発表したのは米Morgan StanleyのアナリストKaty Huberty氏で、詳細についてはAll Things DigitalやApple Insiderの記事が詳しい。
中国でのiPhone販売動向に注目が集まる理由は、その潜在性の高さに他ならない。詳細については以前の「Appleが中国でのiPhone 4S販売を発表 - 2012年の注目は中国キャリアの動向」というレポートを参考にしてほしい。現在の中国市場における携帯電話はスマートフォンではないフィーチャーフォンやローエンド端末が中心で、ARPUが高いハイエンドユーザーの比率は少なく、ネットワークも2Gが中心で3Gの普及率は低い。だが現在、スマートフォンユーザーが急増し、4Gへの移行プランが明確化されたことで急速に日米欧のような通信環境が整いつつあり、この成長余地がそのままAppleにとってのビジネスチャンスにつながっている。
Huberty氏が発表したレポートのポイントもその点にあり、China TelecomとChina MobileがiPhoneの取り扱いを開始するとみられる時期、そしてそのインパクトについてまとめている。
iPhoneの現在のシェアはハイエンドユーザーの10%程度
例えば現在、中国ではハイエンドユーザー(月の支払額が100人民元でおよそ16米ドル)は1億5,000万ほどおり、Appleはそのわずか10%程度のシェアを占めるに過ぎないという。先進国でのスマートフォン全体におけるiPhoneユーザーの比率が3割程度なことを考えれば、まだ低い水準だ。その内訳を見ると、現在唯一のiPhone公式キャリアであるChina Unicomで1,500万ユーザーのうちの20%をiPhoneユーザーが占めている。そして公式キャリアではないChina Telecomで1,500万ユーザーのうちの7%、China Mobileで1億2,000万ユーザーのうちの8%がiPhoneユーザーなのだという。
公式キャリア以外にもiPhoneユーザーがいるのを奇妙に感じるかもしれないが、何らかの方法で端末を入手して別のキャリアで利用しているユーザーがそれだけいるということだ。なお、China TelecomのCDMA2000、China MobileのTD-SCDMA方式を現在のiPhoneはサポートしていないため、両キャリアのiPhoneユーザーは接続に低速の2Gを利用していることになる。これらのキャリアでは2GサービスをGSMベースで提供しているため、低速ながら最低限のサービスは利用できるわけだ。
次世代iPhoneではTD-LTE iPhoneが世界中に
最大の争点はChina TelecomとChina MobileがいつiPhoneの取り扱いを開始するかだ。先日の決算の中で米Apple CEOのTim Cook氏はChina Telecomでの認証がすでに通ったことを認めており、数ヶ月内にも取り扱い開始に関するアナウンスが行えるという見方を公表している。China Dailyによれば、この発表時期は2月または3月中になる可能性が高いという。
そして6億ユーザーを抱えるChina Mobileについてだが、Huberty氏によればAppleは次期iPhoneにおいて同キャリアの第4世代ネットワーク方式であるTD-LTEをサポートし、2012年末または2013年の早いタイミングにも販売を開始する可能性が高いという。これにより、現在中国で1,000万台規模の台数のiPhone端末が、2013年には2,600~4,000万台規模にまで急拡大する可能性があると同氏は予測している。このChina Mobileへの展開が完了すると、ハイエンドユーザーにおけるiPhoneのシェアは現行の10%から24%程度にまで上昇する。
もう1つ興味深いのは、TD-LTEを展開するキャリアはChina Mobileだけでなく、世界各地で同様の計画があるということ。日本ではソフトバンクが旧ウィルコムのネットワーク上に「AXGP」の名称でサービス展開を発表している。もしChina Mobile向けにTD-LTE端末がリリースされるのであれば、こうした国々でのTD-LTE iPhoneリリースも期待できるかもしれない。