米MicrosoftがWindows 8のシステム要求仕様に関するドキュメントを公開しており、新OSに関するシステム全体像がおぼろげながら見えつつある。タブレットPCにおけるタッチスクリーンの要求項目が細かいことは以前から知られていたが、今回はそれに加えて最低でも1,366×768ドットの解像度、5つの物理ボタンの標準搭載、加速度/ジャイロ/磁気センサーの搭載、感光センサーの採用が必須など、Windows 8タブレットの要求スペックが比較的高いものであることがわかった。
この件はXbit Labsなどが報じており、詳細ドキュメントは「Windows 8 Hardware Certification Requirements」のページからダウンロード可能だ。
例えばWindows 8のタブレットでは「Charm」と呼ばれる新メニューや実行中の他のアプリを呼び出すために、「"画面端"のタッチ領域から中心部に向かって指をなぞる」という操作を行う必要がある。そのため、タッチ操作時には画面端の"ドット"に指を触れる必要があるのだが、「ベゼル(Bezel)」と呼ばれるディスプレイの枠にあたる部分が画面ぎりぎりまで張り出していると、この操作を行えなくなる。Microsoftのガイドラインでは、タブレットの画面全体をフラットな形状にし、このタッチ領域を十分に確保することが必須条件とされている(iPadやiPhoneのような全面ガラスデザインを想像すればいいだろう)。
また今回公開された文書では、この"ベゼル"部分(タッチできないデッドスペース)の幅を26mm以内に収めるよう記されており、その理由として「小さな手の人でも(親指で)操作できる十分なサイズを実現する」ことを挙げている。例として挙げられているのは、4つのベゼルの幅をすべて20mmで統一するデザインだ。なお例外は「タブレット」とクラムシェル型の「ノートPC」形態の両方に変形できる「コンバーチブルタブレット」で、この種の製品はヒンジに隣接するベゼル領域の幅を最大26~45mmの間に設定可能だという。
このほかハードウェアデザインの要求事項として、「電源」「回転ロック」「Windowsボタン」「ボリュームアップ/ダウン」の5つ(または4つ)の物理ボタンを搭載することを必須としている。これらボタンはMicrosoftがデフォルトで設定している機能に必ず対応するものとし、カスタマイズで独自の動作を挟むことは不可と定めている。このボタンデザインはそのままiPhoneやiPadのそれに対応しており、4つの基本ボタンを備えつつ、Windowsキーを別途用意することで「ボタンを押せば必ずメニューに戻れる」というUIガイドを徹底させていることがわかる。
そして注目はハードウェアの最低構成要素だ。ストレージ領域の空きが最低10GB、UEFI対応、WLANの搭載、Bluetooth 4.0+LE、Direct 3D 10 Feature Level 9_3 with WDDM 1.2、タッチサポート、720pカメラ、ACPI 3.0b以上、感光センサー、磁気センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、オーディオ外部出力、スピーカー、USB 2.0×1までが必須事項となっている。A-GPSについては、ネットワーク機能としてモバイルブロードバンドを実装する場合には必須としている。ただしモバイルブロードバンドがWiMAXのみの実装の場合、GPSは必須ではない。あくまで3GとLTEのコンビネーションに限定されるようだ。以上はx64/x86/ARMのすべてのWindows 8タブレットに適用される。
ここで興味深いのは"タブレットではない"Windows 8クライアントの場合だ。ストレージとGPUの要求スペックは同じで、UEFI 2.3.1以上、イーサネットまたはWi-Fiだけとなっている。1080pの動画がスムーズに再生できる性能を持ち、1,024×768のスクリーン解像度を持つことが最低条件とされている。1,024×768は「Metroスタイル」のアプリが動く最低条件だが、一方でSnap Viewが使えないなど機能的な制限があり、あくまで最低条件だ。つまりタブレットには「満足のいくユーザー体験をできるためのハードル」を引き上げておき、それ以外のデバイスについてはアプリが過不足なく動作するための必要最低限の条件を示しているに過ぎない。今回特に興味深いのは搭載必須とされたセンサーの数々と細かいデザイン規定で、MicrosoftがWindows 8でどのようなタブレット体験を目指しているのかがおぼろげながらうかがえる。