CESのプレビューイベント「CES Unveiled」の会場で、Lenovoが「ThinkPad T430u」と「ThinkPad X1 Hybrid」の展示を行っていた。前者はThinkPadブランド初のUltrabookで、後者はAndroid OSを切り替え起動できるWindowsノートだ。CES開幕後に詳細がわかれば続報をお届けしたいが、まずはUnveiledで取材できた両モデルの情報をレポートしておきたい。
ThinkPad T430u
ハイスペックなビジネス向けの14型Ultrabookで、ThinkPadではじめてのUltrabook、それもTシリーズで登場予定なのが「ThinkPad T430u」だ。今回Unveiledではモックアップのみの展示となっているが、おおまかなディテールは展示スタッフから取材することができた。リリース時期は2012年の第3四半期とされており、ずいぶん先だが、展示スタッフによればT430uは現行のUltrabookプラットフォーム搭載ではなく、「次世代のIntelプラットフォーム」を搭載するUltrabookであるとの説明があった。これはおそらくは現行Sandy Bridgeの次世代にあたるアーキテクチャ、「Ivy Bridge」世代のUltrabook版プラットフォームのことだと考えられる。
現行T420系では、通常のT4xx"無印"と薄型軽量のT4xx"s"のラインナップがあるなか、次世代と見られるT430系で、今回出展の"u"を含めた各モデルのポジショニングがどうなるかはわからないが、予定価格帯は849ドルと比較的安価に設定されるようだ。またT430uは薄型軽量と、一見"s"に近いボディを実現しているものの(重量はおよそ1.8kg以下、厚さは21mm程度と"s"に近い)、細かくは以下で説明するが現行のTシリーズとは毛色の異なる特徴をいくつか備えており、T430世代で"u"以外のモデルが伝統的なThinkPadのスタイルを継承するのであれば、T430uはTシリーズらしからぬ特別なモデルとして位置づけられると予想される。
最も目を引く特徴は本体底面の全面を1枚で覆うカバーで、これはラッチのスライドのみで開けることができる。カバーを開けると内部基板にそのままアクセスできるようになっているそうで(展示はモックのため実際の開閉は確認できず)、ツールレスでメモリやストレージ、Mini PCIeカードを交換できる。なお、バッテリはこのカバー内に搭載されているが、ユーザーが自らの手で交換できるような構造にはならないそうで、そこにバッテリがあるのが「見えるだけ」という。朗報なのはストレージの搭載スペースで、薄型ボディながら一般的な2.5型9.5mm厚が使える空間が確保されており、大容量HDD(同社オプションでは最大1TBとの説明)の搭載も容易に実施できる。
さらに、キーボードがThinkPad X1やIdeaPadのようなアイランド式になっており、ThinkPad伝統の7列配列キーボードではなくなっているのも、現行シリーズとの大きな違いだ。細かいところだと、ディスプレイ開閉がラッチレスになっていたり、ディスプレイ解像度が1366×768までであったりもする。ただ、現行TシリーズのようにNVIDIA製のディスクリートGPUを内蔵GPUとハイブリッド搭載することも可能であり、かなりハイエンドThinkPad寄りのスペックも備えることになる。
ThinkPad X1 Hybrid
AndroidとWindowsの"ハイブリッド"をうたう13.3型ノートPCが「ThinkPad X1 Hybrid」で、こちらは動作試作機の展示となっていた。同じく13.3型のノートPC「ThinkPad X1」をベースとした製品だ。内部にARMベースのプロセッサと、Intel製Core iプロセッサを搭載したハードウェアプラットフォームを備えており、1台のノートPCでありながら、それぞれのプラットフォーム上でWindows OSとAndroid OSを使い分けることができる。
従来製品である「ThinkPad X1」は、薄型軽量かつ堅牢性が特徴のWindowsノートだが、「ThinkPad X1 Hybrid」は、その特徴をそのままに、さらにARMベースのAndroidシステムを追加している。Windows OSの起動中でも、「Instant Media Mode」と呼ばれるAndroid OS環境を動作させることができ、双方のOSはそれぞれのハードウェアプラットフォーム上でそのまま動くことから、動作も軽快だ。展示中のデモ機では、Windows 7とAndroid OS 2.3系が動作していた。
Windows 7起動中に、「Instant Media Mode」のポップアップを呼び出して項目をクリックすれば、そのままシームレスにAndroid環境が起動する。キーボードやタッチパッドもそのまま使える |
ハードウェアをもう少しだけ説明しておくと、Qualcomm製デュアルコアのSnapdragonや、ストレージとして16GBフラッシュなどもオンボードで載せたmini PCI Express拡張カード状の小型基板が、Android用の独立したハードウェアプラットフォームを担っており、これがIntelプラットフォームのマザーボード上のmini PCI Expressスロットに搭載されている。見た目だけなら、Windowsノートに小さな拡張カードが追加されているようにしか見えない。
AndroidモードにあたるInstant Media Modeでは、ブラウジングやメールなどを利用できるほか、メディア視聴など一般的なAndroidでできることはほとんど可能(Android Marketには対応しないそうだ)。ソフトウェアランチャ類など同社のAndroidタブレット「Ideapad Tablet」と同様の独自の機能も備えているが、OSのインタフェース系もAndroidに近い。また、AndroidとWindowsは独立して動作し、シームレスな切り替えもできるほか、Windows上からAndroid上のストレージにアクセスしてファイル転送できるなど(これは恐らく通常のマスストレージとして認識していると思われる)、一部はハードウェア間で連係して利用することもできていた。
ただ、単に「両方使える」というだけだと、「Android側は普段、どうな使い道があるのか」と、メリットがわかりづらい。が、ここで最大のポイントとなるのがバッテリ駆動時間のようで、Instant Media Mode時は、Windows+Intel Core i側の消費電力をカットでき、結果、Windows+Intel Core i動作時のおよそ2倍となる、最大10時間のバッテリ駆動時間を確保できるようになるのだと説明している。
発売日は正確には未定だが、2012年第2四半期中の「早い時期」(同社展示スタッフ)で、日本向けは不明。同機のWindows PCとしてのスペックは従来機ThinkPad X1に準じているので、これにIdea Pad Tabletを別に購入する金額をあわせると、ちょうどこのくらいの値段になるわけだが、販売価格の方は北米市場で1599ドルからとのこと。