BlackBerryを擁するカナダのResearch In Motion (RIM)だが、ライバルらの攻勢を受けるなか、自社の経営問題も含めて翻弄されている。昨春に登場したPlayBookは在庫処分を主眼とした特別価格での販売が実施されているほか、新OSのBlackBerry 10ならびに同OSを搭載した新製品のリリースは遅れ、さらにはMicrosoftやAmazon.comらによる買収説まで囁かれるようになった。北米端末メーカーの雄はどこへ向かうのだろうか?

もともと「ページャー」という、いわゆる「ポケベル」開発メーカーとしてスタートしたRIMだが、2003年には後年の大ヒット作となる「BlackBerry」スマートフォンをリリースし、現在に至る。100万台契約突破を短期間で達成したiPhoneやAndroidに比べ、BlackBerryの立ち上がりは非常にスローだったが、ビジネス向けスマートフォン端末としての一時代を築くことに成功した。こうした成功も、現在では他の2大勢力によってそのシェアを削られるようになっている。iPhone登場までスマートフォンOSの半分近いシェアを占めていたBlackBerryだが、現在ではその比率も1割未満の水準まで低下している。さらにAppleがiPadを発表してコンシューマ向けタブレット市場を切り開いたことで、スマートフォンだけでなくタブレットという新分野での競争がスタートし、RIMもまた「BlackBerry PlayBook」というタブレット製品を投入して対抗している。

だが、PlayBookの売上が芳しい状況でないことはたびたび報告されており、当初の16GBモデルの499ドルの販売価格から、最終的に実質199ドルでの値下げ販売が実施されるなど、拡販プロモーションならびに在庫処分の動きが目立つようになった。昨年2010年に行われた同社会計年度で2012年第3四半期(2011年9-11月期)決算の発表において、在庫償却で4億8500万米ドルを計上しており、経営上も厳しい状況に追い込まれていることがうかがわれる。さらに1月に入り、PlayBookのすべてのモデルが一律299ドルへと値下げされたことが報告されている

これまで、PlayBookは値下げが行われてもあくまで各量販店の個別対応という扱いだったものが、今回は公式のBlackBerryストアでの値下げだ。しかも699ドルの64GB版も含め一律299ドルへの値下げということで、大容量モデルを中心に買い得感が高くなっている。前出の状況を考えれば、これもまた在庫整理の一環だと考えられる。

RIMにまつわる問題はPlayBookだけでなく、本丸であるBlackBerryにも及びつつある。例えばNew York Timesが1月3日(現地時間)に報じた記事によれば、QNXをベースにした次世代OSの「BlackBerry 10」ならびに同OS搭載端末はパフォーマンス上の大きな問題を抱えており、RIMはリリース計画の遅延を迫られているとアナリストらは分析しているという。QNXはRIMが買収したソフトウェアメーカーであり、同社の持つOSプラットフォームをベースにPlayBookが開発されている。計画ではBlackBerry OSもまたQNXベースにした改良を始めており、次世代のBlackBerry 10が、BlackBerryとしては初めてのQNXベースOSとなる見込みだ。BlackBerry 10はもともと「BBX」の名称で2010年10月の開発者会議で発表されたものだが、こちらも商標問題でBBXの名称使用を諦めるなど、トラブルに巻き込まれていることが知られている

このような背景もあり、ここ最近のRIM株価は急落を続けており、ライバル他社による買収の噂が多く持ち上がっている。例えば12月下旬にはMicrosoftやAmazon.comらによる買収交渉が続けられていると報じられたこともあり、RIM株価が急騰する出来事があった。特に前述の在庫償却と売上減少で決算が大幅に悪化、株価が急落していたこともあり、こうした動きが目立った。また一部報道では、Amazon.comによるRIM買収交渉は、同社が2012年のリリースを計画しているといわれている「Amazon.com製スマートフォン端末」の開発に向けたものという話が出ている。Amazon.comのスマートフォンは、同社タブレットのKindle Fireに続くもので、やはり低価格でミッドレンジ以下の市場をターゲットにした製品になるとみられている。今後の動きは流動的だが、RIMの次の一手の出方しだいでは大きく動くことになる可能性がある。