クラウドとユーザーセントリックで変革
Webrootは元々、OEMを行っている企業だった。しかし、Williams氏のCEO着任後、方針を変更。技術のイノベータになるべく、自社IP(Intellectual Property : 知的財産権)の取得に励んだ。
その一環として、2010年には英Prevx、米BrightCloud、スウェーデンEmailsystems Scandinaviaの3社を買収。これらの企業の技術も活用して「これまでになかったセキュリティソリューションを開発した」(Williams氏)という。
現在のWebrootのソリューションの核にあるのは「ユーザーセントリック」、すなわち端末ではなく、ユーザーを守るという考え方だ。昨今では、スマートフォンやタブレット端末、ノートPCなど、さまざまなデバイスが普及しており、1人で複数台所有するのが当たり前になっている。しかし、これまでは、それぞれで異なるセキュリティソフトが開発され、ユーザーはそれらを個別に導入していた。
こうした状況を改善すべく、Webrootではさまざまな端末に共通で適用できる技術を開発し、それらを統合管理できるWebサイトも提供している。そのうえ、この基盤技術は個人にも、小規模グループにも、大企業にも適用できるスケーラビリティの高いものになっている。今後は法人向けソリューションにも力を入れていく意向だ。
そして、このソリューションを実現しているのがクラウド技術だ。同社の製品は、マルウェアの検知処理をクラウドで実行する仕組みになっている。一般のセキュリティソフトがクライアントに導入する巨大なシグネチャファイルが不要になるうえ、さまざまなマルウェアをリアルタイムに検知できるようになる。クライアントには、シグネチャファイルの代わりに振る舞いベースで検知するエージェントが導入され、「各種の脅威を幅広く防ぐことが可能」(Williams氏)だ。
巨大なシグネチャファイルがないため、軽量で高速。サーバ側で検知を行うため、ゼロデイアタックにも対応できる。さらに、「他社製品では新種のマルウェアに襲われた際、サポート担当者を派遣してもらわなければならず、その派遣費用で数百ドル請求されることがあるが、クラウドベースであれば、そのような対応は一切不要になる。追加コストにおびえる必要はない」(Williams氏)といったメリットもあるという。
そのほか、ディスクスキャンも前回との差分のみを対象とするため「2回目以降はわずか20~30秒で終えることができる」(Williams氏)ほか、ユーザービリティに優れたUIを採用し、ID/パスワード自動入力などの便利な機能を提供している点も大きな特徴の1つだという。
通信キャリアにもソリューション提供へ
クラウドを採用することのメリットはもう1つある。それは、エンドユーザーのみならず、通信キャリアなどのソリューションプロバイダーも顧客として取り込めるという点だ。
「スマートフォンの普及により、ユーザーは以前にも増して多くの感染リスクにさらされている状況だ。今後は、通信キャリアでも安全性がサービス差別化要因のひとつになると考えられる。Webrootでは、クラウドベースのマルウェア検知システムを提供しており、彼らのソリューションに取り込むこともできる。魅力的なソリューションコンポーネントになるよう、整備を進めている最中だ」(Williams氏)
スマートフォン/タブレット端末の急激な普及が、インターネット環境を大きく変えているのは紛れもない事実。ベンダーの対応はさまざまで、各マーケットの勢力図は数年のうちに塗り変わる可能性もある。今後、Webrootがどれだけ躍進できるのか。Williams氏の手腕に注目したい。