世界各地には不思議な建物がいろいろあるが、これもその1つ。まるでUFOのような巨大円形建物。アパートやマンションの原型とも思える円形建物に、今も生活している人もいる。世界遺産にも登録されている中国の福建土楼をご紹介したい。

1つの土楼に300人以上が住むものも

中国南部にある福建省。ここには巨大円形建物=土楼が1万~2万戸も残っているという。近代的なビルが立ち並ぶ廈門(アモイ)からバスで4時間ほど行くと、土楼があちこちにあるエリアに。そのなかで湖坑(フーコン)という町を拠点に、バイクタクシーをチャーターして土楼巡りをした。

承啓楼の外観

承啓楼の内部

世界遺産にも登録されている素晴らしい土楼といえば「承啓楼」。1709年に建てられたもので、円形土楼の直径はなんと約60m! 4階建ての建物で約300部屋もあり、今も約300人が住んでいるという。

こじんまりとした小さな土楼の内部

土楼に入ると、内部の円形広場にも二重三重に建物が円形に建てられている。円形中心部には祖堂があるほか、1階は調理場が中心。2階が倉庫で、3、4階が住む場所になっているという。

有名な「承啓楼」のような土楼だけでなく、周辺には大小さまざまな、円形だけでなく形もさまざまな土楼が点在している。だいたいどこも造りは似ていて、1階は調理場や家畜小屋、洗濯スペース、井戸があるといった共用スペースで、上階が居室となっているところが多い。

それにしてもなぜこのように不思議な巨大円形集合住宅が造られたのか。その理由は外敵から身を守るため。入口が一箇所しかなく、まるで城塞のような建物に一族みんなで住むことによって安全をはかっていたという。

初渓土楼群

上からみるとUFOのよう

土楼でお茶をご馳走に

世界遺産になって観光地にもなっている有名土楼だけでなく、その周辺にある一般土楼に入ると、住んでいる人が歓迎してくれる。1階の調理場に招き入れてくれて、お茶やお水をご馳走してくれることも。なかには果物をおみやげにくれる人もいて、人の優しさにふれることも多い。

1階は調理場など

旅行者に親切な土楼の人たち

土楼の入口には人がたむろしていて、みんなでおしゃべりしていたり、子供たちが遊んでいたり、大人たちがトランプや麻雀をしていたりもする。「お邪魔してもいいですか」と声をかけて入れば、案内してくれるところもあり、親切にしてくれる土楼が多かった。

土楼がたくさん集まり、かつ高台から集落を一望できる場所としては「田螺坑土楼群」や「初渓土楼群」がおすすめ。土楼巡りをしてみるとおもしろい旅になると思う。

田螺坑土楼群