厚生労働省は14日、第47回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用対策基本問題部会を開催した。同部会では、「今後の高年齢者雇用対策について」と題する案が示され、同案では、「無年金・無収入となる者が生じないよう、65歳までは、特に定年制の対象となる者について、希望者全員が働くことができるようにするための措置が求められている」としている。

少子高齢化が急速に進展する中、全就業者数は2020年には2009年と比較して約433万人減少することが見込まれており、2012年には、団塊の世代が60歳代後半に達し、職業生活から引退して非労働力化する者が増加すると見込まれている。

一方、我が国の高年齢者の就業意欲は非常に高く、65歳以上まで働きたいという者が高齢者の大部分を占めている。

このような中、現行の高年齢者雇用安定法では、60歳定年及び65歳まで(2011年12月時点では64歳)の雇用確保措置を義務化しているが、例外的に、労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、この基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度を講じたものとみなしている。

雇用確保措置を導入している企業の割合は、31人以上規模企業のうち95.7%に達しており、全企業のうち、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は47.9%であり、希望者全員が64歳(2011年12月時点での雇用確保措置義務年齢)まで働ける企業の割合は50.8%。また、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準により離職した人が定年到達者全体に占める割合は1.8%(定年到達者約43万5千人中約7千6百人)となっている。

一方で、年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、男性については、定額部分は2013年度に65歳までの引上げが完了し、同年度から、報酬比例部分についても61歳に引き上げられる(平成37年度までに65歳まで段階的に引上げ)ため、無年金・無収入となる人が生じる可能性がある。

厚生労働省の労働政策審議会 職業安定分科会 雇用対策基本問題部会では、上記のような問題意識の下、「希望者全員の65歳までの雇用確保策のための方策」などについて検討を行い、以下のような結果を報告した。同部会では、「この報告を受けて、厚生労働省において、法的整備も含め所要の措置を講ずることが適当と考える」としている。

希望者全員の65歳までの雇用確保について

少子高齢化が進展し労働力人口が減少する中、現行の年金制度に基づき公的年金の支給開始年齢が65歳まで引き上げられることを踏まえると、無年金・無収入となる者が生じないよう、65歳までは、特に定年制の対象となる者について、希望者全員が働くことができるようにするための措置が求められている。

  1. 希望者全員の65歳までの雇用を確保するためには、法定定年年齢を公的年金支給開始年齢と合わせて引き上げることも考えられるが、現在60歳定年制は広く定着し機能しており、法律による定年年齢の引上げは企業の労務管理上、極めて大きな影響を及ぼすこと、60歳以降は働き方や暮らし方に対する労働者のニーズが多様であることなどを踏まえると、直ちに法定定年年齢を65歳に引き上げることは困難であり、賃金制度などの労務管理上の課題に関する環境整備を含めて、中長期的に引き続き検討していくべき課題ではないか。

  2. しかし、現行制度では65歳までの希望者全員の雇用を確保することとなっていないため、2013年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴い、無年金・無収入となる者が生じないよう、雇用と年金を確実に接続させるため、現行の継続雇用の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当ではないか。その際、例えば長期にわたり労務提供が困難であることが明らかな者の就業規則における取扱いについて、考え方の整理が必要ではないか。

  3. また、継続雇用制度の基準を廃止する場合であっても、就労を希望する高齢労働者が増加していくことを考えると、同一の企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため、事業主としての責任を果たしていると言える範囲において、継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要ではないか。

  4. 雇用確保措置はほとんどの企業で実施されており定着していると考えられるが、未だ雇用確保措置を実施していない企業が存在するため、今後全ての企業で確実に措置が実施されるよう、指導の徹底を図り、指導に従わない企業に対する企業名の公表を行うことが適当ではないか。また、個別労働紛争解決制度などについて周知を行い、個々の労働者の救済を図ることが適当ではないか。

  5. 希望者全員の65歳までの雇用確保についての普及・啓発や、同制度の導入に関する相談支援等について、政府としても、積極的に支援することが必要ではないか。