カーユーザーに欠かせない存在となったカーナビゲーション。iPhoneアプリ『NAVIelite』を活用すれば、iPhoneをカーナビ替わりに使用することが可能だ。このアプリ、バージョンアップごとに大きく進化を遂げており、今後が楽しみな存在でもある。同社の開発リーダーらに開発の方針と今後について伺った。
『NAVIelite』は、アプリの割には年間利用料が3,800円と高額。しかし、使用してみれば、その価格にもきっと頷けるに違いない。車載用カーナビをそのままiPhoneに落としこんだかのような仕様になっており、的確にナビゲーションをしてくれるのだ。
基本機能については、過去に紹介したこちらの記事を参照いただきたいが、バージョンアップごとに新機能が加わっていく興味深いアプリでもある。たとえば、写真撮影地の位置情報をもとに撮影地までナビゲーションしてくれる機能や、iPhoneの『連絡帳』に登録した住所からナビゲーションを行う機能などは、バージョンアップによって付け加えられたものだ。
同アプリが今後どう進化していくのか。東京モーターショー開催を機に、今後の展望などについて、同社のナビ事業本部第1営業部副部長の廣瀬功司氏、ナビ事業本部製品統括部第2製品統括G主担当(NAVIeliteチーフエンジニア)牛田孝一氏に話を聞いた(以下、文中敬称略)。
──2012年1月でリリース後1年が経ちます。ユーザーの反応はどうですか?
廣瀬:20年以上前から音声で道案内をするというコンセプトのもと、「使いやすくて誰もが安心して使えるカーナビ」というポリシーをもって開発に取り組んできました。それをiPhoneユーザーにも使っていただきたいと思ってリリースしたんです。
リリース後の反響ですが、ユーザーの方からは車載カーナビに近い形で認識いただいていると思います。「純正カーナビそのままですね」というご指摘をよくいただきますので、車載カーナビユーザーにも受け入れられていると感じますね。
アプリとしては高額の部類に入りますが、車載カーナビユーザーからすれば、コストメリットが非常に大きいですし、価格面でもご評価いただけています。
──他のナビゲーションアプリと違うところは?
廣瀬:ナビゲーションは、いかに親切に案内できるかにかかっていると思います。たとえば、都内の大通りを車で走っていて、目的地までスマートに行くには、グラフィックを用いて案内をして、どの車線を走行すればいいのか、どこを右折すればいいのか、どのタイミングでいつ音声案内を出すのかが重要になってきます。
この部分は、われわれが20年間ユーザーに向き合い、磨きをかけてきた箇所なんです。他のカーナビと比べてもらえればわかりますが、目的地を設定するにしても、いくつものステップを踏む必要はないし、ナビのプロとして、できるだけ親切に誘導したいと思っています。
──リリースする際にiPadではなくiPhoneアプリとして出した理由は?
牛田:身につけて持ち運べるというところを重視したかったんです。iPhoneは携行性が高いですが、iPadを普段から持ち歩こうとする人は稀ですよね。
──iPadアプリのリリース予定は?
多くの方からiPad版をリリースしてほしいという要望をいただいています。技術的なところでは取り組んでいますが、製品化というところまでは……、という感じですね。
仮に製品化するにしても、単に画面サイズを大きくするだけではユーザーに満足いただけないでしょうし、そこをどう考えるのかは難しいところです。
──開発における基本方針みたいなものはありますか?
牛田:いかに使いやすく、わかりやすく、親切なものにするかを念頭に置いて取り組んでいます。
リリース当初は、iPhoneらしさを考えてデザイン・その他の仕様についてもいろいろと考えたりしたんですが、使いやすさ、わかりやすさを考えて、車載カーナビと同じようなになったんです。至らないところはユーザーからご意見を頂戴し、それをもとにブラッシュアップさせていこうということになりました。
現在も、使いやすさ、わかりやすさを目指すといったところで根本的な姿勢は変わっていませんが、今後は基本機能はしっかり押さえつつも、「車と人」もしくは「人と人」などが"つながる"ようになればと。自分だけで使うのではなくて、"つながる"という要素を入れていきたいと思います。
──それはどういうことでしょうか?
廣瀬:10年後のカーナビは、今とは違ったものになっているはずです。リアルタイムに情報を共有しながら、友達同士やどこかとつながるサービスが搭載されているかもしれません。それに、単なるカーナビという枠におさまらず、手帳感覚で持っていて、車を降りても使うようなものになっているかもしれません。
手帳は時間を管理する重要なツールですが、日々を過ごすうえで、時間と同時に"場所"もすごく重要です。時間は手帳、場所はナビといったように、場所、つまりナビを軸にして考えれば、ナビは生活をクリエイトするような存在になれるのではないかと思います。
生活と密接に結びつく機能でいくと、iPhoneで撮影した位置情報付きの写真から目的地を設定できる機能を『NAVIelite』に追加しましたが、これを使ってみると楽しいですよ。一年前にどこに行ったのかを写真から確認したり、訪れた思い出の地にまた行ってみようといったこともできますよね。
ほかにも、自分で見つけたおいしい食べ物屋なんかの写真を撮って、自分なりのコンテンツも作成することも可能です。食欲を軸にしてナビゲーションしてもらうといった使い方もできます。
『NAVIelite』にはソフトウェアキーボードで店舗検索なども行えますが、検索には手間もかかりますし、店名を正確に覚えているとも限りませんよね。アプリに目的地をメモリ情報として、文字で登録しても、それが100件集まったら文字列が増えることになって、必ずしもユーザーにはやさしくないものになってしまいます。だったら、位置情報付きの写真を活用したほうがユーザーにもわかりやすいですよね。
牛田:アプリを個々に見て行くと、『NAVIelite』が目指す大まかな方向を示すようなものというか、技術的なものとしてはちょくちょく見るんですけど、ナビを軸にしてもっと使いやすくできるできるような気がします。
──具体例はありますか?
牛田:『カレンダー』のスケジュールに目的地を入れてナビエリートで案内する、といったことも考えられます。こうした機能自体はすでに他のアプリにもありますが、『NAVIelite』を使うことでより充実した情報を提供できるかもしれません。
廣瀬:たとえば今日講演のライブが19:00スタートだとします。会場に向かう前に、出発時間を気にすると思うんですよ。何時に家を出れば間に合うのか、途中で事故の影響で渋滞に巻き込まれたけど、どうすればライブに間に合うのかなど、そんなときにベストなナビができるのではないかと。
スケジューリングひとつをとっても、ナビゲーションで時間と場所をいかに駆使して、ストレスなくナビできるかというところも考えていきたいです。
(提供:iPhone iPad Wire)