俳優の役所広司が、10日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われた、映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六 —太平洋戦争70年目の真実—』の会見に出席した。
映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六‐太平洋戦争70年目の真実‐』は、軍人でありながら強硬に日米開戦に反対し続けた山本五十六の実像を描いたもの。山本は1941年の真珠湾攻撃を行った戦略家として知られているが、なぜ自ら開戦の火蓋を切らねばならなかったのか、その真実を描く。キャストは山本五十六役に役所広司、当時のマスコミの姿勢に疑問を抱く新聞記者・真藤利一役に玉木宏、また柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、香川照之らが出演しており、23日から全国で公開予定。
役所は「太平洋戦争のことを改めて考えてくれれば。日本は昭和史に学ぶところがたくさんある。映画の力は下手な外交より、いい外交手段だと信じています」と挨拶。山本五十六については「“日本という国を滅ぼしてはいけない。米国と戦えば必ず負ける”ということに根拠を持っていて、日本が間違った方向に行かないように考え続けた軍人。ヒーローとしても正しい決断をした人とも描いてない。戦争映画は悲劇的でドラマチックですが、戦争は元々悲劇なので、謙虚な気持ちで取り組みました」と真摯に語った。成島出監督は「山本のチャーミングなところも楽しんで欲しい」とPRした。
会見には多くの海外記者が集まり、小滝プロデューサーや役所に山本五十六や太平洋戦争についての質問が飛んだ。小滝祥平プロデューサーは「歴史は光の当て方で見え方が変わってくる。描いていることがすべて正しいとは思っていない。山本も言っていますが“お互いの違いを理解して外交していく”ということを考えてもらえれば」と作品について説明し、「日本側からしか描いていませんが、的確に日本を描くことで当時の米国も見えてくる。我々には、『パール・ハーバー』のような予算はありませんしね」と話し、会場を和ませた。また、「この映画が成功したら日中戦争も含め、10時間3部作くらいで、また役所さんと成島さんにやってもらいたい」と冗談まじりにオファーすると、役所は「そうなったら、僕の仕事が増えますね」と微笑んだ。
また、10日に肺ガンで亡くなった脚本家の市川森一さんの訃報をうけた同郷(長崎県諫早市)の役所は「ほんの1時間くらい前に聞いてびっくりしています。市川さんは兄の同級生だったので、僕が母親のお腹にいるときから、家に遊びにいらしてて。上京してからは、東京の兄という存在でした」と明かし、「市川さんにお会いして、諫早の歴史とか隠れキリシタンのお話を伺いたいと思っていたところでした。本当に信じられない……。『親戚たち』では初の現代劇ドラマのチャンスを頂き、俳優として代表となる作品を書いて頂いたので、がっかりです」と沈痛な表情で故人を偲んだ。
『聯合艦隊司令長官 山本五十六 —太平洋戦争70年目の真実—』は12月23日より全国東映系にてロードショー。