東映創立60周年記念作品『北のカナリアたち』の製作発表記者会見が29日、都内で行われ、主演の吉永さゆりをはじめ豪華キャストが登壇した。
本作は日本最北の離島である礼文・利尻島を主な舞台に紡がれるヒューマンサスペンス。 20年前に礼文島で教師をしていた主人公の川島はる(吉永小百合)は、最後に教えていた6人の子どもたちが起こしたという事件を知る。はるが6人に再開を果たしたことをきっかけに当時のある事故の謎が浮かび上がってくる、というストーリー。『大鹿村騒動記』の阪本順治が監督を務め、原案は『告白』の湊かなえ、脚本は『北の零年』の那須真知子が手がける。撮影は「美しさは厳しさの中にしか存在しない」と断言する『劒岳 点の記』の木村大作。
7月に実際に利尻・礼文を訪れたという吉永は「北海道では『北の零年』などでロケをしていますが、今回がいちばん大変になるのではないかと思います。全員の方と初共演になりますが、それぞれ素敵な方たちでわくわくしています。東映の60周年ということで黄門様はいらっしゃいますし、あぶない刑事はいらっしゃいますし……。大人チームが、若い人たちの魅力を引き出せるような優しい存在になれたらと思います」と挨拶。
はるの夫・行夫を演じる柴田恭兵は「いつの日か(吉永さんと共演したい)とずっと思っていました。ナンシー関さんにチンピラ俳優と言われた僕なので、オファーをいただいたときは『ちょっと待て、待ってください。サユリストの方たちに申し訳ない』とまず思いましたね」と夢が叶うも複雑な心境を語った。
20年前は札幌で刑事、現在は島で警官として駐在する阿部英輔役には仲村トオル。「『あぶない刑事』をやっていたとき、恭平さんと何百回と食事をしましたが僕は一度もお金を払ったことがありません。しまいには財布も持っていかなくなったのですが、今回はその恩を仇で返すような役で……。演技で恩返しができれば」とユーモアたっぷりにコメントした。
里見浩太朗ははるの父親・堀田久役。「『キューポラのある町』を見て以来サユリストなのでようやく吉永さんの相手役ができる、と思って台本を開いたら父親役でした(笑)。僕が東映に入って55年。立派な先輩の中で教わり、学び、盗んで時代劇を勉強してきました。かつて劇場には扉が閉まらないほどお客さんが入った時代がありました。そんな作品にしたいですね」と大御所らしい抱負を述べた。
はるの教え子たちの20年後を演じる森山未來、満島ひかり、勝地涼、小池栄子、松田龍平ら若手俳優陣は異口同音に「緊張しています」と一言。安藤結花役の宮崎あおいは仕事の都合で欠席したため、ビデオメッセージでの出演となった。鈴木信人役の森山は「吉永さんとはただの先生、生徒の関係ではなく、母親のように慕っている部分もあるので、胸を貸していただいて奔放にやらせてもらえたら」。先週稚内へ足を運んだという満島(戸田真奈美役)は「沖縄出身なので、生活様式を独自に調査させていただきました」と役作りに余念がない様子。生島直樹役の勝地涼は「身の引き締まる思い。大自然の中で自然にわき出る感情を出して役に向かっていきたい」。小池(藤本七重役)は「初めて吉永さんにお会いして美しさと優しさに圧倒されました。こんな素晴らしい先輩たちとお芝居ができることに緊張よりもワクワク感が勝っています」。松田勇役の松田龍平は「楽しみです。寒そうなところですけど、みんなで楽しくやりたい」と淡々と語った。
6人の教え子の年少時代を演じる子どもたちはオーディションに集まった3,100人の中から選ばれた。タイトルにも「カナリア」とあるように、本作では"歌"が重要なファクターとなっているため、演技ではなく歌声のみで審査が進められたという。全てのオーディションに立ち会った阪本監督は「20年後を演じる俳優と顔、体格、雰囲気が似ていて、かつふさわしい歌声を持つ子を見つけるという奇跡と求めなければなりませんでしたが、その奇跡は起こりました。6人全員演技の経験はありません。真っ白な彼らを演出できるという喜びがありますね」と新人子役の人選に自信を見せていた。
『北のカナリアたち』は12月2日にクランク・インし、2012年の秋以降の公開を予定している。