コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 7のメモ帳やMac OS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。「世界のテキストエディターから」では、Windows OS上で動作する世界各国のテキストエディターを不定期に紹介していきます。今回は文書作成のだけために存在する「WZ Writing Editor」です。
「WZ Writing Editor」に至るVZ Editorの歴史
以前の記事で「MIFES 9」を紹介しましたが、はるか昔のMS-DOS時代に同市販テキストエディターと双へきをなしてきた「VZ Editor」をご存じでしょうか。Windows用テキストエディターである「WZ EDITOR」の前身であり、日本のテキストエディター史から外すことができない存在です。正確には作者も異なり、内容や設計思想も異なる"似て非なるもの"ですが、まずはVZ Editorの歴史からひも解きましょう。
CUI(キャラクターユーザーインターフェース)を主たるUIとしているMS-DOSにテキストエディターは欠かせません。もちろんMS-DOSにもテキストエディターは備わっていましたが、その能力は簡易的なものにとどまり、ユーザーは何らかのソフトウェアを導入しなければなりませんでした。当時のソフトウェアは大半が高価な価格を付けられており、数万円の出費を必要とするMIFESやFINALを尻目に登場したVZ Editorの価格は9,800円。筆者を含めた貧乏学生を筆頭に多くのユーザーが購入し、爆発的なヒットに至りました。
"安かろう悪かろう"の言葉とは裏腹に、フルアセンブラで書かれたソフトウェアの動作は小気味よく、マクロ機能はVZ Editor上でテトリスという落ちものパズルゲームを動作させられるほど強力。多くのマクロ開発者が集い、瞬く間にテキストエディターのシェアを塗り替えていったのです。
個人的にはマクロ機能よりも高く評価していたのが常駐モード。ファイル操作を視覚的に扱うことを目的としたファイラー(ファイルマネージャー)の存在は、VZ Editorの動作を向上させると同時に"テキストエディター一つで何でもできる"と思わせるほどでした(図01)。
VZ EditorのWindows版を求める声は当時わき上がりましたが、結果的に登場したのは別の開発者が手がけたWZ EDITORです。VZ Editorの操作体系を踏襲しながらも、マクロはC言語風の味付けを行い、可読性を向上させました。しかし、VZ Editorの頃とは時代背景も異なり、爆発的なヒットには至っていません。筆者もWZ EDITORをメインのテキストエディターとして使ってきましたが、タブ機能がいつまで経っても搭載されなかったため、ほかのテキストエディターに乗り換えました(図02)。
そのため、最新版となるWZ EDITOR 7の検証はしておりませんが、独自のテキスト分析や補完入力支援機能などを備えた「WZ-リサーチ」や、専用の日本語入力システム「WZ-IME」など興味深い機能は盛りだくさん。暇を見て体験版を触ってみようと思っていた矢先に登場したのが、「WZ Writing Editor」。そもそもテキストエディターは、プログラマ向けのツールという見方が強かったものの、コンピューターが一般ユーザーにまで浸透し、我々の母国語である日本語を活用する上で欠かせない執筆用道具に特化したソフトウェアです。
WZ Writing Editorは、現行バージョンであるWZ EDITOR 7をベースに多彩な機能を取り外しつつ、文字組版機能を追加することでビジュアル面を強化。また、表示内容と印刷結果をできる限り近づける機能や、全体的な編集機能を強化して、文筆家や社内外のレポートを作成するユーザー向けとなっています。同製品版は12月中旬にリリースされる予定ですが、執筆時点では12月15日まで試用可能なプレビュー版を公開中。今回はプレビューバージョン1.0.7を元に、「世界のテキストエディターから」をお送りします。