米Appleは今年9月にチェコやポーランドなど東欧諸国12ヶ国でのiTunes Storeによる音楽/映画配信サービスを開始したが、現地でのビジネスに苦戦している可能性が指摘されている。米Wall Street Journalが11月13日(米国時間)に報じている。
Appleは今年9月29日、ブルガリア、キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアの12ヶ国でのiTunes Storeサービスを開始している。英国、フランス、ドイツなど、西欧・北欧諸国では2004年と早い時期からサービスが開始していたが、旧共産圏の東欧諸国では長らくサービスが導入されていなかった。
サービス開始後の営業成績についてAppleは公表していないものの、WSJでは非常にきつい戦いを強いられていると分析している。そもそもサービス開始が遅れたのには、これらの国々では全体に所得水準が低く、海賊版コンテンツが跋扈しており、iTunes Storeを利用しなくても安価に(または無料で)コンテンツの入手が可能な環境にあったからだ。また、iTunes Storeのコンテンツがローカライズされておらず、映画などでは現地語のサブタイトルが付与されていないなど、コンテンツ的にも魅力が薄いというハンデもあるようだ。
Czech Anti-Piracy UnionのMarketa Prchalova氏は、海賊版コンテンツ跋扈の背景として、政治家らが海賊版取り締まりのための法制定にあまり積極的でないといった政治情勢を指摘している。東欧諸国ではファイル交換のためのサーバが設置され、これを利用するユーザーも後を絶たないが、取り締まりがほとんど行われていないようだ。このために海賊版コンテンツの拡散も容易なのだという。欧米では一定以上の成果を挙げており、参入の遅かった日本でも成功しているiTunes Storeだが、所得格差や法整備、ローカライズの問題で、さらなる拡大にはまだ高いハードルが存在するといえるのかもしれない。