米Adobe Systemsは11月9日(現地時間)、750名の人員削減を含むリストラ計画を発表し、その一環としてモバイル機器向けFlash Playerの開発中止について言及した。同社はここ2年ほどの間、携帯電話向けに提供していたFlash Liteでなく、タブレットを含むさまざまなデバイスに対してPC向けと同等なフル機能のFlash Playerを提供すべく技術開発を続けてきた。現在、AndroidならびにBlackBerry PlayBookの2プラットフォーム向けにFlash Playerが提供されているが、これらに対するアップデートは次のバージョン11.1で終了となり、以後はバグフィクス/セキュリティ対策を含むサポート対応のみに限定されることになる。
同件については前日にあたる8日、米ZDNetによって計画の概要がリークの形で報じられている。そこではAndroidならびにPlayBookのアップデート提供終了と以後のバグフィクス中心のサポート対応のみに注力する旨のほか、開発プラットフォームとしてのFlash技術へと開発者を誘導していくことが示唆されていた。今後、ソースコードのライセンス提供を受けた一部ベンダーがソリューションの継続開発を行っている可能性についても言及されているが、Adobeとしてはモバイル向けFlashの開発は終了とし、今後Flash/AIR開発者はモバイル機器をターゲットとしたアプリ開発を行う場合、コード自体はFlashで記述を行い、最終出力形態としてPackage機能を使って各モバイルプラットフォーム向けのネイティブアプリへと誘導していくという。PC向けFlashは継続されるが、Flashの技術としての位置付けは共通の実行フレームワークというより、どちらかといえば共通開発プラットフォームといったポジションに近くなる。
Adobeは以前より、Flashは永続的な技術ではなく、将来的にHTML5のような技術へと段階的に移行していく形になるとの見解を述べているが、その時が来るまではFlash開発者ならびにユーザーに対して必要なソリューションを継続的に提供していくことを約束している。今回のZDNetの報道はこの部分を強調する一方で、モバイルデバイスにおけるFlash Playerの位置付けの難しさを改めて浮き彫りにしているといえるかもしれない。近年のAndroidデバイスはFlashをストレスなく動かすのに十分なパフォーマンスを備えつつあるが、一方で実行環境の主流はネイティブアプリまたはWebアプリであり、Flashのクロスプラットフォームという強みを必ずしも活かしているとはいえない。継続投資のコストと合わせ、何らかの判断が働いた可能性がある。