iPhoneやAndroidと並ぶ第3勢力として期待が寄せられているMicrosoftのWindows Phoneだが、同時に各種ニーズへの対応の遅さやラインナップの少なさがネックとなり、いまだ大きな成果を出すには至っていない。こうした状況を挽回すべく、MicrosoftではWindows Phone 7.5 (Mango)リリースに続く次なる一手を打ち出し始めているようだ。
鶏と卵理論ではあるが、Windows Phone端末の利用が広がらない理由の1つに「端末ラインナップの貧弱さ」が挙げられる。Microsoftは「すべての端末で同じユーザー体験」をキーワードにWindows Phoneのハードウェア要件を規定しており、これを満たさない端末へのOSライセンスを行っていない。これが端末ラインナップをハイエンド機に偏らせ、比較的画一的な製品が揃う要因にもなっているわけだ。だがPCWorldが11月6日に公開した記事によれば、Microsoftはこのハードウェア要件を若干緩和し、9月下旬にカメラの搭載を必須要件から外したようだ。これで搭載必須なセンサーとしてはA-GPSと加速度センサーのみになり、より安価で異なるバリエーションの端末が開発できる可能性がでてきた。もっとも、ジャイロスコープなどを含むセンサーがあることを前提にプログラミングを行うアプリ開発者もいたわけで、このあたりの対応は各開発者の工夫に委ねられることになる。
もう1つ、Windows Phoneが抱えるウィークポイントが各種対応の遅さだ。新機能アップデートはもちろんのこと、ユーザーからのニーズの吸い上げ、新技術のハードウェア取り込みなど(NFCなどが典型)、競合ライバルと比較してスローペースであることはユーザー自身も認識しているだろう。Androidはハードウェアメーカーが積極的に新技術を取り入れ、OS自体のアップデート頻度も高く、「製品の陳腐化が速い」という指摘こそあるものの、ライバルと比較して驚異的なペースで技術革新を進めているといえるかもしれない。だがNokiaが10月末に発表した端末「Nokia Lumia」ではLTEサポートが表明されているなど、現時点でiPhoneがサポートしておらず、Android端末でも限定的なラインナップにとどまっている現在では、比較的健闘しているといえる。PC Magazineのレポートによれば、そもそも現状のWindows Phone 7.5 (Mango)アップデートはLTEをサポートしておらず、本来であればLTEが利用できない。だが米MicrosoftのWindows Phone部門シニア製品マネージャのGreg Sullivan氏によれば、こうしたLTE対応バイナリ供与などでNokiaが優遇されたわけではなく、(他社も同様のアップデートバイナリに触れられる環境の中で) Nokiaのニュースが先行して出てきただけだという。つまり、LTE対応端末自体は間もなく他社からもリリースされる可能性があるわけだ。
11月7日に米ニューヨーク市内で開催されたWindows Phone製品発表イベントの中でMicrosoftは、Samsung Focus S、Samsung Focus Flash、HTC Radar 4G、HTC TITANなど、Mangoを搭載した新製品ラインナップを紹介している。50-200ドルと幅広いプライスレンジが設定され、ハイエンド版については1.5GHz駆動の高速プロセッサモデルも用意されるなど、従来に比べて若干バリエーションを拡大してきた。同社は製品提供において現在も試行錯誤を続けており、少しずつだがユーザーやメーカーのニーズをキャッチアップしてきている印象を受ける。今年の年末商戦を経て来年1年後のいまごろ、Windows Phoneはどのような勢力図を描いていることだろうか?