映画には「そのジャンルを代表する作品」というものがある。たとえばラブロマンスなら『タイタニック』、SFなら『スター・ウォーズ』あたりだろうか。じゃあホラー映画の代表作は……? 人によってそれは『シャイニング』だったり『ミザリー』だったり、あるいは『13日の金曜日』だったりするのだろうけど、個人的に推したいのは『スクリーム』だ。第1作目の公開が1996年だからもうずいぶん前の作品になってしまったが、今見ても古さを感じさせない面白さである。映画を見たことがないという人も、あの不気味なハロウィンのゴーストマスクは絶対に一度は見たことがあるはずだ。

このマスク! 覚えている方はたくさんいるはず!

で、そんなスクリームシリーズ、2000年に公開された3作目をもって一応完結していたのだが、この度『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』(10月29日より公開中)として11年ぶりに復活することになった。ファンには大変嬉しいお知らせなのだが、見る前は若干の不安があった。

何しろ11年である。スクリームシリーズのメインキャストはいずれももう30代後半~40代。スクリームといえば若い男女が殺されまくるのが定番なのだが、さすがにかつてのキャストたちが学生役を演じるのは無理がある。

となると、キャストを変更してくるのか、もしそうならどういう設定になるのか……など色々と考えながら本作を鑑賞したのだが、ふたを開けてみれば何てことはなく、シドニー以下、旧作のキャストはそのまま続投となっていた。舞台も前作までと同様、カリフォルニア州の田舎町ウッズボローだ。ただし映画の中での時間も、前作から10年が経過している。久しぶりに見るウッズボローで、久しぶりに出会うシドニー。何だかちょっとした同窓会気分である。さすがに老けたなぁ……。

それにしても時の流れは恐ろしい。あれだけ凄惨だった事件も10年経つともうすでに笑い話として語られるようになっており、ウッズボローでは例のマスクがキャラクターグッズ化されてそこら中にディスプレイされるようになっていた。また、事件をもとにした映画『スタブ』は毎年恒例の映画として若者たちの間で人気を博しており、町はかつての悲劇を名物として扱うようになっていたのだった。

そんなウッズボローに、自らの体験をもとにした自叙伝を執筆して作家として成功したシドニーが帰ってくる。だが、そんな彼女の帰りを待っていたのは、10年前と同じ惨劇だった――。

という感じでやっぱりシドニーが主役ではあるのだが、先ほども述べたように若い男女が殺されてこそのスクリームである。残念ながらシドニー以下、旧キャスト陣だけではいささかとうが立ちすぎている。

そこで登場するのが、シドニーの従姉妹であるニューヒロインのジルである。演じるのは今年20歳のエマ・ロバーツ。彼女と彼女の友人たちが、今作の「殺されるかもしれない若者たち」だ。もちろんそこは情け容赦のないスクリームシリーズだから、シドニーたち旧キャストにもしっかりと魔の手は伸びてくる。いわゆる「前作の主人公はやられない」法則など、このシリーズには通用しない。誰が殺されるのか、誰が生き残るのか、次世代へと引き継がれたあらたな恐怖をぜひ堪能してほしい。

気になるミステリー要素は?

……さて、スクリームといえばゴーストマスクと刃物を使った残忍な殺し方に目が行きがちだが、もう一つ、ファンがもっとも楽しみにしているのが謎解きの要素である。「意外な真犯人」というシリーズコンセプトは第一作目から変わらず踏襲されてきたわけで、となれば本作『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』にもそれを期待するのは当然といえる。

だが残念なことに、本作の「ミステリー」要素については、正直「うーん」と首を捻らざるを得ないところがあった。

もっとも、それは本作のストーリーや謎解き部分がダメだとか、そういうことではない。むしろ前作までの流れを踏まえつつ、非常によくまとまった物語に仕上がっていると思う。そう、スクリームの正統な続編として「よくできている」のだ。でもだからこそ、何となく真犯人が読めてしまうのである。

つまりスクリームという作品が持つ「驚き」自体が、マンネリ化してしまっているのだ。ここを覆すにはスクリームであることから脱却する必要がある。でもそうなったらもうスクリームではない……。そんなシリーズ物ゆえの自己矛盾に陥ってしまった『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』は、ファンにとっては懐かしさでそれなりに楽しめるけど、でもかつてのような驚きは得られないという、微妙な位置づけの作品になっているのである。

ただし、スクリームシリーズを見ること自体が初めて、または今までのシリーズの内容なんてもう忘れている、というなら話は別だ。他のホラー映画とは一味違うスクリームシリーズならではの恐怖と"だまされる快感"を存分に味わえることだろう。一応前作からの続編ではあるが、知っておかなければならない知識はほとんどない。これまでのシリーズ作品をあえて見ないまま劇場へ足を運ぶのも、それはそれでウッズボローの住人と同じ感覚で惨劇を体験できて楽しいと思う。