10月21日から23日の3日間、秋葉原のUDXと冨士ソフトアキバプラザ会場で、「オーディオ&ホームシアター展TOKYO」(音展)が開催されている。入場は無料。開催時間は22日が10:00~18:00で、23日が10:00~17:00となっている。
音展はかつて「オーディオフェア」として実施されていたイベントで、主に国内のオーディオメーカーが出展する展示会だ。2003年より「A&Vフェスタ」と名称を変え、パシフィコ横浜で開催されていたが、2009年より秋葉原に舞台を移して現在のスタイルとなった。
UDX会場のほうは、協会テーマブースとしてネットワークオーディオやUSBオーディオ関連の展示が行われているほか、比較的小さめのブースで小型オーディオ機器やホームシアターなどの展示が行われている。冨士ソフトアキバプラザ会場のほうは、4~7Fと1Fが使用されており、1Fは特設のジャンク市。計測器ランドなどが出展しており、掘り出し物が見つかるかもしれない。4Fは工作教室の会場だ。5Fと6Fは、中規模のブースと試聴会場となっており、小柳出電気商会、サエクコマース、クボテック、ナスペック、パナソニック、CAVジャパン、富士通テン、スペック、ACOUSTIC REVIVE、北陽木工、パイオニア、ソニー、タイムロード、Y's EPOCHなどがブースを出展している。
「オーディオ&ホームシアター展TOKYO」(音展)の会場風景。写真はUDX会場。かつての「オーディオフェア」全盛期の規模や盛り上がりを知る世代にとっては、寂しさを覚えずにいられない部分もないではないが、オーディオ機器の展示会という点ではこのくらいの規模が適正なのかもしれない。 |
こちらは、ネットワークオーディオやUSBオーディオなどのコーナー |
さて、すべてを回ったわけではないが、気になるブースをいくつかピックアップしてみたい。富士ソフト会場7Fのソニーブースでは、先日発表されたバランスド・アーマチュア・ヘッドホンが大量に展示されており、実際に聴き比べることが可能だ。また、3Dヘッドマウントディスプレイの体験も行える。CEATEC JAPANでは、ヘッドマウントディスプレイの体験コーナーで1時間待ちという長蛇の列ができていたが、今回はそれほどではない。筆者が会場を訪れたのが平日(21日)というせいもあったのだろうが、待ち時間なしで体験することが可能だった。
6Fでは、パイオニオアがピュアオーディオとシアターシステムの試聴会を実施している。ピュアオーディオはTADのスピーカーをメインとしたシステムで、シアターシステムのほうは、同社のAVアンプの実質的な中核モデルとなっている「SC-LX55」をコアとしたシステムだ。
6FのY's EPOCHブースでは、センタースピーカー「TRINI★STAR mini」「NDR1」の試聴会が行われている、これは、シアター向けのセンタースピーカーとは別のもので、あくまでもステレオに接続するための製品だ。同社によると、元来は左右とセンターの3chで構成されていたステレオが、コストダウンのために次第にセンターchが省略され、それが一般的になって現代に至るという。多くの音源では、一番重要な音がセンターに位置している。ところが2chのステレオでは、左右のスピーカーの谷間でそれを聴くことになってしまい、それが音像のリアルさを失わせる原因になっている。同社のセンタースピーカーは、その2chのステレオにセンターchを加えることで、アタック音や響きなど、音源が本来持つリアルな音を蘇らせるというものだ。
また、オヤイデ(小柳出電気商会)のブースでも、面白い展示が行われている。同社は秋葉原にあるオーディオの老舗ショップ兼メーカー。電線がその専門分野だ。ブースには、オーディオ用のハイグレードなUSBケーブルが展示されている。バスパワーで動作するUSBオーディオのような機器では、シールドを施すことによって電源ラインに侵入してくるノイズを減らすことができるという程度のことは理解できる。しかし同社によると、信号線もその素材によってサウンドが変わってくるというのだ。S/PDIFならばともかく、USBの信号線でそういったことが起こるというのは、にわかには信じられないという方も多いだろう。同社によると、信号線の素材の種類や太さによっては、アナログ接続並みにサウンドが変わるとのことで、現在では0.8mmの純銀単線が使用されているとのことだ。ケーブルによる違いを試聴することもできるので、興味がある方は体験してみてはいかがだろうか。
さらに同ブースには、ゼンハイザーのハイエンドヘッドホン「HD800」のオヤイデ特別チューンモデルの参考出展も行われている。同モデルは、HD800のコード部分を同社の厳選したケーブルに置き換えたものだ。こちらももちろん試聴可能。なお、HD800用のコードは年内に発売を目指しているとのことで、価格は3万円程度になると見込まれる。
6Fのソニーブースでも、興味深い機器を試聴できる。ここでは「AR」シリーズのスピーカー「SS-AR1」と、先日発表された「TA-DA5700ES」の試聴イベントが交互に行われている。どちらも、実際に開発に携わったエンジニアによる解説付きだ。そのなかで、同社が究極のCDメディアと呼ぶ、石英ガラス製CDの試聴も行われている。石英ガラス製CDは、素材が樹脂からガラスになってはいるが、記録されている内容に差があるわけではない。表面の平滑度と透明度に差があるということだが、2つを聴き比べると、普通のCDでは明らかに埋もれていた音楽成分を、石英ガラス製CDではより鮮明に聴き取ることができる。そこで、「CDからリッピングしたデータを再生したら?」と伺ったところ、ジッターの関係で、リッピングしたものを再生してもここまでの差にはならないらしい。なお、このガラス製のCDは1枚20万円と、とんでもなく高価でもある。
通常のスピーカーでは、高域になるほど振動板に固い素材が用いられるが、「AR」シリーズでは逆に、低域側に固い素材が使用される。これにより実現された速度の速い低域も、同ブースでは体験可能だ |
究極の「石英ガラス製CD」のサウンドも体験できる |
UDX会場のラステーム・システムズのブースでは、同社の得意とする、小型のデジタルアンプやDACなどの試聴が可能だ。同社のデジタルアンプは、長時間安定してしてスピーカーをドライブし続けられるが、その大きな要因となっているのが、強力な電源回路の採用だ。ブースでは、コンパクトなデジタルアンプ「RUA22A」でJBLの「4312MII」をドライブしている。JBLのスピーカーは基本的には高効率で、どのようなアンプで鳴らしても破綻するということはないが、「4312MIIはその例外」というのが一般的な意見だ。4312MIIは、名機である「4312」のスタイルそのままにコンパクト化されたスピーカー。普通に鳴らす分には問題ないが、JBLらしい前に出る中低域を求めようとすると、それなりに工夫が必要なモデルだ。RUA22Aは、手のひらに載るようなミニアンプなのだが、ウーファーの紙っぽさも出ており、なかなか良い感じだ。社長の三上氏によると「このスピーカーを"JBLらしく"鳴らせるということは、どんなスピーカーを持ってきてもドライブできるということ」とのことだ。これもぜひ体験してほしい。また、ハイエンドDAC&ヘッドホンアンプの「UDAC32」も、同ブースで試聴可能となっている。