英ARMは10月19日(現地時間)、同社アプリケーションプロセッサの新版「ARM Cortex-A7 MPCore」を発表した。現在スマートフォンで主流のCortex-A8/A9、そして前日に20nmでのテープアウトが発表された最新のCortex-A15と、ユーザーのニーズに合わせて高パフォーマンス路線を進むARMのアプリケーションプロセッサだが、一方で性能をそのままに、電力効率と実装面積の縮小による低コスト化を目指したのがCortex-A7となる。ARMによれば、現状で500ドルクラスのスマートフォンの性能を持つ製品が、Cortex-A7により2013-2014年には100ドル以下の価格で入手可能になるだろうと予測している。

Cortex-A7の構造イメージ

ARMによれば、Cortex-A7は最も高い電力効率を実現したアプリケーションプロセッサで、同社のCortex-A5と同種のポジションを狙った製品といえる。ARMv7命令セットに、In-order実行の分岐予測機能を実装した8ステージのパイプラインを持ち、低レイテンシのL2キャッシュを搭載する。特筆すべきはそのサイズと電力効率で、28nmプロセスで製造されたCortex-A7のコアサイズはシングルコア構成で0.45平方ミリメートルとなり、これは45nm製造プロセスのCortex-A8の5分の1のサイズだ。Webブラウジング時の実行パフォーマンスはCortex-A7がA8をわずかに上回る一方で、その電力効率は5倍になる。今日の汎用的なスマートフォンとを上回るパフォーマンスながら、サイズの小型化と電力効率が大幅上昇するのは大きな意味を持つ。まずSoCのダイサイズの縮小でチップあたりのコストが大幅に抑えられ、かつ大容量バッテリの搭載が必要なくなる。結果的に端末コストの低減に結びつき、Cortex-A7を搭載した製品が登場するとみられる2013年以降には、前述のような現行スマートフォンと同等の性能を持つ100ドル以下の端末が多数登場するというわけだ。

同社では現在「big.LITTLE Processing」という戦略を推進しており、Out-of-order実行に対応したハイエンドプロセッサのCortex-A15をリリースする一方で、その対極にあるCortex-A7を発表するなど、IP専業ベンダーならではの製品ラインナップの幅広さが魅力である。18日にはARM、米Cadence Design Systems、台湾TSMCの共同発表で、20nm製造プロセスでのCortex-A15のテープアウトを発表している。同コアのプロセッサを採用した製品は来年2012年後半から順次市場投入が開始されるとみられるが、それに続く形でCortex-A7も市場投入され、ハイエンドからローエンドまで幅広い市場がARM製品ラインナップで満たされることになりそうだ。