OSを持ち運べる「BOOT革命/USB」の新バージョン登場
客先や訪問先でパソコンの操作を求められることがある。最近ではUSBメモリなど安価で大容量のデータを持ち運べる機材も増えていることから、使用頻度の高いツールを格納し、持ち歩いているユーザーも少なくない。
しかし、俗に"ポータブル版の作成"と呼ばれる作業は設定情報の保存先をレジストリからファイルに変更するといった操作が必要のため、パソコンの操作に明るくない方にとってハードルの高い作業となってしまう。また、愛用しているソフトウェアを必ずしもポータブル版に変更できる保証もない。
そこで連想するのが、アプリケーション単位ではなく“OS単位で持ち運びを可能にする”という発想だが、このようなニーズを満たすのが、アーク情報システムの「BOOT革命/USB」シリーズだ。本ソフトウェアはUSB外付けHDD(ハードディスクドライブ)に、Windows OSを書き込みながら、OSの起動に必要なデバイスドライバの組み込みなどを行うというものだった。
今回新たに登場した「BOOT革命/USB Ver.5」は、従来のデバイス制限を廃し、USB外付けHDDやUSBメモリなどに代表される各種USBストレージからの起動を実現。また、肥大化するWindows OSやアプリケーションと、持ち運べるUSBストレージの消費容量を軽減するため、使用するアプリケーションの選択機能などを備えている。
同社のWebサイトにも具体的な活用シーンが"USBストレージ活用例"として掲げられている。ブラウザのブックマークから常時利用しているアプリケーションなど使い慣れた環境の出張先での利用、ソフトウェアのインストール/アップデート前のテスト用OS、トラブル時の緊急起動用としての利用、内蔵ハードディスクを取り外してのUSB起動によるセキュリティ対策。また、クラウドだけを入れておくことで専用のPC環境を構築するなど活用法は多岐にわたる。まずは興味深い新機能の特徴を見ていこう。
各種USBストレージから起動可能
「BOOT革命/USB Ver.5」は、Windows XP/Vista(32ビット版)/7(32/64ビット版)をUSBストレージデバイスにコピーし、起動できるアプリケーションである。同社製品お馴染(なじ)みのランチャーには、「システムドライブを丸ごとコピー」「ファイルを選択してコピー」「エクスターナルインストール」と三種類の作成方法が用意されている。
一つめは文字どおり現在のWindows OSを対象にUSBストレージにコピーし、二つめは起動中のシステムドライブからOS本体だけや、必要なアプリケーションを選択してコピーするという新機能(詳しくは後述する)。三つめはWindows OSのセットアップCD/DVD-ROMを用いて、USBストレージ上にWindows OS環境を作成するというものだ(図01)。
前バージョンでは、コピー先がUSB外付けHDDに制限されており、リムーバブルメディアは使用できなかったが、新バージョンでは制限を解除。USBメモリやコンパクトフラッシュ、SDカードといったUSBストレージであれば自由に選択できる。また、USBストレージのサイズにあわせてパーティションサイズを自動変更する機能が新たに追加された。従来はUSBストレージが大きい場合、残りが空き領域(未割り当て領域)となるため、容量全体を活かしきれず無駄が残ってしまったが、新機能ではこの問題を改善。USBストレージ容量全体を活かすことが可能になった。
なお、各OSに対するUSBストレージのサイズだが、64ビット版Windows 7は32GB以上、32ビット版Windows 7/Vistaは16GB以上(32GB以上推奨)、Windows XPは4GB(8GB以上推奨)の空き容量が必要。加えてアプリケーションが占有する容量も必要になる。最近では128GBクラスのUSBメモリも流通しているため、事前に大容量USBストレージを用意した方が無難だろう。なお、Windows OSによる頻繁なアクセスが発生することを踏まえると、高速アクセスをうたっているUSBストレージを選択した方がよい。
さて、新機能である「ファイルを選択してコピー」を使用する際は、事前にWindows OSの起動に必要なファイルを分析し、リストを作成する必要がある。このファイルリストを用いることで、最小限のファイルをUSBストレージにコピーするため、無駄な容量を消費せずに済むというものだ。なお、ファイルリストの作成はWindows OSの起動ログを参照するらしく、一度コンピューターの再起動を強いられるので、ほかの作業を行っている際は中断してから実行することをお勧めしたい(図02)。
このファイルリストは自動的に不要と思われるフォルダが除外される仕組みも備わっている。Windows 7を例にすれば、リンクである「Documents and Settings」フォルダや、コピー環境では通常不要な「PrefLogs」「System Volume Information」の除外されていた。ただ、Windows XP時代のごみ箱である「RECYCLER」フォルダも除外されている。Windows 7の「$RecycleBin」フォルダが選択されていない場合はチェックを外しておこう(図03)。
また、USBストレージ上で使用するソフトウェアの取捨選択は基本的に「Program Files」「Program Files(x86)」フォルダ内で選択し、例えばMicrosoft Officeシリーズを組み込む場合は「Microsoft Office」フォルダにチェックを入れ、除外する場合は同フォルダのチェックを外せばよい。また、あわせて「%APPDATA%\Roaming\Microsoft\Office」フォルダや「%LOCALAPPDATA%\Local\Microsoft」のチェックを外しておこう(図04)。
見落としがちなのが、ユーザーフォルダ下にあるドキュメントフォルダやピクチャフォルダの存在。容量が限られるUSBストレージに、ため込んだドキュメントファイルをコピーする必要性がない場合は、各フォルダ内のファイルを取り除いておこう。個人の使用スタイルに左右されるが、数百MBから数GBの容量を軽減できるはずだ。
緊急時も役に立つ復元機能
「BOOT革命/USB Ver.5」は自身のWindows OS環境を外部に持ち出すためのツールと思われがちだが、本バージョンから緊急時に対応する機能が追加された。一つめがパーティションに関する簡易ツールの存在。パーティションのアクティブ化や削除、MBR情報の消去と基本的な機能が搭載されている。コンピューターの操作に慣れている方なら、いずれの操作もディスクの管理ツールやコマンドラインから実行できることを承知していると思うが、各ツールを呼び出さず、Arkランチャーから簡単に実行できるのは意外と便利だった(図05)。
もう一つは、USBストレージから起動したWindows OS環境を内蔵HDDに復元する機能。何らかの理由でWindows OSが起動しなくなった際、USBストレージにコピーしたファイルを内蔵HDDに書き戻すことで、元の状態に戻すというものだ。本操作を行うと内蔵HDDのパーティションが消去されるのでデータを保持したい場合は、USBストレージからWindows OSを起動し、事前にユーザーデータなどを異なるストレージに退避すればよい。
OSがプリインストールされているようなメーカー製コンピューターを使用しているユーザーの場合、OSのリカバリーデータ用パーティションが事前に確保されていることがあり、本操作を行うと同パーティションを削除してしまうので、その点は注意してほしい。また、「エクスターナルインストール」機能を用いてUSBストレージにWindows OSをコピーした場合、「BOOT革命/USB Ver.5」は組み込まれないため、USBストレージでWindows OSを起動後に本ソフトウェアの導入を行う必要がある。本機能はProfessional版のみサポートし、Standard版やBasic版には用意されていないが、何らかの理由でコンピューターのOSが起動しなくなった際の強い味方となるだろう。