米AppleがiPhoneやiPadといったデバイスで、MacやPCからのダウンロード後の転送作業なしで直接ストリーミングによる映画配信が可能になるよう、米大手映画会社らとの交渉を進めているという。米Wall Street Journalが10月13日(現地時間)に報じている。
映画ストリーミングというとNetflixのようなサービスを想像するが、今回の交渉で想定されているのはどちらかといえばiCloudの延長線上にあるサービスであり、米国でいえばUltraVioletが同種のサービスに属するとWSJでは説明している。Appleは10月12日のiOS 5配布開始のタイミングでiCloudのサービスをスタートさせたが、ここでは音楽、写真、文書ファイルをインターネットのクラウド上に保存し、好きなデバイスから好きなときに引き出せるようになっている。だが音楽用の保管ライブラリは存在するものの、動画データ、例えばiTunes Storeで購入/レンタルした映画やTVプログラムは含まれていない。現在Appleが映画会社と交渉を続けている内容は、現在iTunesでのサービス提供のために獲得しているライセンスの枠を広げるということのようだ。
最近、映画やTVコンテンツをストリーミング配信するサービスは増えているが、Yoichi Yamashita氏がマイコミジャーナルの連載コラム「シリコンバレー101」で指摘しているように、配信側のライセンス体系は非常に複雑だ。自らのディスク媒体販売や配信ビジネスの売上を阻害しないよう、適宜バランスを見つつ調整しているのだが、最近になりDVDの販売は急速に落ち込んできている。事業者のオンライン配信ビジネスもそれほど賑わっておらず、IHS Screen Digestによれば同分野でのAppleの配信シェアは66%に達するという。
とはいえ、大手映画会社も現状のトレンドを良しとはしておらず、前述のUltraVioletのようなサービスに共同で参画し、より簡単に映画コンテンツを楽しめる手段を提供することでユーザーの獲得を狙っている。またUltraVioletでは、DVDやBDを購入したユーザーに対し、それと同じコンテンツをUltraVioletを使ってオンラインでも楽しめる仕組みが提供される。同サービスはiPadやiPhone向けのアプリも用意されており、好きなデバイスでオンライン配信が楽しめるわけだ。現状でAppleはUltraVioletには参加しておらず、iTunesとも互換性がない。それは故Steve Jobs氏と深い関わりがあるWalt Disney Co.も同様で、同社ではKeyChestと呼ばれる独自のクラウド配信サービスを運用しているとWSJでは説明する。