GoogleとSamsungが10月11日の開催を中止した、次世代Android「Ice Cream Sandwich」を発表する「Unpacked」と呼ばれるイベントだが、場所と時間を時間を改めて開催されることが決まったようだ。10月19日に香港で開催されるAll Things Digital主催の「AsiaD」というイベントにGoogleでAndroid開発を指揮するAndy Rubin氏と、もう1人の主役であるSamsung幹部が登場し、新OSとそれを搭載したSamsungのハイエンド端末を公開する発表されることになるという。
「Samsung Mobile Unpacked 2011」を告知していたティザー動画。Android 4.0搭載の次期Nexusと見られる端末が映っていた |
Ice Cream Sandwichと新端末の発表は19日の香港で
同件についてはAsiaDの主催者であるAll Things Digital自身が10月13日(米国時間)に報じている。もともと、サンディエゴで先週開催されていたCTIA Enterprise & Applicationsとの併催でSamsung主催で開かれるAndroid新製品イベントの扱いだったものが、開催直前の7日になり急遽イベント中止の告知を行うこととなった。このタイミングで同発表会がSamsungとGoogleの共催イベントであり、その理由を「(5日に訃報が発表された)AppleのSteve Jobs氏に敬意を表したため」「いまは製品を発表すべきではない」として、Jobs氏の死が発表会延期の原因であると説明している。
この突然の決定について、さまざまな裏の理由が取りざたされたりもしたが、結果的には「技術的な問題」(Google)と、複合要因で延期せざるを得ない事情があったようだ。今年香港で開催されるAsiaDは、All Things Digital系のイベントとしては初のアジア開催のもので、登壇スピーカーのページを見ればわかるように、業界キーパーソンが多数参加する豪華なものとなっている。もっともAndy Rubin氏は当初よりAsiaDのゲストスピーカーに名を連ねており、以前より「AsiaDでRubin氏がIce Cream Sandwichを正式発表する」という噂が流れていたわけだが……。
最初に登場するのはVerizon版の「Galaxy Nexus」?
さて、ここでの問題は現地でどのようなことが発表されるかだ。ほぼ確実なのは、Ice Cream Sandwich(ICS)ことAndroid 4.0の正式発表が行われ、その新ユーザーインターフェイスや新機能のデモが行われること、そしてICSを搭載した最初のリファレンス端末「Nexus」が発表されることだ。過去にはAndroid 2.2 Froyoを搭載したHTC製の「Nexus One」が2010年1月に発表され、同年末にはAndroid 2.3 Gingerbreadを搭載したSamsung製の「Nexus S」が発表されている。Nexus Oneが当時のハイエンド端末のスペックに準拠したものなのに対し、Nexus SではNFC対応とジャイロスコープ搭載など、Gingerbreadでの新機能をサポートすることに重点を置いていた。次に登場するNexusはSamsung製ということになるが、ここでは当然「ICSを満足に動かすだけのスペックを盛り込んだ端末」になることが想定される。
ICSについてはいまだ不明な部分が多いが、1つ確実なのは「スマートフォンのAndroid 2.x系とタブレットのAndroid 3.x系を統合した初のAndroid OSであるAndroid 4.0になる」という点だ。すなわち、今回の例でいえば動作する端末はスマートフォンながら、ユーザーインターフェイスはHoneycombライクなものになるということだ。ここで想像できるのは、そうしたタブレットのUIを動かすだけの「強力なGPU」と「強化されたCPU」を持ち、HD動画の再生やタブレットUIの再現に必要十分な「高解像度で大画面な液晶ディスプレイ」を搭載していることだろう。具体的にはクロック周波数で1.2-1.5GHzクラスのデュアルコアARMプロセッサを採用し、GPUも従来品から強化されたものが採用されることになる。ディスプレイも従来のハイエンドだったqHD (960×540ピクセル)を上回る1280×720ピクセルクラスの解像度になり(720pサポートのため)、サイズも最低でも4.3インチ以上のものが採用されるものと考えられる。これらはICS動作のための必須条件ではないと考えられるが、リファレンスモデルであるNexusでは必要十分なスペックを備えることが求められるため、現時点では超ハイエンドと呼べるスペックを採用した端末として登場するのではないかと考えられる。詳細なスペックに関するリーク情報については、Engadgetをはじめ、複数のメディアが報じているので確認してみてほしい。出てくる端末は、おそらくこれら予想を大きく外したものではないはずだ。
また端末の外観についてだが、Motorola XOOMなどのHoneycomb端末のように"ハードウェアのボタンを備えない"デザインになる可能性が高い。従来までの「戻る」「ホーム」「メニュー」「検索」といったボタンはすべて排除され、画面に表示されるソフトウェアボタンを使うUIへと変更されることになるだろう。ICS端末ではハードウェアでのボタン実装が禁止されているわけではないと思うが、実験であり、リファレンス的意味合いの強いNexusシリーズでは、こうした端的な特徴をあえて採用する可能性が高いと考えたほうがいいだろう。
この端末は当初、噂レベルで「Nexus Prime」の名称になるのではないかと伝えられていたが、後に「Galaxy Nexus」の名称で米Verizon Wireless向けに提供が行われることになるとの報道が広がっている。なぜVerizonなのかといえば、同社の持つLTEネットワークをサポートする「4G」端末としてネットワーク機能の強化が図られるのではないかというわけだ。ただVerizon WirelessはCDMA系キャリアであり、GSMとのデュアル端末でない限りは従来のNexusシリーズのような「SIMロックフリー版が提供されて世界中のどこでも使える」ことにはならない。そのためGalaxy Nexusを購入したとしても、Verizon Wirelessとの契約が必須となる。Droid Lifeが、Verizon Wirelessの製品登録システムに「Samsung Galaxy Nexus」が登場したことを報告しており、GSM非対応やLTEサポートについて指摘している。
しかし、これでは米国以外の国のユーザーは端末を利用できないし、なにより実験機としてのNexusを開発者に対して配布できない。そのため、Galaxy Nexusにはいくつかのバリエーションが存在し、Verizon Wirelessとの契約なしで端末を利用できる手段が提供される可能性が高い。おそらく、19日のICSとGalaxy Nexusの発表を受けて、数週間内の10月末か11月初旬にはVerizon版のGalaxy Nexusの提供が開始されるとみられる。一方でそれと同時、あるいは少し遅れたタイミングでVerizon以外のキャリアやマーケットを対象にしたグローバル端末が提供されるのではないかというのが筆者の予想だ。発表は香港で行われるものの、端末自体は米国の家電量販店(Best Buyなど)、キャリアの系列店舗での販売がまず最初になるだろう。
まずは情報を収集しよう
現在、米国のマウンテンビューにあるGoogle本社には、Ice Cream Sandwichを模したDroidくん人形が到着し、過去のHoneycombやCupcakeらの人形と一緒に飾られている(その模様を映したYouTubeビデオを参照)。これは、もう間もなくIce Cream Sandwichの発表が行われることの証左でもある。
19日の発表に注目しつつ、興味ある方はぜひ情報収集をしてほしい。14日には、AndroidチームがTwitterの公式アカウント「https://twitter.com/Android」をスタートさせた。ここでは先ほどのICS版Droidくん到着の様子や、写真の人物をDroidくん化する「Androidify」の紹介が行われており、今後ICSや新Nexusの情報が出たタイミングでも、これら詳細を知るための適切なページを教えてくれるだろう。日本でもICSを搭載した端末が年末から来年初頭にかけて登場するとみられ、Google側の最新情報はいろいろと役に立つはずだ。
関連記事
・GoogleとSamsungが11日のAndroid新製品発表会を急遽キャンセルした訳は? (2011/10/11)
・GoogleとSamsung、次期Androidの発表会を延期 - ジョブズ氏の逝去に配慮 (2011/10/08)
・Samsungが新型Nexusと見られるティザー公開 - 来週中にIce Cream Sandwich登場か? (2011/10/07)