夢を抱けるAndroid
――お二人はどんなアプリを作っているんですか?
矢野 : 私は「6x6.cm (ロクロク)」と「Simeji」ですね。Simejiはadamrockerさんと一緒に。私はデザイン担当です。
あんざい : 私はたくさんあるんですが……、個人名(yanzm)で公開したものが多いんですが、最近は会社デベロッパー名(uPhyca)のでも出しています。ウィジェットなども作っていますね。ホーム画面上に置けるウィジェットに欲しいと思えるものがなかったので、欲しいものを4つくらい作りました。個人名で出しているものですが、「Libraroid」という図書館検索アプリなどは利用者数も比較的多いです。
矢野氏がデザインを担当した「Simeji」(左)と、あんざい氏が開発した待受ウィジェットの1つ「Band O'Clock」(右)のスクリーンショット |
――そんなに簡単に開発できるものなんですか?
あんざい : 最初は大変でした。私はAndroidの開発2年半くらいやっているのですが、当初は今ほど情報がなかったうえ、コミュニティにも参加していませんでした。当時、実装方法がわからなくて行き詰まったこともありました。そのときは、「Android Developer Club」というコミュニティで知り合った開発者の方に相談して、なんとかリリースまで漕ぎ着ました。
――コミュニティって大事なんですね。
あんざい : そうですね~。
矢野 : Androidのコミュニティは、なぜかわからないんですが、本当に仲良しなんですよね。もしかしたら、お金につながるような話があまり出てこないせいかもしれません。iPhoneだと、ノウハウがいきなりお金に結びつくというか、ビジネスに直結している部分もありますが、Androidはまだサンデープログラマの人が多いですし、牧歌的なところもあって、ガツガツしていないんです。まさにオープンソースのコミュニティという感じです。
――矢野さんはAndroidコミュニティにどっぷりハマっているという話を聞きました。Androidならではの魅力って何なんでしょう。
矢野 : そうですね、Android は、漠然とした"夢"みたいなものを抱けるんですよね。例えば、Android はスマートフォンやタブレット端末だけなくて、家電や車に搭載されるということも考えられますよね。そうなると、端末の中だけの狭い世界ではなく、現実の世界に深く入り込んだ"サービス"を提供できるようになるはずです。そんな世界を想像しながら、みんなでアイデアを出し合って、「それいいねー! 」なんて語り合ってたときは本当に面白かったです。
あんざい : そういえば、私はNexus SでSuicaの履歴を読めるアプリを作った時の反響が印象深いですね。これはGinger(Gingerbreadのこと。Android 2.3のコードネーム)だから、1年くらい前に作ったアプリだったかな。Android端末にSuicaをかざして電車の搭乗履歴や購買履歴を表示させたときは、みんな楽しそうに触っていたし、「アプリに対する考え方が変わった」と言う人もいましたね。NFC(Near Field Communication)について「Felicaみたいなもんだよ」と説明していましたけど、頭ではわかっても、実感が沸かない人が多かったみたいで、これを出したら「あー! そういうことなのね! 」と納得して、これからのアプリに想像を膨らませる人もたくさんいました。
――女性の間でAndroidの評判はどうなんですか?
矢野 : 女性に関して言えば、Androidってアプリを楽しむところにはまだたどり着けていない方が多いと思います。やっぱり「難しい」っていう印象があるようです。慣れてしまえば、通常のWebサイトは見られるし、マップは使いやすいし、便利なアプリケーションもたくさんあるし、ガラケー(ガラパゴス携帯電話の略。国内で提供されている非スマートフォン携帯電話)よりも数段便利なんですが、最初の部分でつまずく人も多いみたいで……。女性誌の編集の方からは、「ホーム画面とは別にアプリ一覧の画面がある」というところに抵抗感を抱く人もいるなんて話も聞きました。
あんざい : どんどん高機能になっているから、その分付いて行けなくなるユーザーもいますよね。最初に出た「HT-03A」のときは、アレもコレも出来る状態じゃなかったから、すぐに全体を把握できたんですけどね。
矢野 : 最近の端末だと、メーカーやキャリア独自のホームアプリも搭載されていて、複数の"ホーム"を選択することになるから、ボタンを押したときに「なんじゃこりゃ? 」って困惑しちゃう人もいますよね。
矢野 : あとは「オトコのツールだ」っていう印象がまだ拭いきれてないですね。例えば、Androidのムックは男性誌の棚に置かれていることが多くて、女性は手にとりづらいんですよ。
あんざい : 女性の場合、周りに教えてくれる人がいて初めて買ってみようかと考える人が多いんですよね。iPhoneはすでに女性ユーザーも多いから安心して買えるんですが、Androidに関してはまだそういう段階にはないみたいです。でも、Androidユーザーも確実に増えているので、徐々に改善されていくんじゃないですかね。
Android女子部のこれから
――今後、Android女子部でやってみたいことはありますか?
あんざい : iPhone女子部さんが、iPhone女子部の本を出しているんですよね。なので、Android女子部もぜひ出したい(笑) それこそ、Android女子部でムック本を出したらいいんじゃないかな。
矢野 : たしかに、何かまとまったものを作ってみたいですね。
――今後の目標はありますか? 例えば、端末やアプリのプロデュースなどを始めてもいいんじゃないですか?
矢野 : そういう意味では、ホントに商売からは離れているんですよね(笑) やりたい人がやりたいことをやるっていうのが基本なので、具体的な目標などは掲げず、自由に活動してもらえればいいかなと思っています。ただ、個人的には、女子部で得たスキルや知識を活用してアプリを企画・開発して、それが広まって有名になるような人がたくさん出てきてくれたりするとうれしいですね。
あんざい : 私は緩やかな世代交代を望んでいます(笑)
矢野 : そうだね、若い人がもっといてもいいですよね!
――ぜひこんな人に参加して欲しい、というのはありますか?
矢野 : 「私こんなアプリ作っているのー! 」なんて感じで、楽しそうに話しをする人にはぜひ入ってきてほしいですね。それを聞いてみんなでアイデアを出し合ったり、その人に必要な情報を集めたりすることができるかもしれないですし。女子部がそんな"使える場"になったらうれしいですね。
あんざい : 私はもっと普通の女子にも入ってきてもらいたいな(笑)。「Androidの端末を買ったはいいけど、アプリをダウンロードしたことがない」とか、「ホーム画面がよくわからない、ウィジェットを置けるなんて知らなかった」とか、そんな初級者に入ってもらって、使い方をみんなで教えて。使いこなせるようになったら、それを周囲に広めてほしい。
矢野 : そうだね、「ただ使いたいんだ! 」っていう人も重要だよね。それこそ、アプリを作っている人も、そういう一般ユーザーの声を聞きたいだろうし
――とにかく楽しそうなコミュニティですね。男性が参加できないのが残念です。お忙しい中、ありがとうございました。