窮屈で退屈な飛行機の旅――以前は単に目的地までの移動手段でしかなかったものが、ここ最近ではさまざまなエンターテイメントやサービスが用意され、楽しみを提供する場になりつつある。機内でWi-Fi機器を使ってインターネット接続が可能になる「On Board Wi-Fi」もそのサービスの1つだ。米Wall Street Journalによれば、現在米国内を飛行する飛行機の3分の1がOn Board Wi-Fi対応機材であり、2013年までには半数以上の機材で同サービスに対応することになるという。
かつて長距離向けの大型機材への導入が中心だった「Connecxion by Boeing」(CBB)が採算性の問題から事業撤退したのが2006年。その後、2007年ごろから中短距離線向けのOn Board Wi-Fiの導入実験がスタートし、米国内ではJetBlue AirwaysやSouthwest Airlinesをはじめ、大手ではAmercan AirlinesやDelta Air Linesらが順次導入を進め、現在のような「飛行中でも規定高度に達すればインターネット」という環境が楽しめるようになった。WSJがまとめたデータによれば、導入達成率はDeltaがトップで、全727機のうち79%の導入目標に対し、79%の導入を達成している。その他の進捗状況は、Amercanが全619機のうち38%(導入)/65%(目標)、Southwestが全688機中の34%(導入)/100%(目標)、US Airwaysが全336機中の15%(導入)/19%(目標)、United Airlinesが全708機中の2%(導入)/100%(目標)となっている。なお、Southwestの機材数は買収中のAirTranの機材を含んだ数字、UnitedはContinental Airlinesの機材を含んだ数字となっている。
またOn Board Wi-Fiを提供しているベンダーは、DeltaやVirgin Americaなどにサービスを提供しているGogoが全体シェアの9割を握っており、このほかにはSouthwestのRow 44などがある。CBBの世代ではインターネット接続に通信衛星を利用していたのに対し、Gogoでは地上の無線アンテナを利用しているため、接続エリアが米国48州ならびにアラスカに限定されてしまい、ハワイや大きく洋上に張り出たエリアでは通信が行えない難点がある。一方Row 44が提供するサービスでは通信衛星を利用しており、エリア的な制限が緩いのが特徴だという。同社はパナソニック子会社のPanasonic Avionicsと共同でストリーミングによるニュースやスポーツ番組の配信を計画しており、機内にタブレットなどWi-Fi接続機器を持ち込んだ旅行者が、これらの番組を年内にも楽しめるようになる。
これ以外では、ViaSatという会社がKaバンドを使ったOn Board Wi-Fiサービスを2012年末までにも提供する計画だという。この技術では従来の10倍の通信帯域を確保でき、JetBlue子会社のLiveTVが、JetBlueならびにContinentalの機材で同サービスを導入していく計画だという。WSJによれば、Gogoもまた2013年までにサービスをKaバンドベースのものへと置き換えていく計画で、2015年にはより広範囲なエリアでサービス展開が可能になるとしている。